無原唱レコード・松永依織が語る“6年間の軌跡” 全力で走り抜けた日々を振り返るラストインタビュー
制作してきたアルバムの数々と、もっとも思い出深い作品
――初のアルバム『White Reflections』を制作したときのことを振り返っていただけますか?
松永:『White Reflections』は、それまでに発表した楽曲を収録し、表題曲の「Crossed Identity」を制作したアルバムでした。そのなかで特に印象に残っているのは、「フルスロットル!!!!!!」を再録したことです。
「フルスロットル!!!!!!」を最初に収録したのは、デビューから1、2年ほどの、現在よりも歌が未熟だったころでした。当時は当時で本当に一生懸命歌っていたので、その歌を踏まえながら、再録ではどのように表現するかを考えました。ただ、成長したことで、逆に昔と同じ歌い方ができなくなっていたんです。そこは、先ほどお話ししたブレスの変化などにもつながっていると思います。
結果的には、さまざまな経験を重ねた“ちょっとだけ大人になった私の「フルスロットル!!!!!!」”になりました。歌い方や表現は変化していても、根本にある思いは変わっていない。そういうことが伝わる楽曲になったと思います。
――『White Reflections』以降、アルバム制作に対する意識は変わりましたか?
松永:最初のアルバムは、既存のオリジナル曲を集めて、そこに表題曲を加える形でした。その後は次のアルバムやライブを見据えて、「どのような役割の曲が必要なのか」を考えるようになったと思います。シングルではロックを続けながら、MVを制作しないアルバム曲では「アルバムだからこそ、こういう音楽にも挑戦してみよう」と考えることもありました。
――アルバム制作はどちらかというとチャレンジをする機会みたいな感覚だったんですね
松永:アルバムだからこそできる、少しチャレンジングな楽曲を作ろうという方向性はありましたね。いろんな話し合いのたびに、ライブでもアルバムでも、必ず何か新しいことに挑戦したい気持ちを伝えていました。アルバムのなかで作詞に挑戦したことも、その一つです。
――活動を通してさまざまな楽曲を発表してきましたが、「松永依織というアーティストを最も表している曲」と、「活動を振り返るうえで最も思い出深い曲」を選ぶとしたら?
松永:どちらにも当てはまるので迷いますが、松永依織というアーティストを最も表しているのは「フルスロットル!!!!!!」で、最も思い出深いのは「Awaken Now」です。ただ、逆にしても成立すると思います。
「フルスロットル!!!!!!」には、ファンのみなさんに対する思いや、私という人間の根本にある気持ちが詰まっています。自分自身、6年間を通してずっとフルスロットルで活動してきたという自覚があるので、私にとって外すことのできない曲です。
――なるほど。
松永:「Awaken Now」は、「松永依織のロックといえばこの曲」と思ってもらえるような存在になりました。これまでさまざまなライブで歌ってきて、おそらく披露した回数も一番多い曲です。いろいろな場所で一緒に会場を盛り上げてきたので、たくさんの思い出があります。
もちろん、ファンの方によって印象深い曲はそれぞれ違うと思います。たくさんの楽曲があるなかで、一人ひとりにとって大切な曲が生まれていることもうれしいですね。
本番の1カ月半前に開催が決まった初ワンマンライブ
――続いて、ライブ活動について伺います。難しいとは思うんですが、これまでやられてきた数あるライブの中からあえて一つ選ぶとしたら、どの公演が最も印象に残っていますか?
松永:難しいですね。どのライブにも思い入れがあります。そうですね……あえて選ぶなら、やはり人生で初めてのワンマンライブ『フルスロットル』ですね。開催が決まったのは、本番の1カ月半弱前だったと思います。今では想像できないくらい短い準備期間でした。
実はその少し前、「私はこのまま活動を続けていけるのか」と悩んでいて、一度区切りをつけることも考えていたんです。ちょうどそのタイミングで、当時のプロデューサーさんからワンマンライブのお話をいただいたんです。ものすごく悩みましたが、ワンマンライブはずっと抱いていた夢だったので、「もう少し頑張ってみよう」と決めました。
――なんと1カ月半前にワンマンをやると.....?
松永:そうなんですよ(笑)。しかもそれまで一人で何十曲も歌うライブを経験したことがなくて、何をどう練習すればいいのかも分からなくて。しっかり踊りながら歌う曲もあって、振り入れも1、2週間ほどで覚えたと思います。当時は現在よりも体力がなかったので、ダンスレッスンのたびに筋肉痛になるのが当たり前でした。初めて筋肉にいいサプリを飲んだことも覚えています(笑)。
体力の配分も分からなかったので、最初から最後までずっと全力でした。今も全力で歌うことは変わりませんが、当時は力を温存する方法を知らなかったんです。緊張も今以上に強くて、ライブになると声を出しすぎてしまうなど、本番だからこそ現れる自分の癖にも気づいていませんでした。対処法も分からないまま、とにかくやるしかないという状態でしたね。
――実際にライブは楽しめましたか?
松永:もちろんライブ中も楽しんではいましたが、終演後にみなさんの感想を見て、ようやく「私はワンマンライブをやったんだ」と実感し、達成感が湧いてきました。
当時はライブが終わった日の夜に、打ち上げ配信もしていたんです。そのとき、達成感が大きすぎて何も言葉にできないという感覚を、人生で初めて味わいました。「うわー!」としか言えなかったんですけど、その瞬間がものすごく気持ちよかったことを覚えています。
――そのワンマンライブが、活動を続けようと思うきっかけになったのでしょうか?
松永:そうです。あのライブがあったからこそ、現在の私があります。準備期間が短かったことも、結果的にはよかったのかもしれません。最初のワンマンライブは、それくらい自分にとって大きな出来事でした。
――これまでのライブにおいて、セットリストや演出には、松永さん自身も携わってきたのでしょうか?
松永:そうですね。スタッフさんとミーティングをしながら、歌いたい曲などは自分でも決めていました。回数を重ねるごとにやりたいことが増えていったというより、それぞれのライブで異なるコンセプトを決めて、その公演だからこそ実現したいことを考えていました。
たとえば『Awaken Now』では、初めてバンドと一緒にライブができるので、ロックを中心とした構成にしたいと考えました。『PRISM SHAKE』は二部制だったので、それぞれの部で何を見せたいかを考えるなど、ライブごとに挑戦したいことがありました。ありがたいことに、本当にたくさんのライブを経験させていただきました。
恵まれた環境・チーム・リスナーへの感謝と、卒業を決めた覚悟のワケ
――ここからは卒業について伺います。卒業を意識し始めたのは、どのようなタイミングだったのでしょうか?
松永:こうしてきちんとお話しするのは、今回が初めてかもしれません。4周年から5周年を迎えるまでの間に、本当に少しずつ意識するようになりました。
当時もリスナーさんやスタッフさんに恵まれていて、とても幸せに活動していました。もちろん、それは現在も変わりません。ただ、心のどこかに「このままでいいのかな」という漠然とした不安が生まれていたんです。何か悪いことがあったわけではなく、あえて言うなら、少し生温かい場所にいるような感覚だけがあったというか。
ちょうどそのころは、会社もリブランディングをしていた時期で。会社が変わろうとしているなかで、自分はこの場所でどのように頑張っていくのか、それとも違うことに挑戦するのか。周囲の変化と重なるように、自分の人生について考える時間が増えていきました。
――恵まれた環境にいたからこそ、決断するまでには大きな葛藤もあったのではないでしょうか?
松永:そうですね。今振り返っても、「どうして卒業するの?」と思われるくらい、本当に恵まれた環境だったと思います。
「自分の成長のために」と言うと、現在の環境やリスナーさんを大切にしていないように受け取られてしまうことがあって、あまり言いたくないのですが……。でも、決してそういうことではないんです。
このまま恵まれた環境にいると、自分はそこに甘えてしまうかもしれない。だからこそ、覚悟を決めて環境を変えなければいけないと思ったんです。ただ、本当にたくさんの葛藤がありました。
――卒業を発表してから約9カ月が経ちました。この期間を振り返って、どのように感じていますか?
松永:「もう9カ月も経ったんですか?」という感覚です。本当にあっという間でした。
卒業を控えているとは思えないくらい、この9カ月間もたくさん活動させていただきました。卒業が決まっているなかで、これほどさまざまなことに挑戦させてもらえるのは、本当にありがたいことだと思っています。
目の前にあることへ必死に取り組んでいたら、気づいたときには9カ月が経っていました。「来月は少し落ち着くかな」と話していても、いつの間にかその翌月まで終わっているような毎日でしたね。
――フェス『RE;GAIN』やEPのリリース、ラストライブなどもあり、最後まで駆け抜けるような活動が続いています。卒業を意識して、これまでと変えたことはありますか?
松永:基本的には、これまでと変わらず一生懸命取り組んでいます。ただ、最後だからこそ、やりたいことはすべてやりきって終わりたいという気持ちはあります。
どれだけ忙しくても、やりたいことを残したくなかったんです。だからコラボMVも公開しましたし、以前からやりたかった配信企画なども詰め込みました。
――6年間の活動を振り返って、やり残したことや後悔はありますか?
松永:細かいことなら、いくつかあります。活動を始めたころから夢見ていたアニメの主題歌もそうですし、もっとたくさんライブもしたかったです。チャンネル登録者数20万人にも、おそらく届かずに終わってしまいます。
そうした心残りはありますが、ものすごく大きな後悔があるかと聞かれると、そこまではないと思います。
「積み重ねたすべてをぶつける」——ラストライブに向けた意気込み
――ラストEP『Timeless Beats』は、どのような作品に仕上がっていますか?
松永:「最後だからこうしよう」と考えて作った作品ではないんです。最後まで新しいことに挑戦したいという気持ちがあって、今回のEPでもラップなど、これまでにない挑戦をしています。そして、『Timeless Beats』という名前には“松永依織の鼓動はこれからも鳴り続ける”というメッセージを込めています。「鼓動」という言葉には歌声だけでなく、自分自身の心音や生命という意味も重ねていて、未来へ向かっていく作品として制作しました。
また、これまで私の楽曲を作詞・作曲してくださった方々に、改めて参加していただいている曲も多いです。本当は10曲ほど収録したアルバムを作れたらよかったのですが、9月末までという限られた時間もあり、6曲入りのEPという形になりました。そのなかで楽曲のバランスを考えながら、今やりたいことを詰め込んだ作品になっています。
――ラストライブ『Last Moment』は、どのような公演になりそうですか?
松永:オリジナル曲を披露することは発表していますが、何曲歌うかまでは明かしていません。ここで言ってしまうと、最後なので、“ある意味”では全曲歌います。
これまでのワンマンライブでも、毎回新しいことに挑戦してきました。『Awaken Now』では初めてバンド編成でワンマンライブを行い、『Diversity』では初めてオリジナル曲だけでセットリストを構成しました。
今回は、オリジナル曲のみの構成を生バンドで披露するという、これまでにないライブになります。生バンドだからこそできる演出も計画しています。
――ラストライブを通して、これまでの活動の何を残し、観客へ何を届けたいですか?
松永:終わりが決まっているからこそできるライブにしたいです。自分自身はもちろん、会場に来てくださる方や配信で見てくださる方、スタッフさんなど、関わってくださるすべての人の胸に残り続けるライブにしたいと思っています。
素晴らしい作品に出会ったあと、何カ月もその余韻を引きずることがあるじゃないですか。『Last Moment』も、みなさんにとってそのようなライブになってほしいです。
ただ、ライブが終わったあとに、悲しさや寂しさはなるべく残したくないなと思っています。最後のライブなので、どうしてもそう感じてしまうことはあると思います。それでも最後には、「ここまで応援してきて良かった」「今日来てよかった」などのあたたかい想いや、松永依織という存在そのものを胸に残してもらえたらうれしいです。
――最後に、ラストライブへ来てくれるファンのみなさんへ、メッセージをお願いします
松永:ラストライブは、最後の一瞬まで全身全霊で届けます。
ここまで一緒に走ってきてくれたみんなの思いも、これまで積み重ねてきたすべても、全部このステージにぶつけます。大切なこの瞬間を、松永依織の音楽を、魂に刻みつけてほしいです。
最後まで一緒に、最高の景色を作ろうね!
――この記事を、松永さんの卒業後に初めて読む人もいると思います。未来の読者へ伝えたいことはありますか?
松永:この6年間、たくさんの方に愛され、支えていただきながら、常にフルスロットルで駆け抜けてきました。この6年間で表現できる「松永依織」のすべては、きちんと作品として残せたと思っています。
ラストEPも、私の活動が終わったあとまで長く聴き続けてもらいたいと願いながら、魂を込めて作りました。この記事を読んでいるのが私の卒業後だったとしても、松永依織の音楽が何かの支えになったり、頑張るための力になったり、毎日のちょっとした楽しみになったりしていたらうれしいです。
未来でも、私の音楽が誰かの心を少しでも動かしていることを願っています。
■ライブ情報
公演タイトル:IORI MATSUNAGA the LAST LIVE『Last Moment』
日程:2026年9月20日(日)
時間:開場 16:30/開演 17:30/終演 19:30(予定)
会場:SUPERNOVA KAWASAKI
〈チケット情報〉
現地チケット:完売
配信チケット価格:5,500円
配信チケット販売終了日:10月4日20:59
アーカイブ終了日時:10月4日23:59
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