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異色の医療ドラマ『フラジャイル』最終回へーー「100%の診断を下す」医師はどんな物語を紡ぐ?

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 TOKIOの長瀬智也が2年ぶりに主演を務めたドラマ『フラジャイル』がいよいよ最終回を迎える。今期をもって廃枠となることが決まったフジテレビ水曜22時枠の最後を飾るこのドラマは、これまでの日本の医療ドラマとはかなり異なるテイストの作風が見どころであった。

 前クールに同枠で放送されていた西島秀俊主演の『無痛〜診える眼〜』は、同じ医療ドラマでも患者を見ただけで診断を下すという、特殊な能力を持つ医者が描かれていた。それに対し、『フラジャイル』は患者の病変部を採取し、それを顕微鏡で観察した上で病変を解析し、診察を下すのである。もちろん、現実的なのは後者の方であるが、これまで日本のドラマ界で重宝されてきた類の医療ドラマと比較すると、視覚的な派手さは無い。たとえば救命医療の現場を臨場感たっぷりに描くようなドラマと比べると正反対の世界であって、現に第2話で救命医療医とやり合うなど、それをあえて意識した部分さえも感じられる。

 それでも、このドラマの特筆すべき点は、多くのシーンが病理診断部の部屋で進行し、医療知識がないと掴みづらいような単語が飛び交う場面と、これまでの医療ドラマにおなじみである患者や医師など周囲の人間のドラマが絶妙なバランスで交錯していることである。番組ホームページには各回で登場した病変についての解説が掲載されており、後々補完することは可能なのだが、実際に放送を見ている最中では、登場する病変について理解することはとても難しい。それでも抵抗なく観ることができるのは、それ相応の知識を持たなくても楽しめるだけの物語性が備わっているということに他ならない。

 中でも興味深かったのは第3話である。大腸の内視鏡検査を受けた女性に対し、消化器内科のドクター・中西(中村俊介)は「クローン病(炎症性の腸疾患)」の疑いがあると判断する。しかし、長瀬演じる岸京一郎は診断を確定させることができないと言う。再検査を試みるもまだ確定できない。そこで岸は全身検査を要求。予想外の部位の病変のある可能性を潰したい岸と、無駄な検査になりかねないと拒否する中西がぶつかり合う。断固として自分が考える「クローン病」の線を曲げようとしない中西が、病理の診断を待たずして患者に診断を告げ、入院させて治療を進めた矢先、患者の容態が急変。その状態を聞いた岸は患者が「クローン病」ではなく「結核」であることに気が付くのである。

 診断が確定しないことに不安を抱く患者のためと、絶対に自分の判断を曲げたく無い医者のプライドが重なることで誤診が起き、岸は「そんなんじゃそのうち、人殺すよ」と中西に言うのだ。そのあまりにも直接的な言葉の重みに愕然とする中西に対して、追い討ちをかけるように決め台詞である「君が医者でいる限り、僕の言葉は絶対だ」と、視聴者は今ちょうど正解を見たばかりであるがゆえに、その言葉に大きな説得力を感じるに違いない。さらに患者の処置を終えた武井咲演じる宮崎智尋に対し、「100%の診断をする、それだけだ」という持論を提示することで、岸は我々の範疇を超える知識を持ち、信頼の置けるヒーローであると認識させる。差し詰め宮崎は、岸とともに行動することによって医療の知識を増やしていき、かつ患者の物語に寄り添おうとする視聴者そのものなのである。

     
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