中谷美紀、現代女性の代弁者に 『あなたには帰る家がある』主演で見せる“共感力”

中谷美紀、初の“共感できる”役

 中谷美紀の主婦役の演技に、共感の声が上がっている。作家・山本文緒の同名小説を連続ドラマ化した『あなたには帰る家がある』(TBS系)。モラハラ夫の茄子田太郎を演じるユースケ・サンタマリアの怪演、“したたか妻”茄子田綾子を演じる木村多江の魔性ぶり、小心者で器の小ささをコミカルに演じている佐藤秀明役の玉木宏と、出演者たちの高い演技力が光る本作だが、その中心にいるのは主人公・佐藤真弓を演じる中谷美紀だ。

 1993年の『ひとつ屋根の下』(フジテレビ系)でのデビュー以来、中谷美紀の活躍を追ってきた古参ライターの麦倉正樹氏は、本作での魅力を次のように語る。

「中学生の娘がいて、夫に浮気されてしまう専業主婦(のちに職場復帰する)という本作で演じる真弓の設定を聞いたときは意外な気がしました。しかも、娘のために浮気をした夫を突き放すのではなく許すという。落ち着いているようで、意外と短気で細かいアラフォー女性という意味では、『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』(TBS系)で演じた橘みやびに近い印象がありますが、決定的に違うのは“守るべき存在”がいるという点です。

 代表作である映画『嫌われ松子の一生』や、『自虐の詩』など、容姿端麗な中谷さんが不幸のどん底に堕ちていく、そんなギャップの面白さを見せた作品もあれば、映画『電車男』のエルメスやドラマ『JIN-仁』(TBS系)の野風など、“高嶺の花”として、視聴者が憧れを抱く役柄はこれまでもありました。でも、身近な存在として視聴者が共感を抱くような役柄はなかったように思います。

 その点、本作は夫の浮気に悩んだり、仕事に復帰したら年下の社員からお荷物扱いされてしまったり、弱さ、脆さ、情けなさを見せる等身大の女性を体現しています。相対する木村多江さん演じる綾子が絶対に共感を得られない魔性の女性なだけに、思わず視聴者は真弓の気持ちになって応援しながら観てしまうのでは。本作でこれだけの“共感力”を見せてくれているだけに、これまで以上に役柄の幅が増えそうですね」

 また、中谷美紀が持つフラットな女優イメージが、現代女性の共感を呼んでいると、佐藤結衣氏は考察する。

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