椎名林檎が西加奈子に“J-POP職人”の顔を明かす「本当に好きな音楽とは乖離してる」
番組後半では、椎名の最新作『日出処』のレコーディングスタジオを舞台に二人がトークを繰り広げた。西が「リミットがあるからできるところがある?」と質問をすると、椎名は「無かったら永遠に提出しないし売らないんじゃないかな。自分の中の完成形に到達したことが一回もない、到達したらやめちゃうんじゃないか」と語り、続けて「あんまりオタマジャクシ(音符)を思い浮かべないようにしてる。全部の可能性が出尽くしてると思ったら終わりだから」と、計算して作品を作ることからあえて離れていると明かした。
そんな椎名について、西は「職人さんみたいやなって思った。すごいシャイだし、表に出たくて出てるタイプじゃない。でも何万人の人に一斉に発信しているっていう自分をどう思ってる?」と核心をついた疑問をぶつけた。椎名はこの質問に「『J-POP職人』って自分で思ってるし、本当はすっごい好きな音楽ってこういうのじゃないから、(好きなものとは)乖離してて音楽とは思わない。高校生の時に、大人たちに急に『この商売をやりませんか? (資料を渡されて)こういったものを混ぜ合わせて作ってください』と言われたところから始まってる」と、裏方気質であることを明かした。続けて椎名は自身の本来の音楽に対する考えとして「まず歌はいらない。歌が入ると風俗になる。料理に置き換えると『ご飯もの』みたいな、歌が入るとそこに目が行ってしまう」と述べたうえで、「でも、ここまで(自身の考えと)乖離していないと書き続けられなかった」と語り、一定の距離を保っているからこそ継続できていると述べた。
また、西は椎名の制作スタイルについて「『これが林檎さんや』と思っているひともいれば『こうであってほしい』とイメージを背負わせたりする人もいるやろうね。それで苦しいこともある?」と質問。椎名は「私は名前を変えているからやっぱり“役柄”みたいな感じで、何言われても平気。SNSで評判なんかは簡単にわかるから『何でファーストアルバムみたいなのを作れないのか』って書かれると、じゃあその人が喜ぶような作品をお作りしてお届けできるように段取りしようって思う」と、些細な評価にも目を通していると発言し、西を驚かせた。続いて、西が番組主題歌の「孤独のあかつき」について「最初はデモを英語で送って、『あとで日本語になりますので』って言ったと聞いた」と質問すると、椎名は「ポップスを書くときに、日本語を前提に書こうとするとカクカクしちゃう。欧米の言葉の方が耳慣れているから、自由に展開できるように借りてきた言葉で仮詞を作る」と、J-POPの枠組みにとらわれない楽曲の作り方を明かした。
番組の最後には、椎名が自身の夢について「大人の遊び場を作ること。生バンドがいてお酒が飲めて、女の子がエッチな格好をしていて…」と語り、西に対して「筋書きがあるミュージカルがあるなら手伝って下さい」とオファー。西はこれに「もちろん!」と答え、番組が終了した。
(文=向原康太)