『仮面ライダー』と『スーパー戦隊』、若手俳優 “登竜門”としての違いは?

 特撮の人気シリーズである『仮面ライダー』と『スーパー戦隊』に出演した役者たちが、子供たちだけでなく幅広い層から人気を集め、ドラマや映画などで活躍するケースが目立つ。ただし、出演した役者たちがブレイクしていく流れは、『仮面ライダー』と『スーパー戦隊』では少し異なっている。

 2000年代以降、『仮面ライダー』出身の俳優たちは快進撃を続けている。『仮面ライダークウガ』のオダギリジョーに始まり、賀集利樹、要潤、半田健人、細川茂樹、水嶋ヒロ、佐藤健、瀬戸康史、菅田将暉、福士蒼汰など、ライダー経験者にはそうそうたる顔ぶれが並ぶ。さらに、ライダーではなく怪人役でデビューを飾ってブレイクした綾野剛などもいる。

 ライダー経験者がその後、役者としてブレイクする要因のひとつに、『仮面ライダー』シリーズのドラマが持つ奥深さが挙げられるだろう。『仮面ライダー』はもともと、漫画家・石ノ森章太郎氏が“改造人間”をモチーフに、善と悪の狭間で悩む孤独な戦士の戦いを描いた硬派な物語だった。2000年代最初の作品である『クウガ』では、ポリティカル・コレクトネス的な配慮から改造人間という設定はなくなったものの、物語の整合性を重視し、それまでアフレコで入れていたセリフ音声を同録形式に切り替えるなどしてイメージを一新、昭和時代よりもさらにリアルなドラマ性が追求された。その結果、『クウガ』は子供だけでなく、子どもと一緒に観る大人たちの鑑賞にも耐えうるクオリティを獲得した。その後のシリーズでも、主人公が戦いに苦悩したり、複数のライダーが共闘して友情を育んだり、大切な人との離別に悲しんだりと、ドラマ性にこだわったストーリーが確立されていき、演じる役者たちの力量も磨かれていったのだろう。

 一方の『スーパー戦隊』シリーズでは、『超力戦隊オーレンジャー』のブルー役でデビューし、後に時代劇『水戸黄門』の格さん役を長くつとめた合田雅吏、特撮イケメン俳優ブームを起こした『未来戦隊タイムレンジャー』の永井大、『百獣戦隊ガオレンジャー』の金子昇や玉山鉄二ら、さらに『忍風戦隊ハリケンジャー』出演後、映画『パッチギ!』で主役をつとめた塩谷瞬、『侍戦隊シンケンジャー』のレッド役でデビューし、目下映画にドラマに引っ張りだこの松坂桃季などが出世株として挙げられるだろう。また、『電脳戦隊メガレンジャー』でブルーを演じた後、様々なアニメで重要な役の声優を務めている松風雅也や、アニメ『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』で主人公の声を務めた『侍戦隊シンケンジャー』出身の相葉裕樹などのように、ドラマだけでなく声優業にも活躍の場を広げた者もいる。

 『スーパー戦隊』出身というと、もう一つ忘れてはならないのが、女戦士を演じた女優たちである。こちらの出世株はなんといっても『超力戦隊オーレンジャー』でピンクを演じたさとう珠緒。その他に、『忍風戦隊ハリケンジャー』の長澤奈央、『爆竜戦隊アバレンジャー』のいとうあいこなどが人気を集めた。また、『ハリケンジャー』の山本梓、『魔法戦隊マジレンジャー』のホラン千秋など、悪役を演じて知名度を上げた例もある。さらに、『侍戦隊シンケンジャー』でピンク役を演じた高梨臨は、その後、NHK連続テレビ小説『花子とアン』に出演するなど、注目株の女優の一人として活躍している。

 『スーパー戦隊』シリーズ出身の俳優は、映画やドラマはもちろん、時代劇、声優、タレント、グラビアなど、出演後の進路が男女ともに比較的バラエティに富んでいるのが特徴だ。チームで悪の組織に立ち向かうというのが基本スタイルゆえに、悩める戦士がドラマに深みを加える、明るいムードメーカーが視聴者を笑わせる、体育会系戦士が派手なアクションで魅せる、女戦士も2人体制で活発なタイプと清楚なタイプに分かれる……といったように、それぞれがはっきり違う役どころを務めることが多い。そのため、演技力が評価され本格的な役者の道へ進んだり、親しみやすさで人気が出てバラエティに進出したり、アクションのうまさを買われて時代劇やスポーツ系番組に出たり、可憐さやセクシーさで注目されてグラビアの仕事が増えたりと、その後の活躍のフィールドが異なっていくのは、当然といえば当然なのかもしれない。

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