嵐とAKB48、音楽的アプローチの違いは? チャート上位2曲を洋楽の視点で読み解く

 そしてAKB48『ラブラドール・レトリバー』について。メンバー襲撃事件から選抜総選挙まで話題に事欠かないAKB48だが、過熱するメディア報道に比べてあまり語られていないのが、楽曲そのものについて。この曲、かなり良質なポップソングに仕上がっているのである。曲調は60’sモータウン、サウンドはかなり確信的にフィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドを狙っている。ストリングスの音色の選び方も、頭打ちのビートも、あえてのレトロ感。サウンドメイキングもかなり面白い。ヘッドフォンで聴くとよくわかるのだが、ドラム全体が明らかに左に寄っているのである。おそらくモノラル録音の時代を意識したのだろう。昨年の『恋するフォーチュンクッキー』がフィリー・ソウル〜筒美京平の「ディスコ歌謡曲」だとすると、この『ラブラドール・レトリバー』はフィル・スペクター〜大滝詠一の「ナイアガラ歌謡曲」。どちらも「指原期」のAKB48を代表する曲になるはずだ。

 最先端のヨーロピアン・ポップをJ-POP化する嵐に、古き良きアメリカン・ポップへのオマージュを捧げるAKB48。今の日本を代表する2組のアイドルから欧米へのそれぞれ異なった視線を読み解くことができるのが、なかなか面白い。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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