満島ひかり、名演技の秘訣は“目の使い方”にアリ 気鋭の演出家が分析

満島ひかり、卓越した演技力の「秘訣」

 女優・満島ひかりの卓越した演技力に、改めて高い注目が集まっている。現在放送中のドラマ『カルテット』(TBS/毎週火曜よる10時~)では、マイペースでのんびりした性格のチェリスト・世吹すずめ役を好演。ユニークな台詞回しや心の機微を伝える繊細な演技、飾らないラフなヘアスタイルで、視聴者から高い支持を得ている。2月18日より全国公開されている映画『愚行録』では、育児放棄をして逮捕された母・田中光子を演じ、圧巻の“独白”シーンが話題となっている。また、女優としての評価を確立した園子温監督の映画『愛のむきだし』が、ドラマ化してJ:COMで配信開始されたこともあり、過去作にも再び脚光が当たっている。

 いま最も支持されている女優のひとりといえる満島ひかり。その演技は、具体的にどんなところが優れているのか。テレビドラマや舞台を手がける演出家・脚本家の登米裕一氏に聞いた。

「満島さんの演技で最も特徴的なのは、“目の使い方”と“笑顔”です。人間は社会を営むうえで、表情によるコミュニケーション能力を発達させてきました。ほかの動物と比べて白目が露出しているのと、笑顔を浮かべるのは、人間の特質といえます。満島さんは、相手と話したいのか、それともためらっているのかといった心理的な情報を、何を見て何を見ないかなど、瞳の動きで表現するのがとても上手です。目を泳がせたり、目が合ったと思ったら瞬きして逸らしたり、まさに“目は口ほどに物を言う”を体現しています。白目の部分が、その人の意思の余白にあたるとすると、その余白の使い方がうまいというか。
 また、笑顔の種類がバリエーションに富んでいるのも特徴です。苦笑、冷笑、嘲笑、微笑、鼻で笑ったり、口だけ笑って目が笑っていなかったり。笑っているフリから、泣き笑いまで、笑顔だけでこれほど種類があるのかと驚くほどです。表情筋の使い方が上手で、ただ笑うだけではなく、そこに陰りを入れられる。結果として、目の前の状況をポジティブに捉えようとしながら、それができないという、人物の葛藤を表現することができる。愛したいけれど、愛せないといったドラマチックな状況において、彼女の演技は絶大な説得力を生みます。
 満島さんの演技につい惹きつけられてしまうのは、それが極めて人間的なコミュニケーションに則ったやり方で、まさに“役を生きている”からだといえるのではないでしょうか」

 満島の表情による演技は、相手役とのラリーのようなやり取りにおいて、特に効果的だという。一方で満島は、『愚行録』における長台詞など、独演シーンにおいても見事な芝居を披露している。その秘訣は、役作りのアプローチに依るところが大きいと、登米氏は見ている。

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