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車があれば何でもできる! 『ワイルド・スピード ICE BREAK』は映画というより“プロレス”だ

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 現在シリーズ8作目『ワイルド・スピード ICE BREAK』が公開中のワイスピ・シリーズだが、これほど奇妙な映画シリーズもそうそうない。何故なら回を重ねるごとにジャンルが変わっていったからだ。1作目はアクション映画であると同時に、青春映画の香りが漂っていたが、これが2作目になるとストレートなバディ・アクションに、3と4でややハードなアクションになったかと思えば、5でチーム・アクションものになって、6・7は『007』のごとく世界中を飛び回り、政府の秘密組織まで絡んでくるスペクタクル・アクションになった。これほど映画ごとに雰囲気が変わり、しかも規模が大きくなっていくシリーズも珍しい。

 唯一ブレていないのは登場人物が車に乗って活躍する点だが、逆に言えば車さえ使えば、あとはもう何をやってもいい――それがワイスピ・シリーズである。最新作『ICE BREAK』でも、またしても映画の方向性が大きく変わった。爆破は過去最大規模であるし、潜水艦とのカーチェイスやNY中の車が暴走するなどの滅茶苦茶なディザスター、さらには何食わぬ顔で『GODZILLA ゴジラ』で見たようなシーンまで出てくる。ほとんど災害映画である。私はそんな荒唐無稽なシーンの数々を大いに楽しんだ。

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 しかし、そういった大規模なシーン以上に、主人公が誰なのか、ますますよく分からなくなってきた点に注目したい。一応ヴィン・ディーゼルが主役なのだが、今回の彼は諸々の事情があって仲間を裏切り悪役へ。それを追いかけるのがロック様ことドウェイン・ジョンソンと、前作『SKY MISSION』で悪役だったジェイソン・ステイサムだ。冷静に考えてみてほしい。ロック様とステイサム、それぞれ主役が張れる人たちである。いかにディーゼルと言っても、この二人を悪役として敵に回せば、主人公感が薄れてしまうのは当然だ。さらにキャラクター単位で物語が用意されており、ディーゼル、ロック様、ステイサムのドラマに、シリーズを通してのヒロインであるミシェル・ロドリゲス……と、幾つもの話が同時並行で進む。名目上の主人公はディーゼルだが、誰が主役だったかは見た人によって変わるだろう。

 またキャラクターの性格の変化も著しい。冷酷非情だったはずのロック様やステイサムはドンドン・フレンドリーになり、もはや別人と言ってもいい。これは全員に花を持たせるオールスター映画の側面が濃くなったからだが……筆者はオールスター化というより、プロレス化という表現の方が適切に思う。言ってしまえば、ワイスピはひとつのプロレス団体であり、これは『ICE BREAK』という興行なのだ。

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 映画と言うよりプロレス、そう考えると色々しっくりくる。プロレスには善玉・悪役が変化するベビーターン/ヒールターンという概念があり、ステイサムは今回ベビーターンを、ディーゼルはヒールターンをしたのだ。プロレスでは当初のキャラクター性が色々あって変わっていくことが多々あるもの。またプロレスにはもうひとつの楽しみとして、リング外の出来事を楽しむという面もある。リングの中とリングの外の現実が曖昧になっていく感覚……これもまたプロレスの醍醐味だ。本作で言うなら、ロック様とディーゼルの不仲を伝える報道や、前々から「ワイスピに出たい!」とラブ・コールを送っていた英国女優ヘレン・ミレンが本当に出てしまうなどがそれに当たる。ヘレン・ミレンについては、誰もが思い描くヘレン・ミレンのイメージのまま出てきた点にも注目したい。映画のために役者がいると言うより、役者を活かすために映画があるというスタンスである。

      

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