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the chord『by your side』インタビュー

後藤健二氏追悼アルバム『by your side』が伝える、生前のアート活動と愛すべき人柄

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2010年に開催された個展の際の後藤健二氏

 国際ジャーナリストの後藤健二氏がISIL(イスラム国)に拘束され、2015年1月にその命を失った。事件の衝撃は今も生々しく、生前のジャーナリズム活動についてさまざまな形で語り継がれようとしている。一方、後藤氏がアートユニット・the chordのメンバーとして、音楽の要素も取り入れた表現活動を展開していたことは、現時点では知る人ぞ知る事実かもしれない。

 今回、the chord名義で『by your side』と題された1枚の音楽アルバムが6月24日にリリースされる。同作には、後藤氏との親交も深く、the chordのギャラリーパフォーマンスを続けてきたボーカリストのshizukaを迎え、「AVE MARIA」「A Daily Prayer」「Standing On The Promises」という、敬虔なクリスチャンだった後藤氏に縁のある3曲を収録している。

 後藤氏とアーティスト・こうづなかば氏によるthe chordは、「アートとジャーナリズムの融合」を掲げて2009年末に結成。2010年からは計15,000人を動員した巡回展[eyes]を東京・長崎・高松にて開催し、その後、ニューヨークやマイアミなどで開かれたアートフェアに参加するなど、精力的に活動していた。

 そのアート作品は、“宇宙”をテーマの一つとしているこうづ氏の作風に、後藤氏のジャーナリスティックな視点を加えた独創的なもので、後藤氏が撮影した写真・映像をもとにしたコラージュや絵画、立体作品など幅広い表現で世界平和を訴えるものだった。

 こうづ氏は、the chordが結成された経緯について、次のように話す。

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左・こうづなかば氏、右・後藤健二氏

「僕自身はかつて世界中で起こっている問題に対する関心も低く、そのために何かをしようという意識はありませんでした。しかし健二に『これは縁だから。僕と出会ったことで、地球上で同時期に起きている問題と繋がったんですよ。江ノ島だろうが栃木だろうが、シリアだろうが、距離は関係ないんです』ということをいわれて、自分がそういう問題について考えて、作品にしても良いんだということに気付きました。また、彼は伝えたいメッセージが確固としてあり、一方で僕はアートを作る技術は持っていたため、おたがいに協力することで新しいものが生み出せるという予感がありました」

 結成が決まってからは話が早く、出会った翌年の2010年はじめには個展会場を押さえ、そこから試行錯誤してふたりで作品を仕上げ、8月には東京・世田谷にて個展[eyes]を開いた。後藤氏は何事に対しても決断して行動するのが早く、shizuka氏も気付けばプロジェクトに参加していたという。

「私はふたりのユニットが始まった当初、第三者として意見をいったりしているだけだったのですが、出会った直後に観てもらったライブを気に入ってもらえたようで、個展のときにも歌ってくれないかと誘ってくれたんです。でも、会場にはピアノもないし、どうするのかと思ったら、後藤さんは『じゃあピアノ用意しよう』っていって、廃校で余っているピアノを探し出してきて会場に持ち込んだんです。時間にルーズなところもあって、どこか飄々としているのですが、そういう行動力はすごくある人でした」

 長崎の原爆資料館で行った展示会では、開催前日に教会を訪れた後藤氏が「聖歌隊も呼ぼう」といい、すぐに現地の聖歌隊とコンタクトを取り、ライブの後にみんなで合唱をした。そのときに歌われたのが、2曲目の「A Daily Prayer」だ。

「この曲の邦題は“わたしをお使いください”といって、とても後藤さんらしい1曲だと思います。自分の身体を使って直接、困っているひとや弱いひとに届けたい、手を差し伸べたいという強い意志を持っていたひとで、彼が抱いていた使命感を象徴していると思います。自分が自分のために生きているのではなく、なにか大きなものに動かされて生きているんだという謙虚さが彼にはありました。彼が残したビデオでは、現地の子どもたちが笑顔を浮かべているのですが、それは彼自身が笑顔で撮影しているからで、そうした行動のひとつひとつに彼の人柄が滲み出ていました」(shizuka)

 ほかの2曲も、後藤氏との思い出が反映された楽曲だという。

「1曲目の『AVE MARIA』は、私がいちばん好きなシャルル・グノーのメロディのもので、the chordの展覧会でいつも最初に歌っていた曲です。3曲目は『Standing On The Promises』も後藤さんが気に入っていた曲で、よく大切なひとに送ったりしていました。宗教色の濃いメッセージ性を持った楽曲ですが、曲調自体は光に溢れていて前向きになれるので、今回の作品にはぜひ入れたかった1曲です」(shizuka)

     
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