SMAPは終わらないーー気鋭の批評家・矢野利裕による新たなグループ論

 SMAP同様、〈芸人〉として舞台に生きる太田は、さすがに〈芸能〉に対する感受性が強い。多くの人が社会的なしがらみしか見えていなかったときに、太田は、木村の俳優としての身体に注目していた。相方の田中裕二も同じように、「それはやっぱり、ああやって5人並んでやるっていうのは、いわゆる画力(えぢから)的なことで言ったらさ、すごいじゃん」と、テレビに映し出された〈芸能‐人〉の身体を評価していた。なるほど、そのような視点で振り返ると、木村から遠く離れた位置にいた中居の、ふてくされていたような、それでいて疲れ切っていたような表情に対しても、ルーズでズレをともなった〈SMAP的身体〉の魅力を再発見できそうな気がしてきた。これはさすがに、SMAPにロマンを抱き過ぎだろうか。しかし、少なくともある人にとっては、あんな事態のただなかで、〈芸能‐人〉としてのSMAPに魅了されていた。あんな事態にあってなお、5人の身体には、多様な価値が見出されていた。汲めども尽きぬ多様な価値が。そのくらい、〈SMAP的身体〉は強い。〈SMAP的身体〉はつねに/すでに、社会のしがらみからするりと逃れ、自由と解放の気分をともなった鮮烈な輝きを発している。

※続きは、書籍『SMAPは終わらない 国民的グループが乗り越える「社会のしがらみ」 』にて。

■書籍情報
『SMAPは終わらない 国民的グループが乗り越える「社会のしがらみ」 』
価格:1,600円(税込価格:1,728円)
判型:四六判
総頁数:248頁
発売:8月9日
発行/発売:垣内出版

予約はこちらから

【目次】

・はじめに
SMAPは音楽で“社会のしがらみ”を越えるか? ジャニーズが貫徹すべき“芸能の本義”

・第一章 SMAP的身体論
〈SMAP的身体〉と挫折の記憶 / SMAPの〈芸人〉性 / SMAPとクラブ・カルチャー / フリー・ソウルと森且行 / 夜空のむこうに咲いた花 / 解散騒動へ/から

・第二章 Free Soul : the classic of SMAP――SMAPを音楽から考える
ゲスト:橋本徹(SUBURBIA)、柳樂光隆(Jazz The New Chapter)

90年代という時代性 / SMAPと“渋谷系”文化 / 「アーバン」がキーワード / ディスコティックな感覚と生音感 / 『bounce』とSMAP / “黒い”SMAPの時代 / カフェ・ブームとSMAP / 時代を反映した“DIY感” / ギターソロが少ない? / SMAPの“フリー・ソウル感” / 2000年代、サウンドの変化 / 楽曲提供に恵まれたSMAP / 2010年代、“らしさ”の復活 / SMAP代表曲サウンドの魅力 /『SMAPPIES』はジャズ・ファン向けのガス抜き / 他グループとの音楽性の比較 / ルーツは少年隊のB面にあり?

・第三章 SMAPがたどった音楽的変遷〜触れておくべき8タイトル〜
SMAP 001 / SMAP 006〜SEXY SIX〜 / SMAP 007〜Gold Singer〜 / SMAP 008〜TACOMAX / SMAP 009 / BIRDMAN〜SMAP 013 / Pop Up! SMAP / Mr.S

・第四章 世界に一つだけの場所・にっぽんのアイドル論
ゲスト:中森明夫(作家/アイドル評論家)

アイドルと批評 / アイドルを人類史的に考える / 『敗戦後アイドル論』 / ファンたちの偉大な歴史的勝利 / スター性を放棄/獲得したSMAP / 文学と芸能 / アイドルは神なのか人間なのか / アイドル、ジャニーズはどこへむかう?

・あとがき

【書籍内容】

批評家・矢野利裕による、あの国民的グループへの緊急エール!!

2016年1月、日本全体を揺るがした SMAP解散騒動。『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)でのメンバー謝罪会見を端に、矢野利裕が音楽総合サイト『リアルサウンド』で執筆したコラム「SMAPは音楽で“社会のしがらみ”を越えるか? ジャニーズが貫徹すべき “芸能の本義”」の大反響を受け、緊急出版。世界にひとつだけの「SMAP」の存在と今後を、音楽と芸能から紐解いた“SMAP論”の決定版。

《論考&ゲスト放談でSMAPを徹底考察》
SMAPの音楽に詳しい編集者・橋本徹氏とJazz評論家・柳樂光隆氏を迎え、これまで深く語られなかったSMAPの音楽的魅力を深堀り!また、アイドル評論家・中森明夫氏を迎えてAKBとジャニーズ、日本独自のアイドル文化についての白熱論議!その他論考&ディスクレビュー、あらゆる視点でSMAPを語り尽くしました!

【著者プロフィール】

矢野利裕(やの・としひろ)
1983年、東京都生まれ。批評家、ライター、DJ、イラスト。東京学芸大学大学院修士課程修了。2014年「自分ならざる者を精一杯に生きる――町田康論」で第57回群像新人文学賞評論部門優秀作受賞。共著に、大谷能生・速水健朗・矢野利裕『ジャニ研!』(原書房)、宇佐美毅・千田洋幸編『村上春樹と一九九〇年代』(おうふう)などがある。

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