乃木坂46は今後どこに向かうのか? レイチェル×さやわか×香月孝史が徹底討論(前編)

 

「アンダーメンバーもすごく良いライブをするが、新規の獲得にはつながりにくいかも」(レイチェル)

香月:今回の『何度目の青空か?』も、おそらくそういう代表作をまたひとつ作ろう、という意識で出した楽曲に思えます。AKB48グループ全体のファンだけれど乃木坂46だけ知らない、という人は一定数いるので、去年の『ガールズルール』や今年の『夏のFree&Easy』のような“AKB48っぽい曲”で、AKB48のファンにもついでに聴いてもらおう、という方向に寄せているのかもしれません。そこを入り口にしてもらわないと、本当に閉じてしまいますから。

さやわか:正直なところ『ガールズルール』あたりから「あれ?そういうことなの?」「結局、水着でみんなで踊る系?」とは思ってました(笑)。さじ加減の難しいところなんでしょうね。乃木坂46の場合は最初からオリコンで上位を取れたので、いいスタートを切れたぶん、単純に良質な楽曲にこだわるだけでなく、その売り上げを伸ばしていかなければいけない。そういう意味で『ガールズルール』や『夏のFree&Easy』のような楽曲もまた必要なんだと思います。

――AKB48が『夏祭り』のような大規模イベントを行うのに対して、乃木坂46は「お茶会」「かるた会」のようなイベントを開いています。このシステムについてはどう思いますか。

香月:着座の落ち着いた感じのイベントですね。

レイチェル:例えば川村真洋さんなんかはファンとも顔見知りになっていて、みんなで被り物を事前に合わせて持ち込んで、『不思議の国のアリス』のお茶会みたいな雰囲気で楽しんだそうです。

さやわか:ヲタ同士が、メンバーも含めてつながったコミュニティになっていると。

レイチェル:はい。メンバーによるとは思うのですが、全体的にまったりとした感じで、入れるファンの数も限られています。

香月:AKB48の『夏祭り』は、グループ全体での催しですね。特にAKB48名義のシングルが出る場合、AKB48グループ全体の注目株を吸い上げるような選抜システムになっていることもあり、握手会の来場者数やメンバーの総数が多くなった結果、イベントの規模が大きくなっています。

――「専用劇場の有無」も、両グループの違いとして真っ先に挙げられるものです。

香月:選抜メンバーがある程度、固定化してくるのはどのグループも仕方のないことかもしれませんが、AKB48は劇場があることで、「劇場で頑張っているから総選挙のときに票が集まった」というように、選抜メンバー以外にもしっかりしたアプローチの場が用意されています。そういった意味では乃木坂46の場合、選抜・アンダー・研究生の全員が出演する演劇公演『16人のプリンシパル』がアピールのための場として代表的なもので、年間スケジュールの中でもかなり大きなイベントになっています。演技力を高めたいという方向性が強いのは乃木坂46の特徴であり、運営委員会の委員長である今野義雄さんも、『OVERTURE』のインタビューで「“劇団”のような女優集団を目指したい」ということを仰っています。ただ、受け取るファンの側はあくまでアイドルというジャンル――AKB48系のフォーマットを前提にして受け取るので、どうしても「他のグループだともっと活躍できたかもしれない子が、劇場がないから目立つ場がない」という基準で見られるのは仕方のないところですね。

レイチェル:アンダーメンバーもすごく良いライブをするんですが、選抜のメンバー推しや乃木坂46自体には興味が無い人はなかなか行かないと思うので、新規のファン獲得にはつながりにくいかもしれないです。

香月:『アンダーライブ』『アンダーライブ セカンド・シーズン』のメイン会場になっている六本木ブルーシアターもそこまで広い場所ではないので、最初から行きたいと思っているアンダーメンバーのファンでもチケットの争奪戦になります。興味を持った新規が後からチケットを獲るのは難しいですね。

レイチェル:その分、会場はみんなファンなので、普段アピールの場がないメンバーが歓声を浴びて一際かっこよく見えますし、アンダー推しの人はそこで報われていると思います!

さやわか:ただ、アンダーライブに力を入れると、今どきの他アイドルの形に近づいていってしまう部分もあるので難しいですね。最近は、ライブ以外の路線の模索としてアイドルがステージで演劇をしたり、メンバーが個別に女優業に力を入れていたり、ということも目立ちますが、注目度が高いぶん、その方向で一番うまくいっているのが乃木坂46かもしれません。だからこそ、この路線を貫いて、業界にオルタナティブな提案ができたら素晴らしいですよね。

香月:他のグループでも女優志向のメンバーに個別で演技の仕事を取ってくることはありますけれど、これだけ大人数のグループが全体としてそれを志向する、というのは珍しい形です。

さやわか:その演技がMVで見れるのも魅力的ですね。AKB48がイメージビデオに近いのに対して、乃木坂46はドキュメンタリータッチだったり凝ったドラマ仕立てで、演技もしっかりしています。

香月:ともすればドラマの後ろに曲が鳴っているような。

さやわか:『バレッタ』も最初は「こんな物語でいいの?」とびっくりしたけど(笑)、ちゃんと先が気になるような話ですね。そういう意味で、保守的に見えながら実は実験的で、今の本流ではないものをいろいろやっている面白いグループです。

香月:少なくとも今のスタンダードにならっていたら絶対にこの方向には行きません(笑)。

(後編へ続く)

(構成=中村拓海)

■リリース情報
『何度目の青空か?』
発売:2014年10月8日(水)
価格:初回仕様限定(CD+DVD)盤 Type-A、Type-B、Type-C 1,650円(税込)
   通常盤(CDのみ) 1,050円(税込)

乃木坂46 official website

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