デビュー前にグラミー賞を獲得した注目の歌姫・キンブラ「別の世界に連れて行ってくれるのが音楽の力」

「可もなく不可もないような反応しか得られない曲を一番に送り出しても意味がない」

――ミューズのマシューやフォスター・ザ・ピープルのマーク、ジョン・レジェンドやサンダーキャットなど、とにかく豪華な面々が参加していますが、彼らが今作に参加することになった経緯を教えていただけますか?

キンブラ:一連のコラボレーションは本当にオーガニックに起きたの。ほら、ヒップホップ・アルバムのコラボレーションみたいに、こう、意図的に誰かをフィーチャーするんじゃなくて。だから私のアルバムの場合、すごくビッグなアーティストが参加していたとしても、その人は必ずしも重要な役を担ってるわけじゃない。ごくシンプルなギターパートを弾いてくれているだけだったりするわ(笑)。もしくはドラムを叩いているだけとか、その人が主役ってわけじゃない。それが、そもそものアイデアだったの。多彩なミュージシャンたちに、それぞれのキャラクターだったり何かユニークな持ち味を提供してもらうことで、サウンドを膨らませたかったの。曲に何らかの色彩を加えてもらうような感じね。そんなわけで、本当に色んな人と、それぞれに異なる実験をしたわ。実はコーネリアスともコラボしたの。とってもエキサイティングだった。一緒に曲を作っていたんだけど、完成に至っていなくて、いつか何らかの形でリリースできたらうれしいわ!

――そうなんですね。知らなかったです。

キンブラ:そうなのよ。メールをやりとりしながら作業をしたんだけど、最高だった! ほかにもアルバムに収めることができなかったコラボレーションがたくさんあるの。アルバムのボリュームには限界があるから。

――次作で共演してみたいアーティストはいますか?

キンブラ:一緒にやってみたい人とは、今回ひと通りコラボできた気がする(笑)。それに次回は全然違うアルバムになるかもしれないでしょ? 全くコラボレーションはしないかもしれない。私って、独りで作業するのも好きなの。だからどうなるか分からない。もし誰かと組むとしたら、映画音楽の作曲家にはすごく興味がある。例えばダニー・エルフマンみたいな人とコラボできたら、素晴らしいでしょうね。その手のコラボレーションなら関心があるけど、様子を見るわ!

――数ある曲の中から「90s Music」をファーストシングルにしようと思った理由は何ですか?

キンブラ:なぜなんだろう。すごく遊び心があって、かつ実験的な曲でもあるからじゃないかな。アルバムを聴くにあたって、人々にオープンマインドになってもらって、心の準備をしてもらうにはピッタリの曲だと思う。だって、このアルバムはかなり長い旅になるから(笑)。「90s Music」は結構スピーディーに仕上がったけど、とても楽しくて若々しくて、エネルギーに溢れていて、ファーストシングルに選んだのは自然だった気がする。と同時に、人々の興味を引かずにはいられないインパクトがあると思うの。可もなく不可もないような反応しか得られない曲を一番に送り出しても意味がないし、何らかのリアクションを引き出したいなら、思い切って人をあっと言わせる曲を選ばないと。特に今のご時世、それが必要だと思う。そして、ものすごくカラフルなアルバムだってことを、みんなに予告している曲でもあるわね。

――MVには日本語の文字も見受けられましたが、日本語を取り入れようと思った理由は?

キンブラ:そうなのよ! そもそもこのビデオは日本のカルチャーにすごくインスパイアされているからだと思うわ(笑)。

Kimbra- 90s Music [OFFICIAL MUSIC VIDEO]

――「90s Music」のDJシャドウやM-Phazesによるリミックスが公開されましたが、彼らを起用することになった理由は何ですか?

キンブラ:私はリミックスについてはいつも、とにかく自分が好きな人、自分がリスペクトする人たちにアプローチしてみるの。例えばDJシャドウは私が高校生の頃からずっと聴いてきた人で、伝説的なDJ/プロデューサーよね。で、曲を聴いてもらって、何らかのコネクションを感じてくれたらお願いする。だからいつも、できるだけ大勢の人にそうやって探りを入れてみるわけ。誰かが曲にエキサイトしてくれたらって願いつつ。

――「Miracle」は「90s Music」とはガラリと雰囲気の変わったディスコソングですが、この曲を次のシングルにしようと思ったのはなぜですか?

キンブラ:この曲は、フライング・ロータスとの仕事で知られる偉大なベーシスト、サンダーキャットと書いたの。アメリカにいる時に彼とすごく親しくなって、かなりふたりでジャムしたわ。そしてもうひとり、シルヴァーチェアのダニエル・ジョンズも参加してる。ダニエルとも仲良くなって随分長い時間を一緒に過ごしたから、ふたりと曲を書いたら、面白いことが起きるんじゃないかしらって思い付いたの(笑)。このアルバムはリッチ・コスティと一緒にプロデュースしたんだけど、プロデューサーとしての私たちの役割のひとつは、自分が面白そうだと感じる人たちを一室に集めて、どんな結果になるか実験するってことだと思う。面白いエネルギーが生まれる状況を作り出すの。だからこそこの曲はすごくメロディックで、それはダニエルの貢献だと思うし、私のメロディセンスも反映されているんでしょう。でもその一方で、フューチャリスティックでサイケデリックなディスコ調のフィーリングがある。それは間違いなくサンダーキャットの演奏スタイルに、彼のミュージシャンとしての本質に根差しているわ。だから曲を作るのは本当に楽しかった。歓喜と感謝の気持ちと自由の歌が生まれたと、全員が実感していたはずだから。

――本作のサウンドは何層ものレイヤーで非常に緻密に構成されていて、曲の展開も複雑ですよね。音作りはどんな風に行なったんでしょう。まずは思いつく限りの材料を重ねていって、それから、曲の本質を探りながら編集した――という感じ?

キンブラ:まさにそんな感じね。多分私自身、そういう説明の仕方をしたと思う。まず、何百色もの絵具を乗せたパレットを手にした画家みたいに、あらゆる色をキャンバスに叩きつけるようなアプローチをとったわ。もちろん最終的にどんな曲にしたいのか、自分なりのアイデアがあるんだけど、そういうアプローチの一環として、今回の私はたくさんのサンプルを使って、いろんな材料をカットアップする作業をかなりこなした。つまり、コラボしたミュージシャンたちが、事実上のサンプル・ライブラリーになったってわけ。ザ・マーズ・ヴォルタのオマー(・ロドリゲス・ロペス)が弾いたギターだったり、サンダーキャットが弾いたベースラインだったり。だからそのライブラリーを開いて、曲を何度も聴きながらあれこれ試して、何時間もかけてカットアップして編集するわけ。コーネリアスとのコラボも然りで、彼が送ってくれた音源を私が切り刻んで、アレンジし直して、色々異なる試みをするの。そして最終的に、もうこれ以上は詰め込めないという限界に達して、そこから再び曲を掘り出すのよ。そのプロセスが一番難しいわ。サウンドの刺激に惑わされて、曲の本質が見えなくなってしまいがちだから。でも、難しいんだけど楽しいのよ。だってイマジネーションを暴走させて、延々とスタジオに籠もって、あらゆるオプションを試すんだから。とにかく大胆であることが重要なの。一切制限を設けずに、可能な限りシネマティックでシアトリカルに仕上げるのよ。

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