水野良樹×kz×柴那典×宇野常寛の「J-POPの現在と未来」徹底討議 フルバージョンが電子書籍化

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写真左上、水野良樹。右上、kz(livetune)。左下、柴那典。右下、宇野常寛。

 評論家・宇野常寛氏の主宰する企画ユニット「第二次惑星開発委員会」による総合誌『PLANETS』が、11月8日に『ポスト「J-POP」の時代——激変する音楽地図とクリエイションのゆくえ』と題し、水野良樹(いきものがかり Guitar&リーダー)、kz(livetune)、柴那典(音楽ジャーナリスト)を迎えて、日本のポピュラー音楽のこれからについて語り合った電子書籍をAmazon Kindleストアで発売した。

 本書の元となるイベントは、今年4月28日に水野良樹、kz、柴那典、宇野常寛の4人をパネリストとして開催されたもので、Togetterまとめをはじめとして、ネット上でも反響が大きかったため、4人の出席者の加筆・修正を加えて電子書籍化された。

 今回、リアルサウンドでは宇野常寛氏よりサイトに寄せられたコメントとともに、本書の一部を抜粋して掲載したい。

PLANETS編集長・宇野常寛のコメント

 iTunesやYouTube、さらにはSpotifyなどの登場でグローバルに音楽消費の形態が激変し、国内的にはJ-POPというマーケットが衰退するなかで、これから日本のポピュラーミュージックはどこへ行くのか、という問題の本質的な部分を議論できたと思っています。いきものがかりの水野良樹さんにせよ、kzさんにせよ、お互いそれぞれ別の意味でギリギリの位置に立たされているクリエイターがいま何を考えているのかを、『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』でヒットを飛ばした柴那典さんとともに極限まで議論しています。PLANETSならではのこの座組でお届けする、「J-POPの現在と未来」に興味のある方はぜひ、お手に取ってみてください!

J-POPの黄金時代は何故成立しなくなったのか

宇野:お三方の話を聞いていて考えたんですが、まず最初に話すべきは、「ポップミュージックがどのように成立するのか」ということですね。

 ここにいる四人全員の認識として、かつてのJ-POPが担っていたようなポピュラーミュージックのあり方は、少なくとも今の日本においては成立していない。それは一致していると思います。

 では逆に、僕が聞きたいのは、なぜある時期に「J-POP」というものが成立していたのかということなんですね。J-POPという言葉は1988年、バブルの頃にJ-WAVEというラジオ局が歌謡曲との差別化のために作った言葉ですよね。

 では、J-POPとは果たして何か。

 特徴を言うと、商業的にはドラマやCMなどテレビとのタイアップで広まったもの、消費者のレベルでは通信カラオケに対応していったポップスいったものだと思います。

 ただ、これは音楽が流通する器の部分、つまり外側から語った特徴ですよね。ではJ-POPというものの内実はどんな特徴を持っていて、それがどう社会と結びついていったのか。それを話していこうと思います。

水野:90年代には、J-POPが黄金時代を迎えていたわけですよね。CDが沢山売れて、流行そのものを音楽が作っていた。そこにみんなが注目している時代があった。それは何故だったのか?ということですよね。

 僕は、J-POPや歌謡曲においては、聴き手とどうやって共感の回路を結ぶかが大事だと思うんです。聴き手それぞれの人生、その体験と音楽をどうリンクさせていくか。そこが何より大切だった。だからこそカラオケで歌われたわけだし、CDの売れる枚数も増えていった。それが何故落ちていったかというと、僕はレジェンドが増えすぎたせいじゃないかと思うんです。

 沢山の人がミリオンヒットを飛ばして、その作り手の物語に注目が集まりすぎてしまったんじゃないかと思うんですよね。そのことで、聴き手はその人たちの物語を消費するようになっていったと思うんです。

 つまり、作品そのものじゃなくて、アーティストに共感するようになった。それには限界があると思うんです。その人自身が老いていったり、別の方向に進んでいったりすると、先細りしていってしまう。それが一つの大きな原因なんじゃないかと思うんです。

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