欧州ダンス勢が米チャート席巻 EDMが世界の音楽シーンに与えた影響とは?

 アメリカで生まれ、ヨーロッパで革新されたダンス・ミュージックが、再びアメリカに舞い戻ったという見方もできるかもしれない。北米を中心に起きたEDMムーヴメントであるが、そのトップ・アーティストたちの多くがヨーロッパ勢だというのがポイントだ。冒頭のアーティストの他、デヴィッド・ゲッタ(フランス)、スウェディッシュ・ハウス・マフィア(スウェーデン。2013年に解散)、ティエストにアフロジャック(共にオランダ)など代表的なアーティストに加え、新進気鋭のDJやプロデューサーが日々フックアップされている。

 このように様々な国のDJやアーティストが、EDMを通して世界一の音楽大国であるアメリカで活躍していることが、これまで存在していた垣根を失くした一助となっているのは確かだろう。特にビルボード・チャートは、セールスだけではなくYouTubeでの再生回数もランキングに反映するひとつの要素となっている(その結果バウアーの『Harlem Shake』が首位を獲得したのは昨年話題となった)。インターネットの普及により、「セールス=流行」の方程式が崩れて久しいが、こういった時代を的確に捉えようとする姿勢もあいまって、音楽チャートも“いま”を伝えるものに、遅ればせながら追いついてきている。日本のチャートと比較すると一目瞭然だ。年間チャートの上位の曲を、知らない人が多いのだから。

 その時代性とつながる話だが、ブラック・アイド・ピーズのウィル・アイ・アムは、インタビューで「音楽を作る=音楽を売る」ではないと発言し、EDMシーンのことに言及して、ショウに行き、大勢の人と同じ空間で同じ気持ちを共有することに、オーディエンスは意義を感じていると語っている。筆者がアフロジャックにインタビューしたときにも「EDMとはただの音楽ジャンルではなく、みんなが望んだもっとも新しいユースカルチャーだ」と、同様の発言していた。

 実際に、EDMはチャートでの実績以上に、現場での盛り上がりがとんでもない。マイアミの『Ultra Music Festival』は2013年に30万人を動員し、その後発売された2014年の前売りチケットは数秒で完売。またベルギーの『Tomorrowland Festival』も似たような現象が起きている。まるでセカンド・サマー・オブ・ラブの再燃のようだが(今回の場合はもっと健全だが)、こういったフェスやショウに出演するアーティストは、直前に新曲や新リミックスをSNSなどを通して、無料配信をすることが多い。オーディエンスはそれをチェックして、会場へ向かう。そして、その曲が会場に響いた瞬間に、その場で出会った数万~数十万規模の他人と同じ興奮を共有するのだ。

 「音楽を売る」というビジネスモデルから、音楽を現場で体感させて、多くの人とコネクトした得難い空間を生むというスタイルへの移行は、急速に広がっている。今年、日本でも『Ultra Japan 2014』が開催されることが決定しているが、ヨーロッパ勢のアーティスト、そして彼らが生み出すムーヴメントが現行のシーンにどのような影響を与えるか、注目していきたい。
(文=中西英雄)

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