s**t kingzが考える、J-POPシーンにおける振付の“重要性”

s**t kingzが考える振付の“重要性”

「日本は今、ダンスボーカルグループの国なんです」

――s**tkingzは元々kazukiさんが「何か新しいことしたい」と集めた4人だとか。

kazuki:そうです。当時(2007年)みんな20歳前後で、大きいチームを2つくらい経験してコンテストでバンバン名前を売ってたんですけど、それがちょっと窮屈になってきて。シンプルにショーを楽しむために組んだんですよね。ここまで続けていく大げさな気持ちはまったくなく、期間限定のユニット的な感覚でした。

――以前TRFのSAMさんを取材したときに「日本ではストリートダンサーの地位が低い」という見解を聞いたのですが、皆さんはワークショップやライブで20カ国以上を回っていて海外と日本のストリートダンサーで何か違いを感じますか?

shoji:最近は昔に比べると少しずつ、日本でダンスそのものが一般的なものになって認知されてきてるとは思います。ただロシアに行ったとき知ったんですけど、ロシアはある程度のレベルまで行くと、国から芸術家として補助を受けられるんです。バレエダンサーとかと同じような地位がストリートダンサーにも確保される。そういう意味では、ダンスというジャンルひと括りでちゃんと考えてもらえてるんだなと思いましたし、そういう文化制度が日本にもあればいいのになと思いました。

Oguri:国でサポートするという取り組みは、ヨーロッパを中心に増えている気がしますね。フランスやオランダのストリートダンス業界では、イベントをやるとき国からお金を出してもらって運営するケースもあるみたいです。日本はまだ少ない気がするんですけど。

kazuki:「振付をやれば(ダンサーとして)食っていけますよね」って下の世代から聞かれることがあるけど、全体の割合からしたらホントに一部だと思うので、成功して稼いでる人がいたとしても「ダンサーは稼げます」とは言えない。

shoji:日本は今、AKB48グループ然りLDHのグループ然り、ダンスボーカルグループの国なんですよ。それに対して海外はソロで歌って踊る人気アーティストがいっぱいいます。例えばクリス・ブラウン、ブルーノ・マーズ、アッシャー、マドンナ、ケイティ・ペリーと、世代問わず。

kazuki:考えてみたらソロだらけだね。

shoji:で、そのアーティストのMVとかライブにはいろんなダンサーが出てるんです。ビヨンセのバックには20人とか30人のダンサーがいたりしますよね。今の日本のヒットチャートを見るとほとんどグループで、踊ってるのはグループのメンバーなので、バックダンサーとしての仕事はあまり多くないんですよ。となるとJ-POPに関わる仕事って振付しかない。

kazuki:あとはもう芸能人になるしかないよね。

shoji:でもタレントになると自分たちのやりたいダンスとは少し違うものを求められてくることもあると思うので、自分たちが好きなダンスをしつつ音楽業界でも活動したいとなると、やっぱり振付の仕事をしながら自分が一緒にいて楽しいメンバーと踊るっていう形になるんですよね。なので僕らは、今一番ありがたい形でダンスができていると思います(笑)。

「もっととんでもないことをシッキンの夢に」

――シッキンは2015年に『a-nation』に出演したり、2016年にヤマザキマリさん脚本による単独公演を行ったり、ダンスチームの可能性を広げたパイオニア的存在でもあると思います。ソニーのMOTION SONIC PROJECT(http://motionsonic.sony/ja/)やそれに伴うSXSW出演も面白い試みでした。個人で活動することもできるのにグループ活動をこんなに精力的にやっている意義ってなんですか?

shoji:逆に、4人だから面白がってもらえた部分は大きいんじゃないかなと思っていて。s**tkingzで舞台をやると発表すると「あの4人どんなことするんだろう?」とワクワクしてくれる人たちが、毎回自分たちの想像以上にたくさんいるんです。MOTION SONIC PROJECTも、メンバーの誰か1人にお願いされることも可能性としてはあったはずだけど、シッキン4者4様の見せ方が1つになれば面白いものができるんじゃないか、と期待してもらえたから話が来たと思うんです。

Sony | s**t kingz LIVE in SXSW 2017

NOPPO:長い間この4人で活動してきてるんで、“シッキンみたいな振付”は正直1人でもできる。でも4人でいると個々の得意とする分野が引き立って1人ひとりがより輝けるというか、共鳴できるんですよね。

――チームとしては今後どうなっていきたいですか?

kazuki:「夢はこれです」って今はパッと言い切れないんです。夢以上のことがどんどん舞い込んできてて。SXSWに行けたのもすごいことだし、そんなこと予想もしてなかったから。今までそういうことの連続で、いろんな人の力でシッキンを有名にしてもらったと思ってるので、そろそろ自分たち発信で何か大きな目標を見つけられたらいいなっていう状態です。“個人でできること”と“シッキンでできること”以外にも、“シッキンでしかできないこと”を見つけていきたいですね。

shoji:例えば「ブロードウェイで4人でパフォーマンスしたい」「4人でミュージカル映画を作りたい」「国内でやってるワンマン公演を世界中でやりたい」ということは思ってるんですけど、実はもっともっとすごいことが、4人で力を合わせればできるかもしれない、という気がしているんです。

kazuki:ブロードウェイなんて昔は遠い話だったけど、今はそれと同じくらいでかい話が近付いてる感覚なんですよね。目標達成して終わりってのはさみしいから、もっととんでもないことを夢として持ちたい。「全員で大統領」みたいな。

shoji:「東京スカイツリーを所有する」とか「月に専用劇場を作る」とか(笑)。そのぐらい夢物語みたいなことがいいと思う。

Oguri:今までダンサーがやったことないことをやっていきたいし、常に新しいことをしてないと飽きちゃう体質だから。

NOPPO:下(の世代)も目標にしてくれたらうれしいです。「s**tkingzみたいにいろんなことをできるダンサーになりたい」と思ってもらえたら。

――広い目を持っているからか、取材中、皆さんずっと表情が明るかったですね。

一同:あはは!(笑)

shoji:もし音楽業界や舞台業界が萎んだとしても、きっと違うところで何かやっていく4人だと思うし、だからこの4人でずっと続けてるのかもしれないですね。

(取材・文=鳴田麻未)

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