加藤ミリヤ最新作インタビュー
「愛には形なんて必要ない」加藤ミリヤが新作『LOVELAND』で決めた“覚悟”とは
――「LOVELAND」という言葉は造語ですが、加藤ミリヤ解釈の「LOVELAND」の定義とは?
加藤:愛の形は基本、ハート型のイメージですけど、実際に愛には形なんて必要ないし、自由に愛を捉えて構わない、ということです。“好き=愛してる”が最善の形ではないと思うし、見ず知らずの人を思いやる愛もあれば、思い合えていなくても一方的に継続する愛もある。そういった広い視点で『LOVELAND』は制作しました。
――新作からの先行シングル『Lonely Hearts』は、サード・シングル『ディア ロンリーガール』(05年)を思い返さずにはいられない楽曲ですが、なぜいまこのテーマを?
加藤:当時は自分自身と向き合うことで精一杯だった。私は自分を救いたいために音楽を始めたんです。でも、いまは年齢を重ねて、みんなが向き合ってることと私も向き合い、ティーンの子の気持ちを歌うことで、今度は私がみんなを助けたい、と思ったんです。私が『ディア ロンリーガール』を歌ったのは16歳のとき、いま16歳の女の子は私のことを知ってくれていても、『ディア ロンリーガール』のことは知らないかもしれない。そんなことから『私が歌わなくちゃ』という使命感もありました。
――シングル『HEARTBEAT』や『EMOTION』に顕著で、今作の収録曲ではタイトルの如く加藤ミリヤのユニークな一面が垣間見られる『UNIQUE』のようなEDM路線の楽曲は極端に減っていますが、これは以前取材で話していた「誤解を招くかもしれないけど、4つ打ちは歌うのが簡単」ということに関係していますか?
加藤:悪い意味ではないんですが、私にとって4つ打ちの曲はどうしても歌い方の表現が規制されてしまうんです。歌のスキルが落ちてしまう、という不安の意味ではないんですが、今回はただ純粋にR&Bサウンドを欲していた、というのがあります。それに、私より歌がうまい人はたくさんいるし、心の底から自分の声を好きとは言えないし、もっと歌がうまかったらよかったのにな、って不満な点を挙げたらキリがないんですが、“加藤ミリヤにしかできないこと”もたくさんあると思うんです。それを今回のアルバムでは確実にやれたと自信を持てたので、作り終えて本当によかったな、って感じます。実際に客観的に聴いて『あ、私この人の歌、好きだ』って感じることもできましたからね。
――そういった意味では、先の話にも出た「冷静と情熱のあいだ」というタイトルは、加藤ミリヤというアーティストを非常にうまく表現しているような言葉ですよね。
加藤:自殺をしてしまう子、殺人事件に巻き込まれてしまう子、そういった報道をたくさん目にする中で、最近は他人事に思えない気持ちが強くなって、『冷静と情熱のあいだ』を書いてみようと思ったんです。冷静でいることも情熱的であることも必要だけど、私がやるべきところは、その“間”を縫うことなんじゃないかな、って。
――まさに、“冷静と情熱の愛だ”ですね。
加藤:本当は“間”でもよかったんですけど、あえてひらがなにしたんです。いろんな捉え方ができると思うんですけど、『あ、こんなところにも愛』っていう深読みは、嫌いじゃないです(笑)。
――デビューから10年、加藤ミリヤ自身、もっとも成長したと思う点はどんなところですか?
加藤:優しくなれたこと、かな。“優しい”という感覚は、私の人生においてもっとも遠く、対極の位置に存在するものだと思っていたんですが、誰かのことを思うことで自分が生きている、生かされていることを知ったような気がするんです。それは今後、キャリアを積めば積むほどさらに実感していくと思います。
――最後に、10周年イヤー、どのような年にしたいですか?
加藤:『もっとがんばれたのに!』って思わないように、後悔しない年にしたい。初心忘るべからずの精神で、10周年も謙虚にいきたいです。もっともっと私のことを好きになってもらえる、知ってもらえるチャンスは逃したくありませんからね。
(取材・文=佐藤公郎)
『LOVELAND』
発売:2月19日
価格:3,150円
〈収録曲〉
01. Lonely Hearts
02. Shape of love
03. Love/Affection
04. UNIQUE
05. 神様
06. The One
07. EMOTION
08. LOVER -Episode II-
09. PRIDE
10. You're Beautiful
11. RUN FREE / AI+MILIYAH+VERBAL
12. One Night Only
13. 冷静と情熱のあいだ
14. Loveland