『「16人のプリンシパル」trois』公演総括レポート

乃木坂46にとっての“総選挙” 今年のプリンシパル公演で輝きを放ったメンバーは?

プリンシパルで脚光をあびたシンデレラガールズ

“今が、革命の時”斎藤ちはる

 プリンシパル前半で若月と共に脚光を浴びたのは、間近の9thシングル選抜発表で選抜から漏れ、1期生では唯一の選抜未経験者となった斎藤ちはるだった。初日に生駒里奈との一騎打ちを制しロザリオ役に選ばれると、勢いそのままに翌日は生田、白石など6名の激戦区を制してエステル役を獲得した。「面白いと言われるのが一番嬉しい」と本人が言うように、今回のテーマと自身のキャラクターがうまくはまったのだろう。さらにその翌日には同い年である“生まれながらのプリンシパル=生田絵梨花”との一騎打ちになり、「今が、革命の時」と発言。まさに下克上が起こらんとする展開に会場は大いに盛り上がった。彼女の活躍は自身のモチベーションアップにつながっただけでなく、改めて選抜メンバーとアンダーメンバーの垣根を越え、役をかけて勝負するプリンシパル公演の醍醐味をファンに教えてくれた。

“やる気ないキャラ“を卒業(?)した星野みなみ

 今回のプリンシパルでここまでの活躍が予想されていなかったのは”無気力キャラ”としておなじみの星野みなみではないだろうか。そもそも今回の意気込みが「皆勤賞」だった彼女が(「16人のプリンシパル deux」は不参加)、最終的には2幕に16回も選出されることとなった。きっかけは5月31日のことで、その日の2公演には共に2幕に出ることができず、夜公演のスピーチで「やる気ないってレッテルをはがしたい」と宣言していた。その後、投票で10役に選ばれなかったメンバーの中から、得票数の高い順に選ばれる“アンサンブル”でたびたび2幕に出るようになっていった。実際のところ、他のメンバーが1幕のコントでモノマネやキャラ作りで勝負するなか、彼女は基本的に「星野みなみ」のままだった。そのため、「やる気ないキャラ」を卒業できたかは怪しいところではあるが、先の宣言がファンからの注目と期待を集め、“アンサンブル”として11公演で2幕への出演を勝ち取ったといえるのかもしれない。選抜復帰を果たした9thシングルでは、私たちに“本気の姿”を見せてくれるのだろうか。

「演技力で勝負し通した」井上小百合

 舞台『帝一の国』で、樋口日奈とともにヒロインを演じた井上小百合が常々言っていたのは、「演技力で勝負したい」ということだった。6thシングルまで選抜常連で福神に対して強いこだわりを持っていた彼女が、アンダーメンバー期間につかんだ舞台という仕事で得た自信から、そう口にさせたのかもしれない。ファンから“天使”と称される見た目とは裏腹に、1幕のコントでは、おじいちゃんや強盗など、与えられたキャラ設定を忠実に守り、そのうえで笑いも取りにいっていた。そんな彼女の姿を見て、2幕でもその演技力を発揮してほしいと感じた観客は少なくなかったのではないだろうか。審査基準が「笑い」≧「演技」だったなかで、主要10役制覇を達成した彼女は今回のプリンシパルにおいてもっと評価されていいメンバーの1人ともいえそうだ。

若月「私にとっての総選挙はここです」

 6月7日、生駒里奈も参加したAKB48の選抜総選挙が行われていたのと同時に進行していた夜の公演で、若月佑美は「私にとっての総選挙はここです」と宣言した。もしかすると、毎回審査員である観客が異なり、オーディションのコントの内容も異なるプリンシパル公演は、選抜総選挙より予定調和の少ないものといえるかもしれない。乃木坂46にとって勝負の年である2014年、プリンシパルで一皮むけた彼女たちの今度の活躍にますます期待がかかる。

■ポップス
平成生まれ、沖縄育ち。音楽業界勤務。Nogizaka Journalにて『乃木坂をよむ!』を寄稿。

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