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伊藤賢治&古代祐三&山岡晃、ゲーム音楽の巨匠3人が明かす『パズドラクロス』サントラ制作秘話

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 『「パズドラクロス 神の章/龍の章」オリジナル・サウンドトラック』が2017年2月8日にリリースされた。同作の作家陣には、『サガ』『聖剣伝説』といった人気シリーズの楽曲を手がける伊藤賢治氏、『湾岸ミッドナイト MAXIMUM TUNE』、『世界樹の迷宮』 、『セブンスドラゴン』の楽曲を代表作とする古代祐三氏、『サイレントヒル』、『シャドウズ・オブ・ザ・ダムド』などのサウンドデザインを世に送り出してきた山岡晃氏といった豪華面子が参加していることでも話題となっている。リアルサウンドでは今回3人に、サウンドディレクターを務める尾崎景吾氏を加えてインタビューを行ない、サウンドを制作する上で心がけたことや、ゲーム音楽を手がけるうえで信条としているものや、各人がほかのクリエイターに対する思いなどについて、じっくりと語ってもらった。(編集部)

「実は知らないところでお互い研究していた」(古代)

ーーまずは、サウンドディレクターの尾崎さんから、この豪華メンバーに作曲を依頼した経緯を教えてください。

尾崎景吾(以下、尾崎):僕は前作の『パズドラZ』から携わらせていただいているのですが、今回からサウンドディレクターになりました。みなさんとはお仕事で直接関わるのは初めてだったのですが、最終的には良い形にまとめられたかなと思います。まず、シリーズの流れからイトケン(伊藤)さんにお願いするのは確定していたのですが、プロデューサーの山本から「古代さんも是非起用したい」と提案があり、お二人で進めることになったんです。でも後日、山本から「山岡さんにも声かけたらOKって言ってくれたから!」と言われて、実際に一緒にやっていただけることになりました。そこから改めて楽曲の振り直しをして、満遍なくみなさんにお願いしました。バトルはちょっとだけイトケンさんが多いんですけど……。

伊藤賢治(以下、伊藤):ちょっとどころじゃないでしょ(笑)!(伊藤はバトル曲の約半分を担当)

尾崎:多かったですね(笑)。で、フィールド音楽は古代さんにお願いしました。『イース』とか『世界樹の迷宮』をプレイしていた身として、古代さんの作るダンジョンやフィールドの世界観がすごく好きでしたので。そして、山岡さんとはもともと社内の別イベントでやり取りさせていただいた経験や、ドラマ『東京トイボックス』(テレビ東京系)の音楽を手がけている事も知っていたので、キャラクターのテーマなど、ドラマ性のある場面で使う曲を担当していただこうと思ったんです。

ーーちなみに、それぞれはお互いをどういうクリエイターとして認識していたのでしょうか。

山岡晃(以下、山岡):イトケンに関しては、「この人のメロディはなんだろう」と思わされるんですよね。一緒に曲を作ったりもしたけど、「音符ってこう来たらこう行く」みたいな理論だったり予測できる展開があるはずなのに、彼の曲は絶対そうはいかないんですよ。それがイトケン節だし、彼の個性になっているんでしょうね。古代さんは、僕がもともとパソコンゲーマーだったので、それを通じて存在を知ったんですよ。彼は長い経験とノウハウをたくさん持っている方で、それを活かした幅広さを武器にしたクリエイターだと思います。

古代祐三(以下、古代):僕もゲーマーなので、それぞれ『サイレントヒル』(山岡)と『ロマンシング サ・ガ』(伊藤)という印象ですね。イトケンさんに関しては、某ゲームの音楽を作る際に、サンプルとして彼の楽曲の名前を出されて、研究したことがあったんですよ。山岡さんは『DTMマガジン』の連載(「BAR フューチャリスト」「バッティングセンターたかしのピッチングコーチ」)が印象に残っていて。あれをみて山岡さんが紹介するソフトを買ったりしていましたから。ちなみに私、アーケードゲーマーで、今でいうところのアンチコンシューマー派だったんです(笑)。なので『ファイナルファンタジー』もやっていなかったし、『ドラゴンクエスト』もNintendo DSで発売したタイトルで初めてプレイしました。RPGの仕事をするようになって、実際にRPGを体験してみたら、見事にハマったんですけどね。

20170405-pazdra4.jpg古代祐三

伊藤:まず古代さんは、当時僕が1990年ーーちょうどファミコンからスーパーファミコンに切り替わる時代にスクウェア(現スクウェア・エニックス)へ入社して、スクウェアが『ファイナルファンタジーⅣ』を作っていた時期に、研究資料として『アクトレイザー』をFF制作チームでプレイしたんです。で、このゲームをやったときにスタッフ全員が大ショックを受け、グラフィック・ゲーム性・音楽とその音質にみんなひっくり返っちゃって、開発末期に近い状況だったのに、「これは確実に負ける」と思い、このゲームに太刀打ちするものを作ろうと奮い立ったんです。ちなみに植松(伸夫)さんの髭はその時を境に伸ばし始めました(笑)。並行して、僕はその頃ゲームボーイの『聖剣伝説~ファイナルファンタジー外伝~』を制作していたのですが、プロデューサーから「お前ロールプレイングとかあまり知らないだろうから、先ずはこれをプレイして勉強しなさい」と与えされたのが『イース』だったんです。この2作で古代さんを知り、経歴やキャリアを研究させてもらいました。

古代:実は知らないところでお互い研究していたと(笑)。

伊藤:山岡さんは、どちらかというとプレイヤーというかギタリスト的なイメージが強いですね。ゲーム音楽に半身を置いているけど、もう半身はナイル・ロジャースと共演したりと、アーティストとして動いているそういう意味でも興味を持った方でした。代表作の『サイレントヒル』がホラーだというところと、身なりがロックなイメージだったので、今回の仕事をする少し前には「どういう思考をしているんだろう?」とアナライズしてみたんです。でも、シンフォニックだコミカルだと、色んなタイプに自分を変化させられる方で、逆に本質が見えなくなってきたんですよ(笑)。

ーー今回のサウンドトラックでは、単純に曲を割り振るだけではなく、3人共作曲「ラストバトル ~光と闇のシンフォニー」が入っていたりもしますが、これも当初の構想通りなのでしょうか。それも含め、進めていくうえで大幅に変化したポイントはありますか?

尾崎:キャラクターのテーマに関しては、僕がまず曲リストを作ってお渡しするのですが、山岡さんは担当楽曲に対してというよりは、ゲーム自体の世界観に合うであろう曲を20曲ほどバーッと用意してくださって、そのなかから「この曲はこのシーンに合うんじゃないか」と決めていったんです。そういう意味では当初の構想とかなり違いましたね。

20170405-pazdra5.jpg山岡晃

ーー山岡さんはなぜ、そのような作り方を?

山岡:ゲーマーとして遊んでいる人が楽しんでくれればいい、という大前提もありつつ、僕はゲーム内の音楽を発注通りに作って、その曲が何回もお互いの間を行き来するよりも、まずは自分の持ってる食材を出して「どうですか?」と訊くのが早いかなと思って。ゲームを作る時はなるべくそうするようにしています。だから「こういう音楽がやりたい」という概念はあまりないんですよ。

尾崎:逆に古代さんはイメージを汲み取っていただいて、それを大きくして返してくださるといったような感じでした。誤解を恐れず言うと、そういう意味では意外性的なものはあまりないのですが、イメージにバッチリ合うものでした。

古代:まさにそうだと思う。初めてお仕事する間柄でもあるので、そこはやはり外さないようにという意識はありました。忠実に精度の高いものを返そうと。

尾崎:イトケンさんは自分が学生時代からファンだったこともあり、想像通りという感じでした。『ロマサガ』でも『パズドラ』でも、イトケンさんの書いた曲ははっきりわかる。でも上がってくるのはパズドラの世界観に合ってくるものでしたね。

20170405-pazdra6.jpg伊藤賢治

「イトケンさんは、どの曲でもかならずデモ音源をピアノで作る」(尾崎)

ーーイトケンさんに関しては、ファンからも「イトケン節」と評されるメロディが特徴的ですが、その核になっている手法や考え方はあるのでしょうか。

伊藤:核というよりはゲームの世界観をどこまで読み取れるかが勝負。キャラクターの絵や世界観を文字でいただいたとしても、なるべく消化をして自分の頭の中でアニメーションを作ったりするんです。そこまでしてからの音楽づくりなので、無意識のうちにカラーが出来上がっているのかもしれないですね。アレンジやサウンドデザインではそれぞれの作品が持つオリジナリティについて考えることが多いです。

尾崎:イトケンさんは、どの曲でもかならずデモ音源をピアノで作られるんです。あまり音楽をやっていない側の人間からすると「えっ、これってピアノだけじゃん!」と思うかもしれないですが、僕はそこにギターやベースが乗っかってくるのがわかっているので、「本番ではこの楽器がここかな」と思いながら聴いていました。

伊藤:おかげでピアノの腕が上がりました(笑)。今回古代さんにアレンジしていただいたのも、ピアノで作った音源を「好きなようにアレンジしてください」とお渡ししていたんです。

古代:非常にわかりやすかったですね。なので全く迷わずに、ピアノの音に入っているフレーズは1個足りとも逃さないように使いました。各旋律を各楽器に当てて、残さず嵌めたあとに少しだけ嫌味にならないように音を足したという感じです。曲のイメージを壊さないように、かつゲームの仕様に沿うようにフレーズを乗せていきました。そこに自分らしさを乗せるというのはあまり考えずに、ミッションに対して精度の高い解決方法を見つけるという感覚なんです。自分の原則として、アレンジする際にいただいた原曲のメロディは一切壊さない。その作り方自体が、私の個性なのかもしれないですね。

伊藤:改めて聴き返すと、古代さんが今回手がけた楽曲って、ジャズっぽいものが多いような気がするんです。1枚目の後半に入っている「深緑と木漏れ日の中で(木のフィールド)」はサックスから始まる曲で、「かなりエロいな」と思いました(笑)。

尾崎:これは社内でも「歌が始まるのかと思った」とかなり話題になりました(笑)。

      

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