映画やドラマで流れる「劇伴」はなぜ“繰り返し”が多い?『タイタニック』などのヒット作から解説

 これまでリアルサウンドでは、J-POPの楽曲分析記事を定期的に掲載してきたが、今回は映画やアニメーション、ドラマなどで流れる音楽「劇伴」についての記事をご紹介する。ジブリアニメ『コクリコ坂から』の主題歌「さよならの夏」などで知られる作曲家、坂田晃一氏に師事する新進作曲家・編曲家の高野裕也氏に、「なぜ劇伴には繰り返しが多いのか」を考察してもらった。(編集部)

 

 映画、テレビドラマ、アニメーション、アニメーション映画などの「劇が存在する映像作品」で流れる背景音楽、いわゆる「劇伴」には「繰り返し」が多い。

 繰り返しの定義は

(1) 1曲の中で、短いブロック単位を繰り返し用いる場合
(2)主要なテーマのメロディを同じ映像作品の中の他の劇伴で用いる場合

 大きく捉えるとこの2種類だ。まずはそれぞれの特徴について説明したい。

 J-POPなどの「歌モノ」では「Aメロ→サビ」、もしくは「Aメロ→Bメロ→サビ」、という要素に加え、イントロ、ターンバック、インタールード、エンディングなどが入るケースが幅を利かせている。しかし、劇伴では「A→A→A」、といったように、1つのブロックのみを繰り返す場合も多く存在し、3ブロック以上の様々な要素が入った劇伴は意外と少ない。その傾向は特に映画の劇伴で顕著だ。

 1曲の中で、短いブロック単位を繰り返し用いることは、繰り返し同じメロディを聴くことで、聴き手の中にその部分に対する愛着が湧きやすいこと、1曲の中で部分的に取り出して使用しやすいため、選曲において重宝することなどの利点が挙げられる。そして、あくまで劇伴として音楽を機能させなければならないので、曲が進むにつれて新しい要素を次々と出すことで視聴者の意識を映像ではなく音楽の方に誘導することは避けたい、という意図で楽曲を作る作家も少なくない。

 そして、こういった繰り返しは劇伴において効果的だということは上記で述べたが、じつはクラシック作品の名曲などでも普通に取り入れられている。スタンダードとされるものは、覚えやすい構造にあえて作られているのだ。

 具体例として、グリーグ作曲の組曲「ペールギュント」より「朝」を紹介したい。

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