「物語性の先に辿りつきたい」でんぱ組.incのプロデューサー・もふくちゃんが語るアイドル論

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でんぱ組.incアーティスト写真

 でんぱ組.incのプロデューサーで株式会社モエ・ジャパン代表の“もふくちゃん”こと福嶋麻衣子氏が、でんぱ組.incと自身のプロディース手法について語る集中連載第1回。でんぱ組.incが昨年リリースした『W.W.D』は、ひきこもりやいじめといったメンバーの過去を描き出して話題を呼んだ。しかし、でんぱ組.incの産みの親であるもふくちゃんにとって、『W.W.D』は必ずしも想定していた作品ではなかったという。その続編となる『W.W.DⅡ』のリリースを10月2日に控える今の率直な気持ちを聞いた。インタビュアーは、もふくちゃんの出演するラジオ『妄想科学デパート AKIBANOISE』(TOKYO FM)も担当する放送作家・エドボル氏。

――『W.W.DⅡ』がいよいよリリースされますね。先日の日比谷野外音楽堂のライブのMCで古川未鈴ちゃんが「ヒャダインさんから『これは今しか歌わせられない』というお話を聞いた」ということを言っていましたが。

もふくちゃん(以下、もふく):これは個人的な意見なんですけど、実は「W.W.D」シリーズに自分としても不安な部分があったんです。というのも、私は気質的に古いタイプのオタクなので、「あまりアイドルにそういうことをさせたくない」という思いがあって。だから、ヒャダインさんとスタッフを信じて、勇気を出して発表した、という感じですね。

 私はアイドルファンとして、ハロー!プロジェクト(以下、ハロ)の洗礼を受けています。だから「アイドルとは、こういうものだ」という思いが、どうしてもある。また個人的な楽曲の趣味としては「Sabotage」や「でんでんぱっしょん」といった怒ってるぞ、とか、ハッピーだぞ、っていうわかりやすいアッパーな曲が好きっていうこともあり。

 でも、それだけではどうしてもお客さんがついてこない、というジレンマを抱えていて。そんなときに、ヒャダインさんに歌詞を含め曲を書いていただいたんですけど、トイズファクトリーの社長も含めて、スタッフみんなが「これはいいね」と推した。私は最初ちょっとアイドルファンとしては、歌詞に赤裸々な内容が入るのに抵抗があったんですが、ヒャダインさんを始めスタッフみんなの意見を信頼して「W.W.D」をリリースするに至ったんです。

 「みんなは、でんぱ組.incをどう見ているか?」という第三者的な意見を聞いて作っているのが、「W.W.D」シリーズ。そういう意味では、いちばん戦略的な作品と言えるかもしれません。

――ハロは、『ASAYAN』などのテレビ番組で裏の事情や物語性を打ち出すことはあっても、楽曲にはフィードバックしていないですよね。AKB48からは、楽曲にそのとき起きている物語そのものがフィードバックされるようになった。でんぱ組.incはその中で揺れていて、だから「W.W.D」がウケたのかもしれません。

もふく:物語性のある歌詞を歌えるアイドルというのが今は少ないんだろうな、とも考えています。でんぱ組.incはメンバーそれぞれがいろいろなものを抱えている。今のアイドルシーンの流れ的に、それを表に出すのはアリなんでしょうね。というか、それを武器にするしかないと感じています。

――実は僕も「W.W.D」より、「でんでんぱしょん」のような楽曲のほうが好きなんです。パフォーマンスする側の気持ちとしてはどうなんでしょうか?

もふく:パフォーマンスする側にとっては、やっぱりつらいと思うんですよ。彼女たちの偉いところは、それでも「歌いたくないです」とは主張しないこと。立場的にできない、とも言うんですけど(笑)。でも、泣きながらでもクリアしていく姿は、やっぱりアイドルだなと思いますね。

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