EXILEなど手がける作詞家・小竹正人が明かす表現技法「三代目の作詞に関しては良い意味で公私混同」
「もし今市くんが結婚するときがきたら…と想像して書いた歌詞もある」
――作詞家としての経験を積む中で、徐々にプロとして自覚を持つようになっていったということですね。では、作詞家として影響を受けた人物はいますか。
小竹:昔、アメリカに行く前に日本で聞いていた松本隆さんや阿木燿子さんは、すごくお洒落で深い言い回しをすると当時から思っていました。また、アメリカにいる頃にも日本の歌謡曲や邦楽は日本の友人にいろいろCDを送ってもらって聴いていたので、その影響も大きいと思います。クリエイターとしての感性みたいなものは、長年の友人の小泉今日子さんに学んだ気がします。カルチャーから言葉、ファッション、文学、アートなど、一緒に遊んでいるなかで、すごくいろんなことに影響を受けました。たとえば、小泉さんが「面白い」と言った小説、漫画、映画はどれもこれも本当に面白かった。クリエーターや映画監督について「おだちゃん、よく知ってるよね」なんて、周りに言ってもらったりするんですけど、それは全部、小泉さんの近くで見てきたから。自分一人だったら、絶対に知ることができなかった世界を知れたのは、小泉さんのおかげですね。
――特定の作詞家に影響を受けたというより、小泉今日子さんとのコミュニケーションの中で多くの学びがあった、と。普段、作詞をするアーティストとはどのくらいコミュニケーションをとるのでしょうか?
小竹:じつは、これが今日、いちばん言いたいことでもあるんです。LDHに所属している人たちって、みんなすごく仲が良いんですよ。僕は特にHIROさんとすごく近しいところに居させてもらっているので、事務所に新しい所属の子が入るとなると、先に対面させてもらうことが多いんです。だから、僕より後に事務所入りしたアーティストに関しては、一人ずつの成長過程をずっと見ています。三代目J Soul Brothersのボーカルである今市隆二くんと登坂広臣くんや、Flowerのボーカル・鷲尾伶菜さんは、加入前の『VOCAL BATTLE AUDITION』から見てきました。とくに三代目はデビュー当時から歌詞を書かせてもらっていて。三代目の作詞をする時は、今市くん、登坂くんの顔と性格と声が僕の頭の中に完璧に入っているので、ほかの人に書くよりスムーズです。「スノードーム」という曲は、登坂くんに「高校生くらいのときの、冬の思い出ってある?」と聞いて、登坂くんの実体験を膨らませて書いた曲ですし、『PLANET SEVEN』に収録されている「Wedding Bell~素晴らしきかな人生~」という曲は、もし今市くんが結婚するときがきたら…と勝手に想像しながら書いたところがあります。歌詞を書いていると勝手に彼らが歌ってる声が聞こえてくるんです。彼らはもはや家族というか、三代目の作詞に関しては良い意味で公私混同なのかもしれません(笑)。
――最近、Flowerの藤井萩花さんがインタビューで、小竹さんと歌詞についてディスカッションをすることで、表現や歌い方が変わってくると話していました。彼女たちに関してはどのように接してきましたか。
小竹:Flowerというグループはコミュニケーションをとりながら育てていた部分があったので、その流れから作詞ということになりました。三代目の二人にしてもFlowerにしても、初めてシングル曲を書かせてもらったときに、作詞家がグッとくるような歌い方をしてくれていたことが強く印象に残っています。僕自身が持っている言葉や実力以上のものを、ボーカリストが引き出してくれていると感じたんです。今市くん、登坂くん、鷲尾さん、いずれも高いポテンシャルを持っているボーカリストだからこそ、彼らに負けないように作詞しようという気持ちでやっています。「そんな歌い方をしてくれるなら、もっと歌い手に喜んでもらえるような詞を書いてやる!」って。歌い回しや声をそばで聴いていると、その成長をありありと感じます。彼らに人気が出てきたり、名前が知られたりすることは無性に嬉しいだけじゃなく、同時に「僕ももっと良い詞を書くように頑張る」という気持ちを起こさせてくれます。
――成長過程を見守っていると、書く歌詞が本人達のキャラクターや人生とリンクすることも出てくるでしょうね。
小竹:そうですね。普段、今市くん、登坂くん、Flowerメンバーが喋っていることを聞いていると、なんとなく「こういう世界は好きで、これは嫌だろうな」っていうのがわかってくるんです。いちばん最初に詞を書いた時には思わなかったのですが、「最後のサクラ」「花火」くらいから、急に今市くんと登坂くんの表現力がものすごく増しているなとゾクゾクしました。鷲尾さんは「白雪姫」のときにそれを思いました。詞を書いて、完成して、CDがリリースされるという喜びとは別に、みんながすごい勢いで成長していることにも嬉しさを感じていますね。すごくおこがましいですが、表現力のコーチのような目線で「すごいな」と思わされる日々です。