冬将軍が6thアルバム『HELLO WORLD』をレビュー

SCANDALがこだわり抜く“ロックバンドの基本”とは? セルフプロデュース色強めた新作を分析

“魅せる”バンドとしてのSCANDAL

 彼女たちが教えてくれるのは、バンドをやる楽しさだ。熱がこもって演奏が走ろうとも、次のブレイクで全員ピタリと止まる瞬間、息のあわせ方というところに重きをおく、ロックバンドの基本に徹底的にこだわるバンドでもある。アレンジにおいても、リズムアンサンブルを重点を置いた工夫が随所にちりばめられていることを感じるだろう。そのバンドの醍醐味は、ステージングを始めとした見せ方にも現れている。ギター/ベースの構え方、掻きむしる姿、マイクに向かう顔の角度だとか、ドラムのフィルに合わせて美しく逆立つ髪柱であるとか、ロックプレイヤーとしての“絵になるカッコつけ”を自然に魅せつけてくるのだ。

 元々ダンススクールに通っていた彼女たちは、そうした「魅せる」ことに長けているかもしれない。そして、歌を歌うことの出来るプレイヤーは歌心のあるグルーヴとリズムを生み出す。であるのなら、4人全員が“歌って踊れる”彼女たちは通常のバンドでは真似ることのできない秀でた賦性を兼ね備えてるともいえるだろう。

宇崎竜童・阿木燿子夫妻の手による「スキャンダルなんかブッ飛ばせ」(2010年)は昭和歌謡王道ロックはもちろん、彼女たちにしかできない独特のフリなどの魅力が詰まっている。

 SCANDALは誰か1人がズバ抜けた才能を持っているメンバーが引っ張っているわけでもなく、この4人でなければ成立しないモノを作っている。バンドや楽曲を輝かせるのは、最先端のサウンドやジャンルを取り入れることや、卓越した演奏技術でもないのだ。

 彼女たちに魅せられて楽器を手にする、バンドを始める、そんな女の子たちが多いことに説明はいらないだろう。理屈抜きで「カッコイイからとにかくバンドがやりたい」と思わせてくれるのである。そして、どこか回りくどい音楽分析に陥りがちな音楽ファンにとっては、ロックと出会った頃の初期衝動を思い起こさせてくれる、そんな存在なのかもしれない。

■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログtwitter

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