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関修『隣の嵐くん』出版記念インタビュー(前編)

「嵐には理想的な人間関係がある」明治大学の名物講師がグループの魅力を語る

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 明治大学法学部にて、を題材にした講義を行っている関修氏が、書籍『隣の嵐くん~カリスマなき時代の偶像』を6月4日に上梓した。同書は、フランス現代思想や精神分析学といった学識を基に、メンバーの関係性やその魅力を多元的に読み解いた意欲的な一冊だ。熱心な嵐ファン=アラシックであり、特に相葉雅紀がお気に入りだという同氏は、嵐をどんな眼差しで見つめているのか。そして、アカデミックな考察から見えてくる嵐像とはいかなるものなのか。インタビュー前編では、同氏が嵐に魅せられたきっかけから、SMAPと嵐の違い、そしてフランスの精神分析家、ジャック・ラカンが提示した「四つのディスクールと資本のディスクール」から見えてくるメンバーの関係性まで、じっくりと語ってもらった。

SMAPと嵐、グループとしての違いは?

――関さんが嵐に興味を持ったきっかけを教えて下さい。

関:きっかけは『ひみつの嵐ちゃん!』です。今までと雰囲気が違う番組で、面白いコーナーがいろいろとあり、特に僕は「マネキンファイブ」というコーナーが好きでした。5人がテーマごとに自分のファッションを披露するコーナーでして、彼らのいいところは芸能人的な服装じゃないことなんですよね。5人がそれぞれ個性を出して、普通の男の子がデートに着ていくような服を自分なりのセンスで選ぶんです。それを観ていて「この人達は今までのジャニーズやアイドルというものとは少し違うな」と思って好感を持ちました。テレビドラマなどではときどき嵐を見ていましたが、グループとしての5人を意識して見るようになったきっかけはあの番組です。

――本書では嵐のブレイクの最大の理由を「バーチャルな最良の隣人であるから」としています。これはどういう意味でしょう。

関:ジャニーズのファンはすごくパイが大きいですが、SMAPは別として、基本的には女性の一定の年齢層が大きなファン層です。しかし嵐はそこに収まらず、本当に老若男女に好かれています。その理由は、恐らく圧倒的にテレビで観る機会が多いからだと思います。テレビCMには数多く出演しているし、バラエティでは相葉くんが、MC番組では櫻井くんが、というようにメンバーの誰かがいつも活躍していて、視聴者は自然に嵐と接することになります。ジャニーズファンか否かに関係なく、一般の人が身近なものとして嵐を感じられることが嵐の凄いところです。世情的に見て、都会の独居老人や過疎化が進んでいますが、そういう人達にとってはテレビというツールがすごく重要です。テレビをつけると必ず嵐の誰かが映っている、という状況は、彼らにとって心のやすらぎになっているような気がします。

ーー嵐が出演するCMの内容にも、親しみやすさを抱かせる要因があると、本書では指摘しています。

関:彼らは電化製品やビールなど、私たちが日常的に使うもののCMに出演しており、それが親しみやすさに繋がっていると考えられます。例えばビールのCMであれば、普段はジャニーズの番組を観ない父親層の認知度が上がります。そうなると、嵐が家族共通の話題として機能する、ということも増えるでしょう。実際、嵐をCMに起用する企業にはJALや日産など、家族で利用するサービスを提供しているところが目立ちます。従来のアイドルは、カリスマティックなイメージが先行していましたが、嵐の場合は同じ目線で行くところに皆が親しみを感じて、人気が高まったのではないでしょうか。

――親しみやすさという意味ではSMAPも、カジュアルダウンして成功した例と言われています。SMAPと嵐の違いについて、改めて教えてください。

関:SMAPの場合は、親しみやすさを抱かせる中居くん、香取くん、草彅くんら「バラエティ班」と、伝統的なアイドル感を保つキムタク、稲垣くんら「ドラマ班」のコントラストが魅力となっていると思います。一方、嵐の場合は、少なくともキムタクたちに当たる伝統的なアイドル像はあまり見られませんし、中居くんほど庶民的なわけでもありません。つまり「庶民対セレブ」という対立項のコントラストの面白さではなくて、むしろ「普通」なんだと思うんです。しかし、普通の人も皆同じなわけではなく、いろいろな人がいてそれぞれの個性がありますよね。嵐はそのひとつの典型のようなもので、SMAPのような分類もなく5人はそれぞれバラバラですが、それでトータルな嵐でもあります。そういった関係性を象徴するのが『紅白歌合戦』の司会で、SMAPの場合は中居くんが1人で務めましたが、嵐は全員でやりました。そこがパブリックイメージの違いだと思います。実際、紅白の歴史の中でもグループで司会をしたのは嵐だけですし、逆に嵐のメンバーが一人で紅白の司会を務めるというのは、しっくりこないのではないかと思います。嵐はあまりにも「普通」なので、なかなか気付きにくいところではあるのですが、そういった意味で今までのアイドルの既成観念を打ち破っているんです。

――たしかに嵐は「普通」な印象が強くて、いつの間にかブレイクしていた感じがします。

関:そこが嵐の嵐たる所以です。嵐がデビューしたのは、光GENJIも終わってジャニーズ人気が落ち着き、安室奈美恵さんなどが出てきた頃です。彼らの作品を見ていると、デビュー作は伝統的なジャニーズ系ですが、その後、DA PUMPなどのようなブラック系の要素を取り入れた作品を出したりしています。すごく試行錯誤している様が見えますね。伝統的なジャニーズアイドル路線を極めたのが『Happiness』あたりで、もう少し成熟した、隣人的な路線――つまりは現在の嵐のスタイルが完成したのは『truth』のあたりからだと思います。それ以降の曲は非常にうまくできていて、パート分けが均等になっていたり、必ず全員がきちんと前に出るようになっています。そのように成熟して、いわゆるアイドルっぽさを抑えた良質なポップスを提供できるようになったことで、ジャニーズに関心の低いリスナーにも届くアーティストになったのではないでしょうか。

     
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