2ndアルバム『パラード』インタビュー
ザ・なつやすみバンド、“生きるための逃避”を語る 「バンドをやること自体が永遠の夏休み」
「潤と瑞希ちゃんは〝伸びしろ〟そのものなんです」(MC.sirafu)
――また、TNBの〝なつやすみ〟と並ぶ重要なテーマに、〝ポップ〟というものがあると思うんですが。
中川:はい。ポップなものをつくろうということは意識しています。
――でも、中川さん自身は全然、ポップな人じゃないですよね……。
中川:そうなんです……。
――前に、訊いてもいないのに「私、友達がいないんです」と呟いていました(笑)。
中川:そうしたら、「じゃあ、友達になりましょう」と言ってくれましたよね。ありがとうございます(笑)。
――イメージとしては、アトモスフェリックな<うつくしきひかり>の方が中川さんの素に近いように思うんですが、ポップなTNBではキャラを演じているような感じなんですか?
中川:いえ、どちらが素とかどちらが演じているということではなくて、その場の雰囲気に応じて変わるんです。<うつくしきひかり>の時はシラちゃんが私と同じように結構暗いし、TNBの時は潤と瑞希ちゃんっていうバカな2人とワイワイするので「楽しいな」ってなるし。それで、歌い方も自然と変わる。
――つまり、TNBの〝ポップ〟さにはリズム隊の2人の存在が欠かせないということですね。
中川:かなり重要ですね。
sirafu:僕はバンドに関して、〝伸びしろ〟をずっと持っていたくて。それは、技術的な部分だったり、方向性の部分だったり。伸びしろがあるっていうことは、大人にならないというか、「毎日がなつやすみだったらいいのになぁ…」(「S.S.W」の最後に出てくるセリフ/コーラス)という感覚に近いものを感じていて。僕の中では潤と瑞希ちゃんは〝伸びしろ〟そのものなんです。今回は2人で初めて作曲(「ユリイカ」)もしていますし。
――ファーストの『TNB!』は本当にファーストらしいファーストというか瑞々しいアルバムでしたけど、今回のセカンド『パラード』はまさに伸びしろを生かしたアルバムになっていますよね。
中川:今のバンドの雰囲気をそのままレコーディングしただけなんですけどね。前より鮮やかにしたいというのはありましたが。
sirafu:ちょっとだけ背が伸びた感じだよね。
――「毎日がなつやすみだったらいいのになぁ…」と言いつつも、永遠にループしているわけではなく、実は夏休みを経る毎に成長していると。
sirafu:ただ、ファーストは下手さも含めて完成しているというか、あの時にしか出せない〝なつやすみ感〟みたいなものがあって、それを評価されたので、セカンドをつくる上では悩みましたけどね。単に上手くなってもしょうがないし。セカンドが出て、「ああ……上手くなっちゃったか」みたいなパターンってあるじゃないですか。その辺に関しては良いバランスで出来たかなとは思います。
――数ヶ月前、今作でエンジニアを務めた得能直也くんとお酒を飲んでいて、ミックスが終わった段階のものを聴かせてもらったんですね。その時は、まるで、アルバムを通して1曲が展開しているみたいに感じたんです。「えっ、どこまでで1曲なの?」って。酔っぱらっていたのもあるんでしょうが(笑)。『TNB!』がいわゆるバンド・サウンドで、初期のベスト・アルバムみたいなものだとしたら、『パラード』はアレンジが多様だし、まるで、DJミックスのようなつくりだなと。
中川:その感想、面白い。でも、そうかも。
sirafu:実は曲順を全部決めてからスタジオに入ったんですよ。レコーディングも全曲同時進行で、1曲1曲、仕上げて行くという感じではなく、段々と上塗りするようにつくっていったんで、そう聴こえるのかもしれませんね。コンセプチュアルにするつもりはなかったんですけど、何となく曲順を通して、季節感のようなものは想定していて。春から始まって、夏になって、それが暮れていって。だから、通して聴けるアルバムをつくろうということは第一に考えていましたね。
――なるほど。では、最後に。『パラード』はビクター・エンターテイメント内の<スピードスター・レコーズ>からのリリースですが、メジャー・デビューするということについては、何か思うところはありますか?
中川:うーん、潤は化粧品を買いまくってますけどね。「メジャーだから綺麗にしなきゃ」みたいな感じで(笑)。
――sirafuさんに関しては、ある意味で、TNBに関わり出した頃のインディペンデントにこだわっていた時期とは違う方向に進んでいるとも言えますよね。
sirafu:この時代、そんなにメジャーってものに期待していいのかみたいなところもありますけど。でも、最近、周りも世代が変わって若いバンドが増えて。そういう中で、前みたいに繋がりを広げるよりは、自分のバンドに本腰を入れようっていう感じになってきたんですよ。あと、バンドを良い状態で続けるためには、それぞれのバンドでやるべきことが全然違って。
――確かに片想いは他の仕事をしていたり家庭を持っていたりするメンバーも多くて、もはやスケジュールを摺り合わせること自体がコンセプチュアル・アートみたいになっていますよね(笑)。一方、TNBの〝なつやすみ感〟や〝ポップ〟さには、メジャーという舞台が合っているのかもしれない。
sirafu:そうそう。だから、面白い方に作用したらいいなぁって思いますね。
(取材・文=磯部涼)
■リリース情報
『パラード』
発売:2015年3月4日
価格:¥2,300(税込) VICL-64297
■ライブ情報
タワーレコード渋谷店【スペシャル・アコースティック・ギグ&サイン会】
3月28日(土) タワーレコード渋谷店1Fイベントスペース
タワーレコード梅田NU茶屋町店【ミニライブ&サイン会】
4月5日(日) タワーレコード梅田NU茶屋町店イベントスペース
タワーレコード新宿店【ミニライブ&サイン会】
4月10日(金) タワーレコード新宿店7Fイベントスペース
タワーレコード名古屋パルコ店【ミニライブ&サイン会】
4月12日(日) 名古屋パルコ西館1Fイベントスペース
ザ・なつやすみバンド 2nd album 「パラード」リリース記念ワンマンライブツアー
春篇 supported by HOPKEN
5月9日(土) 大阪Shangri-La
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春篇 supported by jellyfish
5月16日(土) 名古屋 得三
ザ・なつやすみバンド 2nd album 「パラード」リリース記念ワンマンライブツアー 春篇
5月24日(日) shibuya duo MUSIC EXCHANGE