ゆず、福山雅治、般若、大森靖子まで……長渕剛が音楽シーンに与えた影響とは?
ほか、福山雅治やMr.Childrenの桜井和寿、GLAYのTAKUROなど、多くの大物ミュージシャンも影響を受けたことを公言していますし、般若やZeebraなど、ヒップホップ界隈でも長渕を慕うミュージシャンは少なくないです。長渕の歌には反骨精神ややさぐれた感傷がこもっていて、そうした部分が多くの人々の共感を呼ぶのだと思います」
また、パフォーマンスやモードの面でも音楽シーンに大きな足跡を残してきたと、同氏は続ける。
「フォークは70年代に興隆を極めましたが、80年代に入りニュー・ミュージックという言葉が流行り始める頃にはシンセサイザーなどが流行し、アコースティックギターは一気に支持を失います。フォークの神様であるニール・ヤングやボブ・ディランまでがエレキギターを持つ時代でした。そんな中、長渕は86年にアコギ1本でロックンロールをやると宣言し、『STAY DREAM』ツアーを成功させます。ヘッドセットマイクやエレクトリック・アコースティックギターといった、今となっては定番となっている機材を導入し、センターステージに立ってギター1本で1万人のリスナーに挑むスタイルはまさに画期的でした。実は、多くの人が使う弾き語りのスタンダードになっている楽器周りは長渕が考案したものが多いんです。エレアコギターもハーモニカもハーモニカホルダーも長渕がステージで動き回りやすいように改良されていきました。それまで弾き語りといえば座ってしっとり演奏することが主流でしたが、長渕がこのスタイルを生み出したことで、パフォーマンス面でも進化し、後のニュー・フォークの勃興にも繋がったのです。最近では、たとえば大森靖子さんなどがエレアコギター1本を抱えて、ステージ上を縦横無人に動き回ったりしますが、そうしたパフォーマンスも長渕の功績の上に成り立っているといっても良いでしょう」
今年7月にはベストアルバム『Tsuyoshi Nagabuchi All Time Best 2014 傷つき打ちのめされても、長渕剛。』をリリースし、約2年ぶりとなる全国ツアーも行った長渕。2015年夏には10万人規模のオールナイト野外ライブを行うことも決定しており、さらに新たなフォロワーを獲得しそうだ。
(文=松下博夫)