変わりゆくテレビの音楽番組 トーク中心からライブパート重視の流れへ

 テレビ神奈川(tvk)の人気番組『saku saku』が今年の3月28日放送分をもって現体制での放映を終了、13年間の歴史に幕を下ろすことが発表された(筆者註:4月から新体制での『saku saku』が開始されるため、「現体制での放映を終了」と補足表記しました)。『saku saku』はゲストトークとPVコーナーを中心に構成された音楽情報番組。ローカル局制作の番組としては異例の人気を誇り、無名時代の木村カエラを見出したことでも有名な同番組の区切りは、音楽番組「冬の時代」を象徴する出来事のひとつとして記憶されるだろう。そこで今回はテレビの音楽番組にフォーカスを当ててみたい。

『saku saku』の放送が始まった2000年前後はまだCD不況が叫ばれる前、シーンにもまだ牧歌的な空気が漂っていた(日本のCD販売枚数ピークは1998年)。テレビをつければどこもかしこも音楽番組で溢れ、毎日なにがしかの番組が放送されていた。思いつくままに列挙すると『ミュージックステーション』『ミュージックフェア』『ポップジャム』『HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP』『うたばん』『COUNT DOWN TV』『速報!歌の大辞テン』『THE夜もヒッパレ』『MUSIC JAPAN』『LOVE LOVEあいしてる』等々。このうち現在も放送が続いているものは半数にも満たない。

 現存、あるいは過去に存在した音楽番組は大きく分けて3種類に分類される。ひとつは「トーク+ライブ(PV)番組」。『HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP』や『うたばん』、あるいは『saku saku』などもこれにあたる。最もポピュラーな形態の音楽番組だ。ふたつめは「カウントダウン番組」。『COUNT DOWN TV』やCS局の音楽番組でよく見られる、PVをチャート順に流すスタイルの音楽番組。ちなみに前述のtvkが視聴率を伸ばしたのも、いち早くこの手の「カウントダウン番組」を放送するようになったのがきっかけと言われている。最後に「カラオケ番組」。『THE夜もヒッパレ』のような芸能人が歌うものから視聴者参加型まで存在する。

 上に挙げた3つのスタイルのうち、現在も元気なのは「カラオケ番組」のみ。逆に言うと残りのふたつは番組の大小を問わず多くが終了、あるいは「数字が取れない」と喘いでいるのが現状だ。その理由はもちろん「音楽不況」であったり「リスナーの好みの多様化」みたいな話と切っても切れない、卵が先か鶏が先かといった類の話になる。たとえば「トーク+ライブ(PV)番組」の場合、制作側はできるだけメジャーなミュージシャンをブッキングしようとする。編成を納得させるには「オリコン1位」「ミリオンセラー」といったキャッチが必要で、ゲストが「何を話すか(その内容が面白いか)」よりも「誰が出演するか」の方が重要だ(ここら辺は音楽誌の売上が内容よりも表紙に左右されることに似ている)。しかしこのご時世、チャートの上位を占めるのはジャニーズとAKB48、アニソンが大半で、以前のように毎週入れ替わりにニューカマーが登場することはほとんどない。そもそもある程度の知名度、編成的にゴーサインの出せるミュージシャンの数が極端に減った。ブッキング対象が限られると、自然に番組自体が硬直化していく。結果、視聴者離れが起き、音楽番組からヒット曲が生まれない、ヒット曲がないから番組が広がらない……という悪循環が見られるのだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「音楽シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる