いま、アイドルの恋愛禁止をどう考える? 評論家が「落としどころ」を探る

 ここ最近、アイドルの“恋愛禁止”をめぐるニュースや騒動が増えている。今年4月には恋愛禁止を契約書の条項にまで記載しているという某アイドルのメンバー2人がファンと交際したとして脱退、総合プロデューサーがファン2人の実名を公表して裁判に訴える騒動に発展した。10月8日発売の『週刊文春』(文藝春秋)に乃木坂46・松村沙友理の密会写真が掲載され、波紋を呼んたのは記憶に新しい。一方、ゼロ(元AKBN 0)の運営元であるブライダルプロデュース会社カンドウが、“付き合える”アイドル「ハップニングガールズ(仮)」を結成し、恋愛禁止ルールの普及を逆手に取った手法で話題を集めている。

 この問題について、アイドルカルチャーに詳しいライター・物語評論家のさやわか氏は、アイドルが“夢を売る存在”としてビジネスモデルを形成しているとして、恋愛禁止のルールにも一定の理解を示す。

 「アイドルとはファンに“夢”を売るビジネスモデルであり、そこでは『恋愛禁止』が当然のように成り立っています。“夢を売っている=虚構”とも言えるでしょう。そして、その虚構に入れ込んでいるファンからは、恋愛問題が現実として明るみに出たときに、いたずらに糾弾されてしまう。このようなことは本当はあってはいけないと思っているのですが、同時に“虚構”を商売としてやっている以上は、恋愛沙汰が明るみに出るーーファンの目に触れてしまうような行為は避けるべきであるとの見方もある。もちろん、特定の誰かに恋愛感情を持つことは人間である以上、どんなアイドルだってあると思うし、仕方ないことではありますが」

 メンバーの恋愛事情が明るみに出た場合、卒業や脱退といった“グループを抜ける”厳罰処分が望ましいという意見も多いが、さやわか氏は「厳罰にすることで、存続が危ぶまれるグループもある」と話す。

 「恋愛をしたら卒業・脱退というケースは今までにいくつもありましたが、厳格にルールを定めればいいかといえばそうではない。実際に厳しく取り締まったグループも存在しますし、そのゲーム性が面白いと捉える運営もいますが、そうすることでグループの存続が危ぶまれることもあるし、結果的に誰も幸福になっていない。厳格にしたお蔭でそのアイドルが売れるかといわれればそうではないですし、炎上商法に近いようなことになってしまっているのが現状です。『私たちは恋愛しません!』という触れ込みは、もはや“法だけ作って取り締まらず”という非常に日本的な考え方として捉えるのが健全な気はしますね」

 また、AKB48の登場により、責任の取り方についての世間の認識が変わったと分析し、シーンを持続させるためにはファン同士の支え合いも重要であるという。

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