ファーストアルバム『Awesome City Tracks』インタビュー

Awesome City Clubが明かす、バンドの成り立ちと活動ビジョン「ドカンと売れたら一番おもしろい」

4月3日開催の『Awesome Talks -vol.01-』より(写真=古溪一道)

「戦略性みたいなところは全部メンバーに任して、自分はそれをアウトプットする役割」(PORIN)

——ブラックミュージックの要素っていうのは、Awesome City Clubの音楽の謎を解く上で非常に重要な気がしますね。表面的には別にブラックミュージックっぽいところはないんだけど、コード進行だとか、リズムの組み立て方とかに確実に反映されていて。で、それは同時代の多くの日本のバンドに決定的に欠けているところでもある。

atagi:あぁ、それは嬉しいですね。

——別に毒を吐いてもらいたいわけじゃないんですけど(笑)、今の日本のロックシーンに対するカウンター意識のようなもの、たとえば「『踊れるロック』とかみんな言ってるけど、ブラックミュージックをまともに通ってないのによく言うよ」とか思ったりしません?

マツザカ:そうですね(笑)。BPMに関しては「みんなちょっと速すぎない?」って思いはありますよね。だから、なるべくムーディーでゆったりしたビートでやりたかったし、歌詞に関しても、できるだけメッセージ性をなくして「音楽の力だけでアガろうよ」っていうものにしたかった。

atagi:音楽スタジオで働いてると、どうしたって「最近のバンドってさ」って話になるんですよ(笑)。

——そっかそっか(笑)。そういう意味では若いバンドの最前線中の最前線で生活をしていたわけですよね。嫌でもスタジオの扉の向こうから音が聴こえてくる。

atagi:そう(笑)。だから、もう前提として、最近のバンドの音に食傷気味になっていたメンバーが集まったのがこのバンドなんですよ。

——それでいて、ちゃんと今のシーンにもアジャストしたサウンドにまで持っていってるところが見事ですよね。

マツザカ:八方美人なのかもしれないです(笑)。でも、すごく嬉しいのは、対バンをしてても、売れ線の人たちからも、すごくコアなことをやっている人たちからも、「いいよね」って言ってもらえることで。自分たちとしては、ロック・イン・ジャパンにも出たいし、フジロックにも出たいんですよ(笑)。そこは全方位でやれたらいいなって。

——うん。そこを狙えるバンドだと思います。PORINさんはそういうAwesome City Clubの戦略性みたいなところには、どのくらい関与してるんですか?

PORIN:私はただ楽しいからやってるだけです(笑)。atagiくんの書く曲が好きだから。戦略性みたいなところは全部メンバーに任して、自分はそれをアウトプットする役割だと完全にわりきってます。

マツザカ:このバンドはそれぞれの役割がはっきりしてるんですよね。自分が方向性を考えて、atagiが曲を書いて、モリシーが技術面を担って、PORINやユキエは洋服とかに詳しくて。でも、そういう戦略だけあってもうまくいくわけじゃなくて、バンドを組んでからお互いが絶妙のバランスでそれぞれの役割を担ってくれるようになったし、そもそもatagiの書く曲が良かったからここまでこれたんだと思うし、そこは偶然であり幸運ですよね。

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