LiSAがジャンルを超えて支持される理由とは?  ロックとポップを自由に行き来する表現を分析

LiSAが支持される要因

 筆者のなかでLiSAのイメージが大きく変わったきっかけは、cinema staffに対するインタビューだった。TVアニメ「進撃の巨人」後期EDテーマとして制作された「great escape」に関するインタビューで、ロックバンドがアニメソングを手がけることについて話しているとき、メンバーの口からLiSAの名前が挙がったのだ。

 彼らとLiSAはともに岐阜県出身であり、インディーズ時代、cinema staffはLiSAがボーカルを取るバンドと地元のライブハウスで対バンすることも多かったという。LiSAは当時からすごく歌が上手かったし、スター性もあった。アニメソングをきっかけに有名になることは想像してなかったけど、人気が出るのはすごくよくわかる……LiSAが地元でバンド活動をしていたことすら知らなかった筆者は、彼らの言葉を聞き、“そんなバックボーンがあったのか!”と驚くと同時に“なるほど!”と強く納得したのだった。

 LiSAは、'10 年春から放送されたTV アニメ「Angel Beats!」の劇中バンド「Girls Dead Monster(ガルデモ)」2 代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢されたことをきっかけに注目を集めたシンガー。凛とした強さとキュートな雰囲気を併せ持ったボーカルはアニソンファンを中心に高く支持され、'11 年春ミニアルバム『Letters to U』でソロデビューを果たした。その後も1st シングル『oath sign』(TV アニメ「Fate/Zero」1st シーズンOP)、'12 年夏には2ndシングル『crossing field』(TV アニメ「ソードアート・オンライン」)など、アニメソングを中心にリリースを重ねてきたが、UNISON SQUARE GAREDENの田淵智也が作詞作曲を手がけた初のノンタイアップシングル『best day, best way』をきっかけに自らの音楽性、キャラクターを表現しはじめ、独創的なアーティスト・イメージを築き上げてきた。その後も、アニメタイアップソングでは自身の作詞によってアニメ作品の世界観と自らの想いをリンクさせることに成功し、 またノンタイアップ曲では、時にポップに時にロックなアプローチを図り、自身の音楽性を拡張させてきた。 そして、それらの作品群は全てが上位チャートインを果たし、アニソンシーンのみならずJ-POPシーンにおいても確固たるポジションを確立してきた。

 LiSAの最大の魅力は、楽曲によって“ロックとポップ”“カッコよさとかわいさ”を自由に行き来できることだと思う。“ロック”“カッコよさ”はもちろん、バンド時代に培ったものだろう。ヘビィロック、メロコアといったサウンドを自在に乗りこなし、爆音のなかでも鋭くボーカルを響かせるセンスは、実際にバンドでの経験がないと絶対に身に付かない。ライブにおける煽りの上手さ、アグレッシブな身のこなしもまた、彼女の大きな武器だ。

 “ポップ”“かわいさ”は、ガルデモ以降、主にアニメソングを歌うなかで備わってきた要素。インタビューのなかで「バンドのときは“かわいい”というイメージがイヤで、とにかく“カッコいい”と言われたかった」という趣旨のコメントを聞いたこともあるが、10代前半の頃はSPEED、ハロプロなどが好きだったというルーツもあり、もともとアイドル的な素養も持ち合わせていたのだと思う。“かわいいLiSA”を彼女自身が楽しめるようになったことも、表現の幅を広げ、その人気ぶりを加速させた要因なのだろう。

 また、自らのパブリックイメージを客観的に把握し、ファンが求める楽曲と自分自身が追求したい音楽性をバランスよく共存させるセルフプロデュース能力の高さも彼女の特徴。それがもっとも強く発揮されたのが、2014年9月にリリースされたシングル『BLiGHT FLiGHT/L.Miranic』だ。ポップに振り切った「BLiGHT FLiGHT」、本格的なヘビィロックサウンドを全面に取り入れた「L.Miranic」を両A面シングルとして提示することで、ポップとロックを行き来するアーティスト像をわかりやすくアピールしてみせたのだ。ちなみに「L.Miranic」の作曲は、岐阜時代の先輩でもあるSiMのMAH。SiMが他アーティストに楽曲提供を行うのはこれが初めてだったのだが、そこには地元でのバンド活動を踏まえた“バンドマン同士の絆”にも似た関係性があったはずだ。

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