嵐が描いてきたゼロ年代の情景とは? ドラマ作品における軌跡をたどる(前編)

嵐とゼロ年代

 このようにジャニーズアイドルたちがテレビドラマの中で居場所を獲得していくなか、いよいよ嵐が99年にデビューする。

 それ以前にも松本潤と相葉雅紀が、KinKi Kids主演の『僕らの勇気 未満都市』(97年・日本テレビ)に脇役で出演することはあったものの、嵐のメンバーがテレビドラマで主演クラスの活躍をするようになるのは、00年代に入ってからである。

 10代後半から20代後半にかけてという男性アイドルにとって、もっとも旬の時期を00年代に過ごしたこともあってか、嵐のドラマには、00年代を生きた少年が青年になっていく過程が刻まれている。同時にそれは00年代に生きた若者たちの記録だったと言っても差し支えないだろう。

 00年代のドラマシーンは、90年代までは勢いがあった恋愛ドラマが失速していく時代だった。トレンディドラマの総決算と言える『やまとなでしこ』(00年・フジテレビ)以降は、視聴率が低下し、『ビューティフルライフ』(00年・TBS)や『世界の中心で愛をさけぶ』(04年・TBS)といった難病モノの形でしか成立しなくなっていた。

松本潤とイケメンドラマ

 恋愛ドラマの人気が落ちていく中、入れ替わる形でドラマシーンを席巻したのは、若手男性俳優を見せることに特化したイケメンドラマである。

 これは『テニスの王子様』のミュージカル(テニミュ)や、『仮面ライダー』シリーズ(平成ライダー)にしても同様で、あらゆるジャンルが汎イケメン化していったのが00年代の大きな特徴だった。

 そんなイケメン戦国時代の渦中で揉まれながら、頭角を現したのが松本潤である。

 たとえば『ごくせん』(02年・日本テレビ)は、ヤンクミこと山口久美子(仲間由紀恵)がヤクザの娘であることを隠しながら女教師をしているというドラマだが、今、男子生徒役を振り返ったときに、松本を筆頭に小栗旬、成宮寛貴、松山ケンイチ、ウエンツ瑛士、上地雄輔、パート2では亀梨和也、赤西仁、速水もこみち、小池徹平、水嶋ヒロ、三浦涼介といったそうそうたるメンバーがいたことに驚かされる。

 『ごくせん』でおこなわれたイケメン俳優の展覧会という試みは、その後、『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(07年・フジテレビ)や『メイちゃんの執事』(09年・フジテレビ)などの少女漫画のドラマ化によって、より徹底されたものとなっていく。

 そんな、イケメンドラマの金字塔となったのが、『花より男子』(05年・TBS)であることは言うまでもない。

 『花より男子』は、原作こそ日本の人気少女漫画だが、台湾でドラマ化されて大ヒットしたことから逆輸入的に日本でドラマ化されたドラマだ。

 物語はセレブの子どもたちが通う英徳学園で庶民の出の少女・牧野つくし(井上真央)が奮闘するラブコメディで、松本潤はつくしの前に立ちはだかるセレブグループの頂点に立つF4のリーダー・道明寺司を好演した。オラオラ系男子だが、ヒロインのつくしにはベタ惚れという二面性が受けて、マツジュン=王子様というイメージを完全に定着。後に続編や映画版も作られる00年代を代表するメガヒット作品となった。

 一方、イケメンドラマや男性アイドルが求められる時代背景を、かつてのトレンディドラマの構造を使うことで描き出した隠れた名作が『きみはペット』(03年・TBS)だ。

 新聞社に勤める巌谷スミレ(小雪)は、エリートであるが故に何でも完璧であらねばならないと思うあまりに仕事と恋愛のストレスを抱え込んでいたが、マンションの前で段ボールに入って倒れていた謎の美少年・モモ(松本潤)といっしょに暮らすことで少しずつ癒されていく。美少年をOLがペットとして飼うという不思議な作品だが、松本の天真爛漫な演技もあって、おかしな味わいのラブコディに仕上がっていた。モモとすみれの関係は男女の恋愛には規定できない不可思議なものだが、今考えるとこれは男性アイドルやイケメン俳優を女性視聴者がどのように希求していたのかを描いたメタ・アイドルドラマだったのかもしれない。

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