星野源がエンターテイナーである理由ーー『SUN』の音楽的アプローチから読み解く

 これまで発表してきたシングルと同様、『SUN』も「全4曲入り&特典映像満載のDVD」という通例どおりの構成となっている。カップリング曲も相変わらずユニークで、軽妙なジャジー・ブルース「Moon Sick」、本人曰く“70年代日本のフォークをヒップホップ以降の機材でアプローチ”したという、すべての楽器を自身が演奏した「いち に さん」も目を惹くが、聴いた瞬間にひっくり返ったのは最後の「マッドメン(House ver)」。星野のシングルでは“(House ver)”とつけられた宅録曲が恒例となっているのだが、この「マッドメン」はトーキング・ヘッズの名作ライブ映画「ストップ・メイキング・センス」のオープニングを飾る「サイコ・キラー」のストレートすぎるパロディときた(曲名にも笑った)。ラフでざらついたギターの鳴りから、リズムボックスの名器TR-808を用いたチープなビートまで全部一緒。白いスーツを着てヨロヨロつんのめったりする星野の姿までも目に浮かびそうだ。

 しかし、「STOP MAKING SENSE」−−直訳すれば「意味づけをやめよ」、乱暴に言い換えれば「難しく考えるな」−−というのは、よくよく考えると今回のシングルにもピッタリの表現かもしれない。「SUN」のミュージック・ビデオでハッピーな至福の4分間を終えたあとに全部ひっくり返す星野の一言(笑)からもふとそんなことを思った。「僕たちはいつか終わるから 躍る いま」とシリアスな言葉も織り込みながら、まるで全てを笑い飛ばすように彼は歌い踊る。本当は小難しい仕込みもたっぷりしているし、一時とんでもない状況にあったこともみんな知っているのだが、媚びたり悩んだりしているところは一切見せず、誰にでも愉しめるポップスを提供してみせるのだから、カッコいいにも程があるというもの。エンターテイナーに振り切る姿勢がまさしく太陽そのもので、彼がクレイジーキャッツやマイケル・ジャクソンに心酔する理由もそこにあるのだろう。とにかくポップを貫くというのは、一見何も考えていないようでいて、本当に偉大なことなのだ。

(文=小熊俊哉)

■リリース情報
『SUN』
発売:5月27日(水)

初回限定盤(CD+DVD+スリーブケース) ¥1,800+税
通常盤(CD)¥1,200+税

<収録内容(初回限定盤・通常盤共通)>
M-1:SUN
M-2:Moon Sick
M-3:いち に さん
M-4:マッドメン (House ver.)

初回限定盤特典DVD『SUN Disc』
・特別番組「その後のニセ明」
・Recメイキング 「いち に さん」
・厳選ライブ「ビクターロック祭り2015」
・星野源によるオーディオコメンタリー付

アナログ盤
7 inch Analog ¥1,300+税

<収録内容>
A面 SUN
B面 SUN(Instrumental)

■ライブ情報
『星野源のひとりエッジ in 武道館』
日時:8月12日(水)・13日(木) 開場:18:00/開演19:00
会場:日本武道館
チケット料金:¥7,000(税込)
一般発売日:7月11日(土)
・ローソンチケット 初日特電 0570-084-634 発売日以降 0570-084-003 (Lコード:73001)
・チケットぴあ 初日特電 0570-02-9920 発売日以降 0570-02-9999 (Pコード:263-679)
・イープラス  http://eplus.jp
・楽天チケット  http://r-t.jp/genhoshino
問い合わせ先:HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999(平日12:00~18:00) https://www.red-hot.ne.jp/

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