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「新しいマスメディアを作る挑戦権は得た」AbemaTV編成制作本部・谷口達彦インタビュー

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 4月に開局2周年を迎え、「ネット発のマスメディア」という類を見ない目標に向かい、放送の規模や視聴者数を着実に伸ばしている、AbemaTV。その現在地から“インターネットテレビ”の未来を探る特集の第一弾として、編成制作本部・制作局長としてオリジナル番組制作を統括する、谷口達彦氏にインタビューを行なった。2年間で得られた手応えと課題、チャンネル及び番組編成のポイントから、番組の品質管理、現在注力しているオリジナルドラマの展開まで、ライターの麦倉正樹が聞く。(編集部)【最終ページにAbemaTVオリジナルクリアファイル(非売品)のプレゼント情報あり】

インターネットテレビ局は“無し”ではない

――AbemaTVの開局から丸2年が経ちました。現状、手応えは感じていますか?

谷口達彦(以下:谷口):想定していた手応えは感じていますが、まだまだこれからが勝負です。今「AbemaTV」は“新しいマスメディアを作れる可能性がある50年に一度の機会”に直面しています。そういう意味では、そうなっていくための挑戦権を得るぐらいの規模や状況にはなったのかなと、この2年を振り返ると思います。外部メディアでネット動画サービスのユーザー数を比較していて、開局から1年経ったぐらいから、YouTubeに次いで第2位にAbemaTVがランクインしたりしていますが、それは、まだまだ市場が確立できてないということだとも思います。なので、フロンティア精神を持って、これからも市場を切り開いていくという気持ちでいますね。

――確かに、AbemaTVのような「インターネットテレビ」は、前例がないというか、天井がどこにあるのか、まだわからない世界の話でもあります。

谷口:そうですね。もともと、“インターネットテレビ局”というメディア自体が有りか無しかもわからないところから始めたのですが、この2年間やってみて、無しということではなかったし、新しいマスメディアを作る挑戦権も得ることができるぐらいの規模にはなれましたが……やはり、ここからが勝負かなという感じがしています。

――今、「YouTubeに次いで、視聴者数が2位」という話が出ましたが、「インターネット発のマスメディア」という言葉も掲げられているなかで、比べる相手は、本質的にはYouTubeではないわけですよね。

谷口:そうですね。今はとにかくユーザーを増やしていくフェーズだと考えています。結構驚かれる方もいるのですが、ドラマなどオリジナル作品をYouTubeで全編公開していたりします。今は、何よりもまず、番組を認知してもらうことが大事だと考えているので、YouTubeを競合とはとらえていませんね。

――アプリダウンロード数、ユーザー数などのデータを教えてください。

谷口:今年の5月時点で、AbemaTVのアプリが、3000万ダウンロードを突破しました。「マスメディア」と言うには、一週間に1000万人ぐらいのユーザーが、アクティブに訪れている規模があるということが必要だと考えていて……今はその道半ばですが、MAU(月間アクティブユーザー)は1100万前後の規模、WAU(週間アクティブユーザー)で言うと700万を超えることもあるので、概ね順調に伸びているという感触です。

(c)AbemaTV

――現在、チャンネル数は、どれぐらいあるのですか?

谷口:約20ありますが、特番が複数同時に放送される際は20チャンネルを超える時もあります。オリジナルのレギュラー番組をはじめ、アニメやスポーツなど調達した番組をベースに、定期的に大きな話題になるような特番を放送し、それをきっかけに今まで観ていなかった層が、幅広く流入してもらえるようにしています。その後、レギュラー番組や調達してきた番組のチャンネルのファンになってもらい視聴習慣をつくる。特番で一度ユーザーが多く集まったあとに、日々のレギュラー番組のヒットで成長していくというユーザー獲得のフローになっていて、それがだいぶ、ワークしていきているという感覚はありますね。

――2年経って、一般の人々にも、ある程度存在が認知されてきたというか、その本気度みたいなものは、かなり伝わってきたのでは?

谷口:社長の藤田(晋)自身も、「10年腰を据えてやる」とか、競合が引くぐらいの赤字の数字をあえて言ったりとかしているので(笑)。その覚悟や熱量みたいなものは、番組に関わっているクリエイターや出演者のみなさん、そしてそれを観てくださるユーザーの方々に、伝わってきているのかなという手応えはありますね。

――あと、一本一本の番組のクオリティの高さについても。

谷口:そうですね。ただ、AbemaTVの視聴習慣が根付いていないなかで、“実際観てみたら面白い”ということでは通用しない。その意味で、テレビのような形では、まだ成立してないと思っています。「いつでもどこでも、AbemaTVを開いて視聴する」状態には今はまだなっていないので、そのための工夫や知ってもらうきっかけがとても重要です。

 ただ、今言っていただいたように、番組のクオリティという面では、実際に番組を企画して作っているのがテレビ朝日から出向している若手プロデューサーだったりするので、もともとテレビが作ってきた高いクオリティの番組が制作できていると思っています。ただ、番組のターゲットや放送するプラットフォームが違うので、その作り方や意識する点ががちょっと違うという感じですね。

“わざわざ観にこなくてはいけない”番組を

――ターゲットという話が出ましたが、全体の編成の方針としては、どのようなことを考えているのでしょう?

谷口:オリジナル番組も調達する番組も、10代〜30代ぐらいの若者層にターゲットを絞って考えています。

――俗に「テレビ離れ」と言われている層ですね。

谷口:なので、そういった若者層が、いつどんなふうに観ているのか……もちろん、人によってマチマチだとは思いますが、そのなかでも彼らの生活のコアタイムを意識した編成というのが、まずベースの考え方にあります。またAbemaTVは、「リニア放送」と「ビデオ」という2つの視聴方法を提供していますが、リニアの編成に関しては、土日、休日など、ユーザーが多く流入してくれるようなタイミングを狙って、特番や目玉のレギュラー番組を放送します。

 また、編成する番組の並びなど縦の流れを当然意識つつも、横の流れ――テレビ局の場合は、1チャンネルごとの競争ですが、僕らは20チャンネル全部を自分たちで編成しているので、チャンネルからチャンネルへの流れも含めた戦略を考えています。たとえば、麻雀チャンネルから格闘技チャンネルへ、といった具合に、横のチャンネル編成も重要です。

――そこは、従来のテレビ局と、まったく違う発想になるわけですね。

谷口:そうですね。また、AbemaTVの視聴を習慣化してもらいたいので、継続性を意識した編成――たとえば3週間連続で観にきていただけるような番組作りなども、基本的な編成方針として考えています。

――リニア配信でやっているだけに、いつでも観られる番組だけではなく、その瞬間に観て盛り上がることのできる番組も、意識していたりするのでしょうか?

谷口:そこは意識しています。今、その場で共有したい、目撃しなければいけないものという点は、番組を作るうえですごく意識していることです。もともとAbemaTVを立ち上げた際、音楽や映像というリッチコンテンツは、自分の観たいタイミングで観たり、検索して観たりすることに、ちょっと疲れているんじゃないかという仮説もあったので。

――確かに、そういう面はあるかもしれないですね。

谷口:であれば、信頼のおけるメディアにレコメンドしてもらって、いつでも安心して、上質なコンテンツに触れられる“受け身視聴”の形が、最終的には心地よくなるかもしれないという。そこで、これまでありそうでなかった20チャンネルを24時間無料放送するというサービスを作ったところもあります。とはいえ、自分の好きなタイミングでずっと観続けるような、動画の視聴文化のある若者たちに向けての挑戦ではあるので、最初のチャンネルはニュースであり、オリジナル番組も生放送中心でラインナップして、“今”流れているものを観る感覚に、慣れてもらいたいという狙いも込めて編成しています。それに関しては、だいぶ浸透してきたかなという感覚はありますね。また、開局当初から構想にあった見逃した番組を視聴できる「Abemaビデオ」も、今後さらに強化していきたいと考えています。

――番組の企画については、毎週の会議で企画を出し合いながら決めていると聞きました。

谷口:そうですね。藤田がAbemaTVの総合プロデューサーとして、オリジナル番組の企画や、調達して編成していくような他のチャンネルの番組もしっかり見ています。オリジナル番組に関しては「トンガリスト会議」という企画会議を毎週して、プロデューサーたちと直接議論する場を設けています。そこで企画が決まるので、決裁スピードはとても速いと思いますね。

――その企画にGOを出す出さないの判断基準は、どこにあるのでしょう?

谷口:共通してあるとしたら、さっき言ったように、“わざわざ観にこなくてはいけないもの”――僕らは「トンガっている」という表現をしているのですが、そういう企画になっているかどうかという基準はあると思います。それは、ただ「過激なこと」という意味ではなく、わざわざAbemaTVに観にくる理由、どうしても観たくなる理由が、その企画のなかに内在しているかどうかであって。そこは、すごく意識しているところですね。また、調達してくる番組に関しては、ちゃんと「芯を食っている」かどうかも大事にしています。つまり、その業界の真っ芯を捉えているかどうか。麻雀、将棋、相撲、アニメなど、その界隈の業界の人たちや、ファンの方々など特定の層に強い支持を得られるような編成、ちゃんと真っ芯を的確におさえているラインナップをそろえていくようにしています。

――なるほど。

谷口:また、若者向けのメディアなので、全世代が観ても大丈夫なように、現象をわかりやすく薄めたり丸めたりせず、若者のなかで起きている流行や潮流、あるいはネットで起きている現象を、きちんと捉えているかどうかも番組ごとに考えています。

――地上波の場合、幅広い年代を意識して、ある種、緩いものになってしまうことも多いですよね。

谷口:そこがダメだというふうには思っていませんが、ただおっしゃる通り、ドラマでもバラエティでも、どのジャンルの番組を作るにしても、ターゲットに向けて、「こんなのが好きだろう」のような形でなんとなく放ることをせず、きちんと捉えることは意識しています。

――AbemaTVの存在意義を世の中に知らしめたという意味では、やはり昨年11月に放送された『72時間ホンネテレビ』が重要だったと思います。出演者的にも尺的にも、あの番組は、ちょっと地上波では無理ですよね。

(c)AbemaTV

谷口:確かに、72時間生放送をいきなりやることや、あのタイミングで彼らを起用するという意味では、そうかもしれないですね。SNSを絡めながら、日本国中が一緒に体験を共有できたり、参加できるような番組の作りになっていて。それができたというのは、AbemaTVならではだったかなと思っています。

      

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