欅坂46、田口 淳之介、女王蜂……“ボーダーレス”な表現力を備えたアーティストたち

 様々な分野のカルチャーにおいて“多様性”というワードが注目されて久しいが、ここにきて日本の音楽シーンにも、幅広いジャンルの要素を取り入れながら、多様な表現を含んだ作品が次々と生み出されている。そのポイントは、優れたクリエイター同士によるボーダーを超えたコラボレーション。今回はボーダーレスな表現の魅力を備えたアーティストの新作を紹介したい。

 デザインの専門誌『月刊MdN』(2017年1月号)で特集を組まれるなど、そのクリエイティブの高さに注目が集まっている欅坂46の4thシングル『不協和音』表題曲は、デビュー曲「サイレントマジョリティー」を手がけたバグベアの作曲・編曲によるナンバー。ラテンのテイストを取り入れたトラック、80年代ユーロビートを思い出しそうになるシンセサウンド、抑制を効かせたメロディラインなど、一見アンバランスな要素を組み合わせることで、まさに「不協和音」的なイメージにつなげている。<調和だけじゃ危険だ><意見を貫け>というフレーズ、あえてリズムを抑え、淡々と言葉を伝えるようなボーカルが生み出すコントラストも鮮烈だ。

欅坂46 『不協和音』通常盤

 2016年春にKAT-TUNを脱退、11月からソロ活動をスタートさせた田口 淳之介のメジャー1stシングル『Connect』。田口自身が作詞・作曲に参加した表題曲「Connect」は、海外のEDM、トロピカル・ハウスなどを取り入れたサウンドと“つながり”をテーマにした歌詞がひとつになったダンスチューン。ミュージックビデオにはサーフィンの大原洋人選手、スケートボードの中田海斗選手、スノーボードの中井孝治選手らが出演するなど、スポーツと音楽を融合した作品に仕上がっている。枠に捉われず、自分自身のネットワークを活かしながら、ボーダーを超えた表現へと結びつける。このスタンスこそが、ソロアーティストとしての田口の基本姿勢なのだろう。

 ゲスの極み乙女。の休日課長(Ba)、ボーカリストのREIS、えつこによる3ピースユニットDADARAYのデビュー作『DADAISM』。既成概念の否定と破壊を軸にした1910年代芸術運動“DADAISM”、光、光線を意味する“RAY”を組み合わせた”DADARAY”という名前は、そのままこの音楽性につながっている。先鋭的なジャズを下敷きにしたアンサンブル、徹底的に洗練されたメロディ、そして、“作ったら壊していく”(「ダダイズム」)というラインに象徴される、既存の音楽フォーマットを拒み、新しいスタイルを生み出そうとする姿勢。際立ったポップ感と破壊的な衝動が同時に体感できる、きわめて刺激的な音楽だと思う。

DADARAY 「美しい仕打ち」

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