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『KiLLER BiSH』特集2:主要ナンバーを楽曲分析

BiSHの音楽的インパクトはどう生まれる? 松隈ケンタ楽曲の特徴を徹底分析

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 6人組の楽器を持たないパンクバンドBiSHのメジャー・ファーストアルバム『KiLLER BiSH』がリリースされる。サウンドプロデュースを務めているのは松隈ケンタ。メジャーデビューシングルとなった「DEADMAN」 は、なんと99秒のパンクチューンで、マスタリングにはセックス・ピストルズの『Never Mind The Bollocks』や、クラッシュの『London Calling』などを手がけた巨匠ティム・ヤングを起用している。しかもこの曲、ディスチャージもかくやと言わんばかりの高速ハードコア。途中、メロウなBメロを挟んだり、後半に1度だけ登場するサビでは王道のJ-POPコード進行を用いたりもしているが、この圧倒的な攻めの姿勢は、かつてのBiS階段(BiSと非常階段のコラボユニット)を彷彿させる。

 本稿では、そんな松隈のソングライティングの魅力を探っていきたい。

 ロックバンドBuzz72+(バズセブンツー)を率いて上京し、2005年にavexよりメジャーデビューを果たした松隈ケンタ。高校一年で音楽に目覚め、洋楽や、日本のロック、ポップミュージック全般を愛聴していた彼は、デビュー時の椎名林檎を手がけていた亀田誠治が作り出すサウンドに強く感銘を受ける。また、フェイヴァリット・ギタリストにザ・フーのピート・タウンゼントを挙げるだけあり、彼の手がける楽曲はギターサウンドを主体としたものが多い。しかも、深くディストーションのかかったギターによる、切れ味鋭いカッティングが特徴的だ。

 Buzz72+解散後、コンポーザーとしての活動に専念するようになってからは、数多くのアーティストに楽曲提供をおこなっている。まずは2010年8月にリリースされた、中川翔子の12枚目のシングル「フライングヒューマノイド」を聴いてみよう。テレビ東京系アニメ『世紀末オカルト学院』の主題歌となったこの曲は、疾走感溢れる骨太なアレンジが特徴だ。キーはA♭で、イントロとAメロは<D♭- D♭- D♭- D♭ – B♭m – B♭m – B♭m – B♭m>の繰り返し。メロはシンプルだが、サブドミナントコードD♭に対し、ルートの2度上となるミ♭をあて浮遊感を醸しつつ、拍のアタマにアクセントを置くことによって聞き手に強い印象を残す。Bメロ直前で食い気味にFmをはさみ、そのまま<D♭ – E♭ – Cm – Fm – B♭m – B♭m – D♭ – D♭- E♭ – E♭ – C7 – C7>と進む。前半の<IV – V – IIIm – VIm>は、これまでの楽曲分析でも幾度となく登場したポップス黄金律。サザンオールスターズの「いとしのエリー」やスピッツの「ロビンソン」、モーニング娘。「Loveマシーン」など数多くの楽曲で用いられ、亀田誠治が「小悪魔コード進行」と名付けたものである。ちなみに最後のC7は、Fmに対するセカンダリードミナントコード…と見せかけて、続くサビのアタマのコードがFmではなくD♭になっている。これも、この楽曲の持つ浮遊感の鍵といえるだろう。

 続いてBELLRING少女ハートの「UNDO」。米国LAで開催される世界最大級のフェス、コーチェラへの出演を目標に、60年代ロックやサイケなどを取り入れたマニアックな楽曲を歌う彼女たちだが、この松隈が提供した曲も、オアシスの「ワンダーウォール」や往年のミクスチャーロックを彷彿させる、骨太でエッジの効いたサウンドが特徴だ。キーはB♭mで、イントロとAメロは<B♭m/D♭ – G♭ – B♭m/D♭ – G♭>のシンプルな繰り返し。途中でリズムが倍になるなど、聞き手を飽きさせない工夫を凝らしている。Aメロ後半では<B♭m/D♭ – G♭ – B♭m/D♭ – G♭/A♭>と展開し、Bメロへ。コードは<G♭ – A♭onG♭ – Fm – B♭m – E♭m・Fm/G♭ – A♭>で、前半の部分は中川翔子「フライングヒューマノイド」と同様、「小悪魔コード進行」を用いている。サビは、前半が<G♭/D♭ – A♭onC/B♭m – G♭/D♭ – A♭onC/B♭m>、後半が<G♭/D♭ – A♭onC・B♭m/E♭7 – E♭m7/A♭ – D♭>。シンプルな循環コードにもかかわらず、分数コードA♭onCが非常に効いていて、何度もリピートしたくなるような中毒性がある。

      

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