「マイナアプリ」始動、「マイナポータル」と「デジタル認証アプリ」が統合されてリニューアル その背景とメリットとは?

 8月25日から「マイナアプリ」の提供が開始される。従来まで「マイナポータルアプリ」と呼ばれていたもののアップデート版にあたり、これまで別提供が行われていた「デジタル認証アプリ」を統合する形でリニューアルした。その特徴とメリットとは。

 デジタル庁が提供する「マイナポータルアプリ」が8月25日にリニューアルされ、「マイナアプリ」に生まれ変わる。マイナポータルアプリは個人向け行政サービスの総合的窓口である「マイナポータル」に、マイナンバーカードを使ってアクセスするためのアプリだが、これまで別アプリとして提供が行われていた「デジタル認証アプリ」の機能が統合され、1つのアプリとして使い勝手が向上した点に特徴がある。使い方やその背景を説明する前に、まず「マイナポータルアプリ」と「デジタル認証アプリ」について復習しておきたい。

そもそも「マイナポータルアプリ」とは

 マイナポータルは医療費や薬、税や年金といった自身に関する情報の確認のほか、引っ越しやパスポート申請、各種給付手当の手続きなど、行政にまつわるさまざまなやり取りを自治体窓口まで出向かずともモバイル端末等で行えるサービスだ。各自治体や厚生労働省など組織ごとに分散して管理されている情報にマイナンバーカードを使って一元的にアクセスできる仕組みということで、「ポータル(Portal:入り口の意)」と呼んでいる。

 マイナンバーカードを基に本人確認を行い、分散して存在しているデータに対してマイナンバーカード内の電子証明書に紐付く情報を引き出しているため、マイナポータルへのアクセスにはマイナンバーカードが必須だ。このマイナンバーカードをスマートフォン上で読み取り、本人確認のうえマイナポータルへと橋渡しを行うのがマイナポータルアプリの役割だ。デジタル庁によれば、今年2026年7月末時点で7941万以上のダウンロードが行われているという。

マイナポータルアプリはマイナポータルへとアクセスするためのアプリ

 なお、マイナポータルアプリでは毎回マイナンバーカード用意と4桁数字の暗証番号(PIN)入力を毎回求めることになるが、スマートフォン上にマイナンバーカードの機能を登録しておくことで、マイナンバーカードやPIN入力は不要になる。例えば「iPhoneのマイナンバーカード」では、ログイン時に登録済みのマイナンバーカードを利用することで、Face IDやTouch IDといった生体認証を行うだけでそのままマイナポータルに入れる。Androidでも同様で、マイナンバーカード搭載に対応した機種をお持ちの方なら便利なので登録しておくといいだろう。

活用広がる「デジタル認証サービス」

 マイナポータルがマイナンバーカードを使って行政情報やサービスにアクセスするための仕組みだとすれば、デジタル認証アプリで利用可能な「デジタル認証サービス」は、官民が提供するサービスに対してマイナンバーカードを使っての本人確認や署名を行うための仕組みだ。自治体の施設予約や地域通貨の利用、図書館の貸し出し管理、銀行口座開設、そのほか民間企業の各サービスにおける本人確認など、マイナンバーカードの持つ認証・署名の仕組みを官民両方が取り込んで利用できる外部利用を想定したサービスと考えていい。

 例えば銀行口座をオンライン上で開設したいと考えたとき、犯罪収益移転防止法(犯収法)の観点からマイナンバーカードや運転免許証のような住所確認が可能な公的身分証の提示が必要になるが、マイナンバーカードを使って本人確認をする場合にデジタル認証サービスは利用されることになる。銀行によって異なるが、場合によっては情報入力の過程で電子署名が必要になり、この際にデジタル認証アプリが呼び出され、マイナンバーカード本体またはスマートフォン上のマイナンバーカード機能に搭載された電子署名用の電子証明書を使って処理が進む。筆者の場合、毎年年度末に確定申告を行っているが、会計ソフトから確定申告書類を送信する際、デジタル認証アプリを使って電子署名を行っている。デジタル認証アプリ自体は今年7月末時点で761万以上のダウンロードとマイナポータルアプリに比べればその数は控えめだが、これは必要に迫られない限りインストールする機会が少ないからだと思われる。両アプリが統合されることで、活用の場がさらに広がるのではないかと予想する。

デジタル認証サービスを活用する際の流れの例

 このデジタル認証サービスだが、最近になり活用するサービスが急増している。今年8月末時点でこのサービス利用の申込数は1000件を超えており、これは前年同月比約500%増の水準だとデジタル庁では説明している。その理由として、ふるさと納税関連で導入自治体が一気に増加したこと、今春スタートした東京都アプリでの利用増、ポケモンカード関連サービスで本人確認利用が進んだことなどを挙げている。

 また興味深い活用事例として、ネットサービスにおけるアカウントのリカバリー用途での活用が増えていることが挙げられる。近年ではより安全なログイン手段としてパスキー(FIDO認証)の利用が進んでいるが、デメリットの1つとして端末の紛失や故障でパスキーを失った際にアカウント復旧のための本人確認をオンライン上で行うのが難しく、ここでマイナンバーカードのデジタル認証サービスを活用することでリカバリー処理の自動化が可能になった。従来であれば電話をかけて口頭で登録済み情報を伝えて照合するなどの手間があり、コールセンターの対応要員の確保を考えればコスト的にも時間的にも事業者とユーザーの双方にメリットがある。

デジタル認証サービスの利用状況の推移

「マイナアプリ」に統合のメリットと実際の利用方法

 そんな2つのアプリが今回統合されることになったわけだが、なぜ当初は2つのアプリがバラバラに提供され、このタイミングで統合が実現したのか。理由はアプリの開発体制にある。マイナンバーカードはもともとデジタル庁が管轄する事業ではなく、総務省の事業の一部として開発が進められていた。そのため、マイナポータルにアクセスするためのマイナポータルアプリも総務省の管轄であり、アプリ開発は外部委託に委ねられていた。この開発スタイルの問題は、機能追加や変更のたびに外部発注が発生することで、いわゆる「アジャイル開発」と呼ばれるようなユーザーの声や反応を開発にフィードバックしつつ改善を進めていくようなスマートフォンアプリの世界の文化とは相性が悪い点にある。

 デジタル庁の正式発足は2021年だが、デジタル認証アプリについてはデジタル庁での内製開発により2024年にデビューしている。マイナポータルアプリはJPKIというマイナンバーカードを使った本人確認の仕組みを採用しているが、この仕組みは一般的なインターネットの認証方式とは異なり、専用のアプリや通信モジュールが必要となるため、Webの標準的な仕組みだけでサービス事業者が自社のサービスにそのまま組み込むことは難しかった。そこで、標準的なOpenID Connectという仕組みを採用する形で認証専用アプリとして誕生したのがデジタル認証アプリということになる。もともと外部ベンダーに依頼して作成していたマイナポータルアプリは、デジタル庁側で解析や検証を含めて既存のものを修正するのは難しく、別アプリでの提供を行ったというのが背景だ。だが今回、iPhone版とAndroid版の両方でデジタル庁内でのアプリ開発100%内製化を行ったことにより、両アプリの統合が可能になった。

8月25日からスタートする新「マイナアプリ」は従来まで別々だったアプリを100%内製化により統合に成功

 新「マイナアプリ」の使い方だが、すでにマイナポータルアプリを導入しているのであれば、8月25日以降のアプリ更新で自動的に新「マイナアプリ」に移行される。注意点としては、新アプリでの初回起動時のみ利用登録が必要で、マイナンバーカードを用意して4桁のPIN入力を行う必要がある。当該スマートフォンにマイナンバーカード機能が登録されている場合は、生体認証でそのまま利用登録が可能なので、マイナンバーカード本体やPIN入力は必要ない。なお、デジタル認証アプリについては8月25日時点で利用できなくなり、仮に何かのサービス利用時にデジタル認証アプリの呼び出しが行われた場合は、同アプリの代わりに新「マイナアプリ」が優先して起動するようになっている。

マイナアプリ起動時の画面
マイナアプリで利用可能な機能

 もう1つの注意点として、今回の新「マイナアプリ」では“端末ロックが必須”となっている。端末ロックが設定されていない場合はマイナアプリ自体が起動できないので気を付けたい。このように端末ロックが必須になったことで得られるメリットとしては安全面以外に、「マイナポータルからのお知らせをプッシュ通知で内容確認できる」というものがある。従来まではプッシュ通知があっても「お知らせがきた」という事実しか分からず、内容はマイナポータルにログインするまで不明だった。端末ロック必須化により本人以外がプッシュ通知の内容を直接確認できなくなったため、セキュリティ対策上から「通知の内容は知らせない」という方針が緩和され、そのあたりの二度手間が軽減されている。プッシュ通知そのものも改良が加えられており、今後は通知のタイトル部分でどのカテゴリの内容かを判断できるよう工夫していくようだ。

マイナアプリでは端末ロックの設定が必須に。設定しない限りアプリが起動しない

 また移行の暫定措置として、スマートフォンのアプリストアにおいて旧名のマイナポータルアプリの名前が併記されるほか、アプリアイコンに従来のデザインであるマイナちゃんの図柄を期間限定で配している。理由として、自動アップデート等で8月25日以降にアプリアイコンのデザインがガラリと変化した場合にユーザーが戸惑う可能性を考慮して、しばらくは目印となるマイナちゃんを配置していくことにしたとデジタル庁では説明する。

移行期間の暫定措置として、アプリストアでは旧名を併記しつつ、アプリアイコンでは旧デザインに描かれていたマイナちゃんを期間限定で配置している

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