2PMの新作アルバムがチャート1位 「K-POP後発組」がセールスを伸ばす背景とは

参考:2014年1月27日~2014年2月2日のCDアルバム週間ランキング(2014年2月10日付)(ORICON STYLE)

 先週1位のAKB48 『次の足跡』は初週で96万2000枚というミリオンギリギリの自己最高記録を更新しながら、今週は3位に後退。2週目でミリオン突破未遂(発売16日目で達成)に終わるという、いかにもAKBらしいセールス高低差のあるチャートアクション。それにしても、シングルのタイトルはいつもそれなりに考え抜かれているのに、前作の『1830m』といい、本作の『次の足跡』といい、AKBのアルバムタイトルはいつも素っ気ない。そのタイトルの意味するところはファンにはすぐ分かるんだろうけど、「そもそも『次の足跡』って、日本語としての据わり的にどうなの?」と物書きの端くれとしては思ってしまう。しかも、ちょっと変わった用語だからといって、それが特に印象に残るわけでもないし。5年後や10年後、もしAKBのことが人々の記憶に残っているとしたら、それはシングル曲であって、決してアルバムではないということを、作り手側が最初から見切っている感じがするし、実際にそうなるのだろう。

 そして、今週1位となったのは、K−POP男性アイドルグループ2PMの日本におけるサードアルバム『GENESIS OF 2PM』。6万3000枚というセールスは、同じく1位を獲った昨年のセカンドアルバム『LEGEND OF 2PM』の5万1000枚を軽く上回っている。約3年半前、「野獣系アイドル」というマスコミの触れ込みとともに日本に上陸、東京ドーム公演を成功させるなどしてきた彼らにとって、一見、現在の韓流ブームに吹く逆風など、まったく無関係のようにも見える。

 「韓流ブームの終焉」といえば、つい先日もサンケイスポーツが発刊していた有力韓流エンターテイメント誌『韓Fun』が突然休刊を発表して話題となったばかり。ネット上に読者へ向けた「休刊のお知らせ」の文面がそのままアップされていたが、休刊の理由が「韓流ブームが一段落したことに加え、諸般の事情により」と、ブームの立役者に「一段落」認定されてしまうという事態にまでなっている(散々商売してきたんだから、もうちょっと他の言い方はないのかよと思うけど)。

 その一方、東方神起や少女時代を筆頭に、一部のK-POPグループには今でも日本で根強い人気があることは本チャート分析でも度々指摘されてきているが、それにしても、後発グループにして、ここにきて売り上げを伸ばしている2PMはやはり異色の存在だ。その背景には、周囲に反対されれば反対されるほど燃え上がっていく恋愛心理、さらに言うなら、世の中の熱が冷めていけばいくほど組織内の締め付けが強まっていく、まるで学生運動のピークが過ぎた後の連合赤軍的な心理状態があるのではないだろうか(ちょっと大げさ?)。

 ファンの間ではよく知られているように、数々のスキャンダルやトラブルが続いてきた2PMに対して、現在、韓国国内における風当たりは非常に強いものがある。それもあって、ここ数年、他のK-POP勢と比べても、日本での活動にかなり精力を注いできた2PM。そんな追いつめられた者同士の強い結束が、今回の1位という結果になったのではないか。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集を経て独立。現在、「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「BRUTUS」「ワールドサッカーダイジェスト」「ナタリー」など、各種メディアで執筆中。Twitter

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