作詞家zopp「ヒット曲のテクニカル分析」第1回(前編)

きゃりーぱみゅぱみゅと小泉今日子の歌詞の共通点とは? 作詞家・zoppがヒット曲を読み解く

「キラーフレーズはオヤジギャグから生まれることもある」

――きゃりーの楽曲は、タイアップのプロジェクトに関連づけて歌詞を作る、いわば広告音楽のような側面も持っています。

zopp:そうですね。なので「上手いな」というよりも「だよね」という印象というか。曲を聴いている人は「きみも“もんだいガール”でしょ」とも聞こえるし「きみにも問題があるでしょ」とも聞こえる。<きみも もんだいガール>にという歌詞にすると、ガール、つまり女の子だけに向けたメッセージになるところを、<きみも もんだいがある>にすることで、「きみ」が男の子にも女の子にもなれるんです。ここはやっぱりうまいなと。そのあとは、ずっと<もんだいガール>で<もんだいがある>は、サビの中でこの1か所だけですからね。同音異義語をメロディにのせるというのも、作詞家の仕事の特徴だと思います。脚本や小説は言葉を並べていくのが基本なので、そもそも「同じ言葉」にあまり感心がいかないと思うんです。短歌や俳句や曲の歌詞だけが、言葉の響きは同じだけど、意味が違うものをメロディにのせられるのかなと。

――作詞ならではのテクニックということですね。他のアーティストでもそのような手法は使われていますか?

zopp:同音異義語とはすこし意味合いが変わってきますが、作詞には「もじる」という概念があります。もともと有名なフレーズがあって、それを1文字変えて、まったく違うものにしてしまうんです。たとえば、RAPWIMPSには「有心論」という曲がありますが、これは「有神論」というキリスト教の概念をもじって“人間には心があるんですよ”という意味の歌にしてますし、ぼくがももいろクローバーZに書いた「上球物語」は、「上京物語」をもじって「上球」、つまり地球に行く物語にしてみたり。耳なじみのあるワードでも、どこか違っていると親近感と違和感を同時に覚えるので、テクニックの一つとして使うことができます。話は戻って、同音異義語について自分の書いた歌詞だと、テゴマスの「アイアイ傘」は、サビの最後に<雨恋>という言葉が出てくるんです。「雨の恋」で雨恋(あまこい)なんですけど、<雨乞い>という受け取り方もできる。雨が降っているあいだだけ、ふたりは相合傘ができて、雨が止むと離れ離れになってしまうので。雨が降ってほしいという意味での<雨乞い>と雨の恋で<雨恋>。

――この手法はJ-POPの歌詞や曲タイトルで多く見られますね。

zopp:ただ、一方でオヤジギャグ的な手法でもあるので、使い方には気を付けなければいけません。会社で上司が「きみは“問題ガール”だし、キミにも“問題がある”」って言っても、「なに言ってるんですか、部長」で終わるじゃないですか(笑)。でも、それが当たるとキラーフレーズになるんです。同音異義語以外でも、「青春アミーゴ」(修二と彰)もまさにそうですし、「ミソスープ」(テゴマス)も「みそ汁」にしていたら、あんなに注目されなかったと思うんです。はじめはみんな、「ダサっ」って思ったけど、かえって忘れなかったらしいので(笑)。ジャニーズは、基本的に勇気を持ってそれをやれる場所なので、いつまでもインパクトのある曲が残るんだろうなと思います。作詞家としてはやはりこれまでになかった歌を作りたいですが、奇をてらいすぎた歌でもダメなので、「カッコ恥ずかしい」くらいのさじ加減のものを生み出していきたいですね。あとは、アーティスト性やアイドル性によって、許される言葉と許されない言葉があると思うんです。俗にいう、「ジャニーズワード」というか、ジャニーズだから使える言葉というのがあるんですけど、あれは絶対にEXILEには歌えないし、ほかの男性アイドルもなかなか踏み込めないエリアなんですよね。そういう意味で、中田さんには確固たる世界観があって、その物語をきちんと生きてるんだろうなと思います。

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