音楽シーンの異端児・ディプロの正体とは? 主要プロジェクト「メジャー・レイザー」を軸に分析
いま、ディプロ周辺が騒がしい。今年2月にスクリレックスとのユニット:ジャック・ユーのファースト・アルバム『Skrillex and Diplo present Jack Ü』(日本盤は6月10日発売)をリリースすると、主要プロジェクトであるメジャー・レイザーのニューアルバム『Peace Is the Mission』を6月1日(日本盤は6月24日)に発表。両作からのシングルがそれぞれビルボード・シングル・チャートでヒットを記録し、さらにはディプロが複数曲のプロデュースに関与したマドンナの最新アルバム『Level Heart』の先行シングル「Bitch I'm Madonna feat. Nicki Minaj」もスマッシュヒット中と、関わったプロジェクトすべてがランクインを果たしている。
現在の音楽シーンを語る上で避けては通れない異端児ディプロ。この男の正体に迫ってみたい。
ディプロは、常に世界中の“珍奇”なサウンドを追い求めている印象がある。まず彼の名が世に知れ渡ったのは、2000年代中盤におけるM.I.Aのプロデュースが大きなきっかけ。最新のエレクトロニック・ミュージックとトラディショナルな音楽(当時はソカやM.I.Aのルーツであるタミルの楽器など)を融合させたスタイルは世界中の注目を集め、その後のブラカ・ソム・システマやスパンク・ロック、サンティゴールドなどのプロデュースでも常に斬新なサウンド・プロダクションでシーンに一石を投じてきた。クドゥーロやバイレファンキ、ボルチモア・ブレイクス、近年では社会現象にまでなったバウアー「Harlem Shake」、DJスネークとリル・ジョンの大ヒット「Turn Down For What」を自身のレーベル〈MAD DECENT〉からリリースし、トラップ~トゥワーク・シーンを牽引するなど、ディプロが目をつけて世に送り出してきたジャンルやアーティストは枚挙に暇がないほど。
そう、ディプロは常に流行を“発信する側”のクリエイターなのだ。世界中から面白い“素材”を探し当て、価値を見いだす姿は、まるで音楽シーンにおけるトレジャーハンターそのもの。だからこそ、リスナーもアーティストも「次は何をしてくれるんだろう?」という期待を胸に彼の作品を待ち望んでいるのだ。
ディプロはそのオリジナリティゆえ、アンダーグラウンド・シーンからカリスマ的な支持を獲得しながら、メインストリームで活躍するトップ・アーティストからも熱烈なラブコールを受ける稀有な存在。特に2010年代に入ってからの活躍は目を見張るものがある。ビヨンセ「Run the World (Girls)」(2011年)に始まり、アッシャー「Climax」(2012年)といったワールドワイド・ヒットを手がけ、スヌープ・ドッグがスヌープ・ライオン名義でリリースしたレゲエ・アルバム「Reincarnated」(2013年)は、ほぼ全編をプロデュースするなど、話題作を常に投下してきた。
彼の凄味は決してセルアウトすることなく、流行とは関係のない独自の立ち位置から、世界的ヒットを多く生み出していることに尽きる。スタイリッシュなサウンドの中に隠れる野性の感覚、そして無国籍でエキゾチックな要素――それらは彼が世界中の音楽と接してきた知識と教養の賜物であるのだ。