ピエール瀧、なぜ俳優としても愛される? 電気グルーヴにおける役割から考察

 4月18日からスタートするNHKの土曜ドラマ『64(ロクヨン)』で、電気グルーヴのピエール瀧が主演を務めることとなった。

 本作は横山秀夫の人気小説を原作とする刑事ドラマ。瀧は昭和64年に起きた時効寸前の少女誘拐殺人事件についてマスコミに説明する広報官を演じる。

 『64(ロクヨン)』は映画も公開が決まっており、映画では瀧が演じた役を佐藤浩市が演じるのだが、テレビと映画は別モノとはいえ、佐藤浩市とピエール瀧が同じ役を演じる日がくるとは驚きである。

 大河ドラマの『龍馬伝』、『軍師官兵衛』、朝ドラの『おひさま』、『あまちゃん』(すべてNHK)に出演し、大ヒットしたディズニーアニメ『アナと雪の女王』では、喋る雪だるまのオラフの声優を担当したりと、近年のピエール瀧は俳優として活動の幅を大きく広げている。

 なぜ、ピエール瀧は俳優としてここまで愛されるのだろうか。

 ピエール瀧は石野卓球とともに電気グルーヴに所属するミュージシャンだ。結成当初はラジオ番組の「オールナイトニッポン」を筆頭に、バラエティ番組にも出演するお笑いに理解のあるミュージシャンという立ち位置だったが、アルバム「VITAMIN」の発表以降、石野卓球はミュージシャンの活動に専念するようになり、逆にテレビ出演等の芸能活動は、ピエール瀧が担当するようになっていった。

 瀧は、「ポンキッキーズ」を筆頭に多数のバラエティ番組に出演し、映像制作、ゲームソフトのプロデュース、漫画原作など、その活動は多岐に渡っている。

 役者としてテレビドラマに初出演したのは1995年の『カケオチのススメ』(テレビ朝日系)。長瀬智也と永作博美が主演のちょっとHなコメディドラマで、瀧は永作博美の兄役だった。そして、2002年には宮藤官九郎脚本の『木更津キャッツアイ』(TBS系)に出演。シガ二ー小池という詐欺師風の男を演じていた。

 会話の中にサブカルチャーネタがふんだんに盛り込まれたクドカンドラマに出演したことからもわかるように、当時の瀧が映画等で演じる役柄はタレント・ピエール瀧のイメージをなぞるような、胡散臭いおじさんが多かった。

 そんな中、俳優としての実力が大きく注目されたのは樋口真嗣監督の『ローレライ』だ。本作で瀧は、潜水艦の掌砲長を演じたのだが、元野球部という体育会系の血筋もあってか、今時こんなに生粋の帝国軍人を演じられる男がいたのか。と驚かされる見事なハマり方だった。

 『64(ロクヨン)』で主役に起用された理由について「昭和顔だったからだとプロデューサーに言われた」と、瀧は記者会見で語っていたが、『ローレライ』と山崎貴監督の『ALWAYS 三丁目の夕日』で氷屋のおじさんを演じたことで、役者としての幅を大きく広げた。

 近年、大河ドラマと朝ドラの出演が続いているのは、この二作がきっかけだろう。そして、ピエール瀧の現時点でのベストアクトは白石和彌の映画『凶悪』で演じた元暴力団の死刑囚だろう。

 巨体と強面の外見を活かした瀧の演技は犯罪の相棒であるリリー・フランキーと共に不気味な存在感を放っていた。

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