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兵庫慎司の「ロックの余談Z」 第5回

海外と日本のバンドの「ドラムの違い」とは? 元アマチュアドラマー兵庫慎司が考える

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 もうひとつ例を挙げる。

 OASISのサポート・ドラムがアラン・ホワイトからザック・スターキーに替わった時、来日公演を観たファンの間では賛否両論だった。否のファンたち曰く、「あんな前のめりで激しくて重たいビート、OASISには合わない」。おそらく、ドラマーとしての世界的な評価はザック・スターキーの方が高いにもかかわらずだ。僕はザック・スターキーのプレイ、大好きなので肯定派だったが、アラン・ホワイトの方がいいというファンの気持ちも理解できた。

 それから、歌う側にしてもそういうものらしい。つまり、すぐれたドラマーであるかどうかと、自分が歌いやすいかどうかは、必ずしも一致しなかったりするらしい。
要は、慣れていないと歌いにくいようなのだ。有名な例としては、80年代中期、桑田佳祐が初めてサザン以外の音楽活動を行ったのはKUWATA BANDだったが、ドラマーはサザンオールスターズの松田弘だった。いや、松田弘、いいドラマーだけど、当時桑田はとうにスーパースターだったわけで、外の凄腕ドラマーもいくらでも呼べただろうに(現にその後のソロ活動ではそうしている)、せっかく初めてサザン以外で音楽をやるのに、ドラムだけは松田弘に声をかけたわけだ。なぜか。おそらくその当時は、松田弘のドラムじゃないと歌えない身体になっていたのではないかと思う。

 そういえばミック・ジャガーがチャーリー・ワッツのことを「俺のドラム」と発言し、それを知ったチャーリー・ワッツが「俺はおまえのドラムじゃねえ」と怒り狂った、というエピソードもある。

 そして、最近の例でいうと、6月17日に初めてのソロ・アルバムをリリースしたDragon AshのKjこと降谷建志、そのソロの時のバンドメンバーが先日発表になったが、ドラムだけはDragon Ashのサクだった。何か、大きくうなずけるものがありました。

 僕は中3くらいから大学を卒業するまでバンドをやっていた。特に大学以降はそれなりに真剣に、プロを目指していた。

 つくづく思う。やめてよかった。あのままやっていて、もし、何個目かのバンドに才能のある奴がいてプロになれることがあっても、デビューの時点でクビになっていただろう。

 実際、僕が高校生だった頃の広島でも、大学生だった頃の京都でも、そういう例をいくつも見た。先輩のバンドがデビューしたらドラマーが代わって見知らぬギターがひとり増えていたとか。対バンのヴォーカルがMCで「東京に行きます! プロになります!」と宣言していて、すごいなあと思ったものの、いざデビューしたらバンド名とヴォーカルだけ残っていてメンバー全員セッション・ミュージシャンになっていた、とか。

 ひでえなあ、音楽業界って恐ろしいなあ、最悪だなあ、と当時は思っていた。しかしその数年後、ロッキング・オン社に入って1年経つか経たないかのうちに、レコード会社からデビュー前の新人バンドのプロモーションを受けてライヴを観たあとに、「これドラム弱くないですか? 今のうちに替えるか切るかしたほうがいいんじゃないですか?」などとのたまっている自分がいた。

 はい。最悪です。

■兵庫慎司
1968年生まれ。1991年株式会社ロッキング・オンに入社、音楽雑誌の編集やライティング、書籍の編集などに関わる。2015年4月にロッキング・オンを退社、フリーライターになる。現在の寄稿メディアはリアルサウンド、ロッキング・オン・ジャパン、RO69、週刊SPA!、CREA、kaminogeなど。
ブログ http://shinjihyogo.hateblo.jp/
Twitter https://twitter.com/shinjihyogo

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