姫乃たまが綴る、初の単著 『潜行』への反響 地下アイドルの面白さは世間にどう伝播していく?

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(C)Kunio Hirayama

 地下アイドルの空間が閉鎖的であることに気がついたのは、いつのことだったでしょう。私服よりやや派手な衣装で歌う地下アイドルと、私服よりやや派手な推しのTシャツを着て応援するファン達。光るサイリウムと、地下にあるライブハウス。

 私が出演していた地下アイドルのライブは、小さな村のようでした。いつもと同じ出演者、いつもと同じ関係者、いつもと同じファンの人達。誰がどの子のファンなのか、みんなが認識していて、見かけない顔の人がいると、不思議がられていました。滅多に新しい観客が増えることはないのです。

 こんな話を聞きました。CDショップでアイドルグループのCDを買い、初めてライブに足を運んで、メンバーに「CD買ったよ」と声をかけたら、訝かしげに見られたというのです。CDは曲を聴くためよりも、顔見知りのファンが応援したい一心で購入することが多く、純粋にCDを買ってライブに来た新しいファンが珍しかったのだと言います。

 アットホームなライブは閉鎖的でありながら、その場にいる人達を開放的な気分にさせます。馬が合わない友達には知られていない、秘密基地のようなものだからです。その空間には、特に取り柄のない私でも応援してくれる人がいて、私はそのことに何年も新鮮に驚き、喜びを感じていました。

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