嵐とはどういう存在か? 明治大学名物講師が“PVにおける四つの手法”から分析

 明治大学法学部で、嵐を題材にした講義を行っている講師の関修氏が、自身二作目となる書籍『「嵐」的、あまりに「嵐」的な』を先頃上梓した。同氏は、前作『隣の嵐くん : カリスマなき時代の偶像(アイドル)』で嵐のメンバーの関係性やグループとしてのあり方を、現代思想や精神分析学といった学識とひも付けて分析。本著は、彼らのPV(MV)に着眼し、さらに詳細な分析を行ったものとなっている。リアルサウンドでは著者・関修氏へのインタビューを行い、本著の軸となる「truth」以降の映像に共通する“四つの手法”を中心に語っていただいた。(編集部)

『嵐とはどういう存在なのか』批評する方法論を見出したい

――まず、ご自身の執筆のスタンスとして、嵐の裏話を暴露するような本とも、哲学や現代思想の哲学の入門書とも異なると書かれておりましたが、そのあたりについて改めておうかがいできますか。

関:1冊目の『隣の嵐くん』の時は、初めて書いた本ということもあり、「嵐とはどういう存在か」ということを中心に書きました。手に入れた資料からの情報とオリジナルのメンバー5人の性格分析という構成だったので、ファンの方々からすると、すでに知っている情報も多かったと思います。ただ、私は芸能ライターではないので、世に出ていない情報を書きたいのではなく、既存の情報から「嵐とはどういう存在なのか」批評する方法論を見出したいのです。なので今回は、誰でも手に入れられるPVをどう解釈するかということだけに的を絞りました。対象をPVに絞ったのは、他のアイドルや芸能人を批評する時にも使える手法であり、今まで出ているタレント本とは違う点をより鮮明に出したいという狙いからです。我々が目にすることができる「嵐」とはどういう存在で、なぜ人々は好み惹かれるのかをPVに絞って分析し、「嵐」的なものを抽出しました。

――批評する上で、具体的にどのような手法が用いられたのでしょうか。

関:「truth」以降人気が出るようになったPVを「truth」と同じ方法論の系譜と、それ以外の系譜の比較として1章と2章で示しました。それらでは嵐のPV自体を比較し、3章では他のグループと比較、PVに限らない嵐としての独自性を示し、これもまた「嵐」的なものとして提示しています。最後の章は、PVという視覚的な分析に加え、嵐のメンバーそれぞれのコメントの違いにも「嵐」的なものがあるのでは、という見立てで進めました。前作でも、嵐を言語的に表現しているのは、相葉雅紀さんと櫻井翔さんだと書きました。それを実際に証明するために、具体的な発言を例として挙げ、分析したのが第4章です。このように、今までの嵐の本とは異なるスタンスで、しかし、狙っているところは共通すると思っています。

――批評性は、前作より強くなったと思います。

関:そうですね。ただアイドルを応援するのもいいですが、「批評」が定着していかないといけないと思っていて。日本人はもともと批評があまり上手ではないので、何かを語るとき、広告塔のようになってしまう。それは、アイドルに対してだけではなく、全般的な風土としてある気がしていて。嵐はこれだけ人気を得ているアイドルだからこそ、批評の俎上に載せて、改めて彼らを捉え直す必要があるのではないかと個人的に思っているんです。

――身近なPVを批評し、一つの解釈を提示するというのは非常に明快なスタンスかと思います。嵐論としても、より実践的なところに近づいたという感じでしょうか。

関:2冊目を最終的に書こうと思った時、PVに対して緻密に、秩序立てて書くことが必要だと思いました。1冊目で「嵐」という全体像をどう捉えるかを示し、今回さらに突き詰めたことで、注目すべき点がより鮮明になったと思います。しかし、それらは全て私自身の解釈であって、これが絶対というものではない。逆に私はこう解釈する、といった意見が出てくるのがまさに批評であって、意見を戦わせることで議論が沸騰することが「嵐」という見方を多様にし、豊かなものにするんじゃないかと思うんです。

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