Ken Yokoyamaが問う、今音楽に向かう理由 「俺は何に興奮して、創作に取り掛かれるのか」

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「テーマが無いようでいて、音楽に向かった」

ーーでは、最新作『Sentimental Trash』の話に移ります。こんなにメロディックパンクから離れた作品も珍しいし、思い切ったなと思いました。

Ken Yokoyama:でも、12曲入ってるうちの半分は従来のメロディックパンク的な曲だけど、それでも印象としては離れてるように感じた?

ーーそうですね。正直に言うと、第一印象はピンとこなかったんですよ。その後も、自分の耳がおかしいのかもしれないと思って何回も聴いたけど、やっぱり印象はあまり変わらず。それで、しばらく聴かずに置いておいたんです。それで後日、思い出したかのように聴き直してみたらズドンと入ってきた。そこで、「あ、今回はこれまでと聴き方が違うんだな」と思ったんです。ミドルテンポの「Dream Of You」を1曲目として提案したのはMinamiさんだったそうですけど、これはこれまでとは違う手触りの作品なんだということを明確にするためにそうしたのかなって想像したんです。

Ken Yokoyama:そうかもね。これだけバラエティに富んだアルバムで1曲目が従来のメロディックパンク路線の曲だったら、そういうのが好きな人にとっては尻すぼみのものになっちゃうじゃない? だから、メロディックパンク然とした曲をトップに置かないっていうのは意識したね。

ーーなるほど。今、なぜこういう作品ができたのかを掘り下げるために、過去の作品について改めて聞きたいんですけど、まず1枚目の『The Cost of My Freedom』(2004年2月リリース)はどういう作品でしたか?

Ken Yokoyama:1枚目は成り立ちからして異質な作品だよね。最初は、トミー・ゲレロとかそういったギタリストがサイドプロジェクトとしてやるようなイメージで、アコースティックな曲を作り始めたんだけど、その合間にHAWAIIAN6のプロデュースを挟んだことで、「俺、やっぱりこういうメロディックパンクが得意なんじゃん!」ってことに気付かされて、その要素も足してみて、そして作品が出来上がったら今度はライブもしたくなってKEN BANDを結成したっていう。今の自分の活動の基礎を作ってくれたアルバムだよね。

ーーソロとしての初期衝動みたいなものが詰まった作品ですよね。

Ken Yokoyama:そうだね。特にアコースティック面に顕著なのかなって思う。

ーー3枚目『Third Time’s A Charm』(2007年9月)は、横山さんに子供が生まれたことが大きく影響しています。

Ken Yokoyama:そう。長男坊が生まれて、その喜びの中で作っていったアルバム。だから、自分の中ではすごく柔らかい印象がある。

ーーそして、今作です。今回はメインギターが変わったことが大きいんですよね。

Ken Yokoyama:そう。今回はテーマが無いようでいて、音楽に向かったっていうテーマがあるの。ギターと音楽。そういった意味じゃあ、1stと似たところはあるのかなって気はする。

ーーなるほど。

Ken Yokoyama:音像も違うし、バックグラウンドも違う。あの時は本当にひとりぼっちだった。でも、今は仲間がいてさ、その差も大きい。あとは、曲のバラエティさもそうだし、気持ちの入れ方も1stと近いものがあって。でも、今は未来の子どもたち――この日本で生きていくであろう子どもたちについて考えてると、自ずと自分の過去と向かい合わざるを得なくて。自分が子供の頃はどうしてもらったとか、世の中はどうだったとか、そうすると当時の風景も思い出されてきて、ノスタルジックな気分になったりして。だから、質は違うし、1stは寂しい感じが出ちゃったけど、自分と向き合うって意味では今回のアルバムとすごく一緒なわけ。この2年間ぐらいの間、夜な夜な自分ちの換気扇の下でタバコを吸いながら、「俺は何に興奮して創作に取り掛かれるのか」っていうことをすごく自問自答してた。その時の熱が意外と1stに近いような気がするんだよ。音には表れてないのかもしれないし、自分の感触だけなのかもしれないけど。

ーー1、2、4、5枚目っていうのは感覚的にだったり音楽的にお客さんも共有できる内容だったけど、3枚目と今回は割りと横山さんのパーソナルな部分からスタートしてるように感じたんですよ。

Ken Yokoyama:1stだってパーソナルじゃない? あれは共有できるの?

ーー1stは「横山健が帰ってきた!」っていうお客さんの熱狂があったわけじゃないですか。かなりパーソナルな内容ではありますけど、Hi-STANDARDの活動が2000年にストップして以降の横山さんのストーリーを、一部とはいえファンも見てたわけで、かなり感情移入できた作品だったと思うんですよね。だから、「Running On The Winding Road」を聴くと、サウンド以上にグッとくるというか。まあ、そう考えると今回の「I Won't Turn Off My Radio」もそんなところはありますけど……。

Ken Yokoyama:結局、どの作品とも似てないというところには落ち着かないのかな(笑)? 何かに似てないといけないの?

ーーこんなに回りくどい話をしたのも、前情報なしにこの作品をファンがストレートに受け止められるんだろうかっていう不安があるからなんですよ。だから、曲順に関してもそうだし、このアルバムの良さをしっかり受け止められるように解説していきたいっていう使命感のようなものがあって。要は、理解しづらい作品なのかなと。

Ken Yokoyama:ああ、まあね。音楽としては聴きやすいのかもしれないけど、横山健がなんでこれをやるのかって考え始めると難しいかもしれないね。でもまあ、そこを説明するとしたら“ギターと音楽”しかないのよ。

ーー今回のアルバムを聴いて改めて思ったんですけど、横山さんの曲は疾走感があってパンキッシュだからすごいんじゃなくて、良い曲を書いてそれをキャッチーに鳴らすことができるからすごいんだなと。プロデューサーとしてそもそも優れてるから、どんなサウンドを鳴らそうが関係ないんですよね。

Ken Yokoyama:だって、「A Beautiful Song」なんてSMAPが歌ったら「世界に一つだけの花」越えると思うよ?あはは!

ーー(笑)あくまでもサウンド的な部分だけで言うと、「Mama, Let Me Come Home」みたいな“ザ・メロディックパンク”的な曲は今回必要ないんじゃないかっていうぐらい、横山メロディをほどよいテンポで堪能したい気持ちになりましたよ。

Ken Yokoyama:なるほどね。ちなみにその曲はね、まだNO USE (FOR A NAME)があったらやれなかったな。これ、けっこうNO USEっぽいじゃない?トニーが亡くなってから、NO USEは動いてないでしょう。だから、もしトニーが生きていたら、これは彼のやるべきことであって自分がやらなくてもいいと思ってたかもしれない。“絆”みたいな意味合いもあったりする曲なんだよ。

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