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ショー的要素に欠けていた? 「白人偏重」に揺れた第88回アカデミー賞授賞式を考える

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アカデミー賞
マッドマックス 怒りのデス・ロード
レオナルド・ディカプリオ
レヴェナント:蘇えりし者
松崎健夫
洋画
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 激戦の作品賞を制した『スポットライト 世紀のスクープ』、レオナルド・ディカプリオが『レヴェナント:蘇えりし者』で初の主演男優賞を受賞、『クリード チャンプを継ぐ者』で40年ぶりのノミネートとなったシルヴェスター・スタローンが涙を飲み、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は最多6部門を受賞して技術部門が評価された、など断片的なトピックスとして報じられている第88回アカデミー賞授賞式。

 1929年に行われた第1回の授賞式は、招待状が発送された時点で既に受賞者が決定していたため授賞式自体は4分半ほどで終わり、基本的にはホテルでの晩餐会形式だったと言われている。ところが第二次世界大戦中に晩餐会形式は不適切だとされたことから、第16回から会場を劇場へと移し、ショー形式へと移行したという経緯がある。

 そのためアカデミー賞授賞式といえば“華やかなショー”というイメージがあるのだが、今回の授賞式には、そのショー的要素が少し欠けていたという印象があった。例えば、歴代の受賞作や前年の話題作を題材にした大掛かりな歌やダンスといった類いのショーに今回は派手さが無かったし、話題の映画に対するパロディも例年に比べると精彩を欠いていた。その主たる理由は、ノミネーション発表の折から話題となっていた、アカデミー賞候補者の「白人偏重」に対する抗議が、授賞式自体にも大きな影響を与えていた点にあるようだった。

 司会のクリス・ロックは授賞式の冒頭、およそ10分間に渡って「白人偏重」に対するブラックジョークを連発し、会場の笑いを誘った。このスピーチを黒人であるクリス・ロックが引き受けたことで、「白人偏重」に対するエクスキューズが式典の頭で済まされたように思えたのだが、その後も授賞式は「白人偏重」に対するネタのオンパレードで、話題の映画に対するパロディも「白人偏重」ネタばかり。わだかまりが解けないまま閉幕した状態は、後味の悪さを感じずにいられなかった。

 クリス・ロックがどのようなブラックジョークを展開したのか? はたまた、どのようなボイコット運動があったのか? については、多くのサイトで検証が成されているので参照頂ければと思うのだが、一例を挙げると「黒人の候補者が欲しければ、黒人のカテゴリーを作るしかない」或いは「男女は別のカテゴリーだけど、演技の賞に男女の区別は必要ないでしょう? 陸上競技じゃあるまいし」とクリス・ロックが皮肉を込めた点に、実は本来議論すべき問題が隠されているのではないかと思うのである。

 近年、アカデミー賞は「これまで評価してこなかった映画人を評価しよう」という類いの流れがあった。例えばそれは、過去2年の授賞式を振り返ってみるだけでよくわかる。2年前の第86回で作品賞に輝いたのは、黒人奴隷の自由を描いた『それでも夜が明ける』(13)だった。この年の授賞式では、黒人として初めてアカデミー主演男優賞を受賞したシドニー・ポワチエなど、歴代の黒人受賞者や黒人の映画人をプレゼンターに配するなどの配慮が成されていた。作品賞のプレゼンターを務めたのはウィル・スミスで、これは「黒人俳優から黒人を描いた映画に手渡したい」という映画芸術科学アカデミー側の“意図”が反映されたものだった。

 ならば「アカデミー賞は八百長なのか?」と言えばそうではない。今回の授賞式が「白人偏重」を配慮したものが“意図”となったように、授賞式には毎年ある種の“流れ”を演出している。実はこの前年の第85回、当初作品賞の最有力と言われていた作品が、スティーヴン・スピルバーグ監督の『リンカーン』(12)だったことを記憶している方も少なくないだろう。結果、作品賞は『アルゴ』(12)に譲ったのだが、このとき作品賞の発表はホワイトハウスから中継され、プレゼンターはミシェル・オバマ大統領夫人だった。つまり“意図”としては、「奴隷解放を行ったリンカーン大統領を描いた作品を黒人大統領在任のホワイトハウスから讃える」というものだったのだ。ところが、『アルゴ』でベン・アフレックが監督賞候補に漏れたことから同情票が集まり、形成が逆転したため“意図”が外れてしまったという訳なのである。

 ただ、このことから言えるのは、クリス・ロックが「黒人が選ばれなかった年は過去に71回はあったはず」と発言したように、アカデミー賞では黒人の映画人を冷遇してきたという歴史があり、そのことをハリウッドの映画人たちが『それでも夜が明ける』によって改めて評価しようとしていたのではないか? ということ。アカデミー賞の投票は、映画ファンや評論家ではなく、監督・俳優・スタッフというハリウッド同業者である“身内”が行う点で、業界内の好き嫌いが大いに反映されるという特徴がある。それだけに、その年々のアカデミー賞授賞式には“意図”のようなものが見え隠れするのである。

     
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