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新作『WORKS IV -Dream of W.D.O.-』インタビュー

久石譲、エンタテインメントとクラシックの未来を語る「人に聴いてもらうことは何より大事」

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「メロディは意外と古くならないけど、言葉は真っ先にダメになる」

――久石さんからご覧になって、ミニマル・ミュージック以降で、新しいことをやっているなと思うポピュラーミュージックはありますか。

久石:ありますよ。しかし残念ながら、ポップスの構造というのは単純なんです。和音も似たり寄ったりだし、リズムにも凄まじい変化があるわけではなく、どうしてもメロディラインが基準になってしまう。メロディに対してコード進行をつけるけど、皆が歌えることが前提になるので、複雑化させることが良いとは言えません。ポップスの面白みやすごさは、メロディと言葉が一体化したときに独特のものが出てくることです。特に言葉は、時代が反映されるから厳しいですね。多くのポップスミュージシャンやシンガーソングライターがコケてしまうのは、言葉なんですよ。すぐに時代に合わなくなってしまうから。

 その点、メロディは意外と古くならないんです。良いメロディに時代に合うリズムを取り入れれば、一応形になるはずなのですが、真っ先にダメになるのが言葉です。言葉の表現は、作り手がある年齢に達したとき、若い人たちに「これは自分の歌じゃないな」と思われてしまう。響く範囲がものすごく狭いから、可哀想だなと思いますね(笑)でも、たまにものすごく衝撃的なことが起こることがあります。昨年ATSUSHIさんとのコラボ曲(「懺悔」)なんかは、商業ベースをすべて無視してつくったから、意外といい作品ができました(笑)。

――ポピュラーミュージックはつまるところ、言葉であると。

久石:基本は、歌ですよね。言葉とメロディが一体になったときに、理屈じゃないところで世界がずんと重く感じられるときがある。それがポップスの持っている圧倒的な力なんだと思います。

――他方で、現在ご自身がオーケストラ音楽に注力されているのは、クラシック音楽を多くの人に届けようという意図もあるのでしょうか?

久石:あります。ポップスをやっている人間から見たクラシックの最大の問題は、「古典」になってしまうこと。要するに、過去から繋がってきて現代があって、その先に未来がなければいけないのに、まるで過去しか存在しないような排他的な世界になりやすいことです。「ベートーヴェンは神様」みたいな人たちとやっていると、一般の人が入れない世界に入っていってしまう。

 二十世紀の後半は現代音楽が盛んでしたが、いまは多くの音楽家が十分に活動できなくなっています。すると、みんな集客力の高い古いクラシックの曲を演奏するしかなくなって、音楽の流れが途切れてしまう。途切れると、未来はありません。だから僕は、クラシックのプログラムにも必ず現代音楽の要素を入れます。未来に繋がる新しい音楽を提供していかないと、クラシックはただの古典芸能になってしまう。それに対する危機感は、強く持っています。

――二十世紀後半に盛んだった現代音楽が行き詰まったのは、作曲者や演奏家を支援する体制がなくなったからでしょうか。

久石:それもありますが、もうひとつ「脳化社会」というか、ほとんどみんな頭でつくりあげたような作品ばかりになったことも大きいと思います。十何音の不協和音が飛び交うような音楽では、多くの人の理解を得るのは不可能だろう、ということです。机上で書いた空論ばかり。プロでも違いのわからない、勝手に頭のなかで組み立てた音楽だけになってしまうと、観客はいなくなり、希望に燃えてつくっているものが頭打ちになってしまう。

 それに対してアルヴォ・ペルトという作曲家などは、不協和音も書いていたけれど、「原点に戻らないと音楽がダメになる」と先陣を切り、多くの音楽家がその方向に向かいました。その大きい動きの中に自分もいるという気がします。いま日本にいる、いわゆる「現代音楽」の作曲家と同じことをするのではなくて、僕がやりたいのは「現代“の”音楽」。エンタテインメントの世界にいるから、人に聴いてもらうことを何より大事に思っているんです。だから、現代にあるべき音楽というのを一生懸命紹介したり、書いたりしていきたいですね。

――未来につないでいきたいというのは、どういった場に向けてですか。

久石:基本的にはコンサートとCD、できるだけあらゆるメディアを使って表現していく必要があると考えています。場合によっては文章でもいい。そのために、いろんなスタイルで発信していくつもりでいます。

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