>  >  > 薬師丸ひろ子のボーカルにある説得力

薬師丸ひろ子、ボーカルの説得力はどこから? 歌手35周年アルバム『Cinema Songs』を紐解く

関連タグ
薬師丸ひろ子
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 思えば、薬師丸ひろ子という女優にとって、シンガーとしてのキャリアはとても幸せだったのではないだろうか。1978年に映画『野性の証明』で高倉健との共演でスクリーン・デビューを果たし、1981年に公開された主演作『セーラー服と機関銃』で大ブレイク。この時、初めて歌に挑戦した主題歌が大ヒットし、歌手という大きな肩書が加わる。以来、主演作と主題歌を同時に連続してヒットさせていくのだ。

 彼女が幸せだった理由のひとつに、楽曲のクオリティの高さが挙げられる。「セーラー服と機関銃」は来生えつこ&来生たかおが楽曲提供。続く「探偵物語」は大瀧詠一、「メイン・テーマ」は南佳孝、「Woman “Wの悲劇”より」は呉田軽穂(松任谷由実)、そして作詞はいずれも松本隆という布陣だ。他のアイドルや女優と比較しても、ここまで一流のスタッフを起用し、そのレベルにしっかりと応えられたという例はほとんどない。演技力同様に歌唱力もあるからこそのヒットと評価だといえる。

 そんなこともあり、女優・薬師丸ひろ子の映画音楽に対する思い入れは人一倍大きいはず。だからこそ、歌手デビュー35周年を記念して制作されたアルバムが映画音楽のカバー集ということで思わず納得させられた。この『Cinema Songs』には、12曲に絞られた珠玉の映画音楽がセレクトされている。

 前半は洋画の主題歌が8曲。彼女が尊敬しているというドリス・デイのヒット曲「Tea For Two」(映画『二人でお茶を』)、ギター・インストに歌詞を付けた「Cavatina」(映画『ディア・ハンター』)などの英語曲にハッとさせられる。だが、それらよりもぴったりとはまっているのが日本語詞によるカバーだ。オードリー・ヘップバーンの気怠い歌声で知られる「ムーン・リバー」に始まり、マイケル・ジャクソンが少年時代に歌ってヒットさせた「ベンのテーマ」、80年代以降のミュージカル映画を代表する『アニー』の「トゥモロー」など、曲調は様々でありながら、彼女のキャラクターに上手くフィットした名曲を優しい言葉で表現。なかでも、バーブラ・ストライサンドの主演と歌唱で大ヒットした『追憶』のテーマは、大人のシンガーとしての魅力に溢れた名唱。あらためて、言葉の魅力を聞き手に伝えることができる女優ならではの歌なんだなと感じさせてくれる。

 そして、ファンにとって嬉しいのは、後半に収められた邦画の主題歌4曲だ。「コール」は1993年の主演作『ナースコール』の主題歌。普遍的な愛を描いた歌詞が沁み、大切に歌い込んだことがよく分かる。『犬神家の一族』の「愛のバラード」は意外だったが、彼女が育ってきた角川映画へのオマージュといったところだろうか。

 そして、何より嬉しいのはデビュー作『野性の証明』の主題歌「戦士の休息」だ。町田義人によるソウルフルなオリジナルとは一味違う、清冽な雰囲気でこの曲の新しい魅力を引き出している。まさに、原点回帰といえる美しい一曲だ。最後の「セーラー服と機関銃」は、ファン・サービスということでボーナス・トラック扱い。比較的オリジナルに近い感覚のアレンジに好感が持てる。どのように彼女の声が成長しているかはぜひ実際に聴いて楽しんでいただきたい。

 このように、映画に特化したアルバムは、まさに薬師丸ひろ子のスクリーン人生を反映した作品である。日本を代表する女優ならではの説得力に満ちたボーカルに、じっくりと耳を傾けてもらいたい。

(文=栗本斉)

160925_yaku_j.jpg薬師丸ひろ子「戦士の休息」「セーラー服と機関銃~Anniversary Version~」 160925_yaku_al.jpg薬師丸ひろ子『Cinema Songs』

■リリース情報
『戦士の休息』『セーラー服と機関銃〜Anniversary Version〜』
先行配信:2016年9月25日
iTunes
レコチョク
mora
・LINE MUSIC、Apple Music、AWAなど主要定額制音楽ストリーミングサービスでも配信中

『Cinema Songs』
発売:2016年11月23日
価格:¥3,000(税抜)
〈収録楽曲〉
01 ムーン・リバー ・映画「ティファニーで朝食を」主題歌
 作詞:John Mercer/作曲:Henry Mancini/訳詞:吉田 旺
02 Smoke Gets In Your Eyes ・映画「Always」挿入歌
   作詞:Otto Harbach/作曲:Jerome Kern
03 Mr.Sandman ・映画「バック・トゥ・ザ・ フューチャー」挿入歌
 作詞・作曲:Pat Ballard
04 ベンのテーマ ・映画「ベン」主題歌
 作詞:Don Black/作曲:Walter Scharf/訳詞:増永直子
05 Tea For Two ・映画「二人でお茶を」主題歌
   作詞:Irving Caesar/作曲:Vincent Youmans
06 Cavatina ・映画「ディア・ハンター」テーマ曲
 作詞:Cleo Laine/作曲:Stanley Myers
07 トゥモロー ・映画「アニー」挿入歌
 作詞:Martin Charnin/作曲:Charles Strouse/訳詞:片桐和子
08 追憶 ・映画「追憶」主題歌
 作詞・作曲:Alan Bergman, Marilyn Bergman, Marvin Hamlisch/訳詞:岩谷時子
09 コール ・映画「ナースコール」主題歌
   作詞:須藤晃/作曲:玉置浩二
10 愛のバラード ・映画「犬神家の一族」テーマ曲
 作詞:山口洋子/作曲:大野雄二
11 戦士の休息 ・映画「野性の証明」主題歌
   作詞:山川啓介/作曲:大野雄二
<ボーナストラック>
12 セーラー服と機関銃〜Anniversary Version〜
・映画「セーラー服と機関銃」主題歌
作詞:来生えつこ/作曲:来生たかお
All songs arranged by Ryo Yoshimata(except M-12:Gen-Ittetsu)

■コンサート情報
「世界遺産劇場/春日大社 第六十次式年造替奉祝 薬師丸ひろ子コンサート」
2016年9月25日(日)開場16:00/開演17:00 @春日大社飛火野特設舞台(奈良県)
【お問い合わせ】・キョードー大阪ホームページ
http://www.kyodo-osaka.co.jp/schedule/E017053-1.html
・世界遺産劇場ホームページ:http://www.sap-co.jp/7718

■ビクターエンタテインメント アーティストHP
http://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A008188.html

「薬師丸ひろ子、ボーカルの説得力はどこから? 歌手35周年アルバム『Cinema Songs』を紐解く」のページです。>の最新ニュースで音楽シーンをもっと楽しく!「リアルサウンド」は、音楽とホンネで向き合う人たちのための、音楽・アーティスト情報、作品レビューの総合サイトです。

表示切替:スマートフォン版 | パソコン版