いよいよ日本展開となる「Samsung Wallet」とはどんなサービスなのか?

世界ではすでに広く提供されていた「Samsung Wallet」がついに今冬に日本上陸。最後発のウォレットサービスとなるが、どんな特徴があるのかを読み解きたい。
日本のキャッシュレス決済比率は2025年時点で4割程度とされるが、近年このキャッシュレス決済を支え、活躍しているのがスマートフォンから利用できるデジタルウォレットだ。Apple WalletにGoogle Walletと、日本国内で先行するサービスはすでに一定の利用者を獲得しているが、そこに最後発として上陸した「Samsung Wallet」はどのようなメリットがあり、今後先行するライバルらに対抗していくのか。
Samsungの提供するデジタルウォレット「Samsung Wallet」が2025年2月25日より日本国内でのサービスを開始。2021年以降に発売された同社のGalaxyスマートフォンで、Android 14以上のバージョンであれば、アプリストアのGalaxy Storeを通じてWalletアプリを入手可能だ。25日から順次利用可能なユーザーの範囲を広げ、28日には対象の全機種で利用可能になる。

同サービスは2015年に米国でのApple Payの提供に続く形でGalaxyスマートフォンを対象に、「Samsung Pay」の名称で米国ならびに韓国での提供が開始されたのが始まりとなる。クレジットカードやデビットカードをスマートフォン内に登録し、オンラインでの支払いや、店頭でのNFC機能を使った支払いが可能という点はApple Payと同様だが、1点だけApple Payにはない特徴を備えていた。それがMST(Magnetic Secure Transmission)と呼ばれる機能で、店頭での支払いをNFCではなく、クレジットカードの読み取り機にある磁気カードを擦る部分にスマートフォン本体を近付けることで、擬似的にクレジットカードを実際に擦ったときと同様な磁気信号を送ることで支払いを可能にするというもの。2015年当時は米国でも韓国でも、NFCを使ったクレジットカードのタッチ決済の端末は小売店でそれほど普及しておらず、磁気カードしか対応していない決済端末であってもGalaxyスマートフォンさえあればカード不要で支払いが行えるという優位性があった。

とはいえ、これもすでに10年前の話。キャッシュレス決済は世界で大きく変化しており、セキュリティ強化のためクレジットカードはICチップ搭載が当たり前となり、ICチップ搭載のカードを端末に差し込んで暗証番号を入れたり、小額な支払いについてはタッチ決済でよりスムーズに支払う形が主流となっている。併せて、磁気カードによる支払いは取り扱わない、あるいは拒否するという小売店も増えている。現在、Samsung Walletは世界30ヶ国以上で展開されているが、結果としてMSTが引き続き利用可能なのは韓国のみにとどまっており、サービスとしてはApple WalletやGoogle Wallet同様にNFC+オンライン決済の利用が中心になっている。
しかも、GalaxyスマートフォンはAndroidがベースであり、当然ながら同様の機能を提供するGoogle Walletも利用が可能だ。特に日本国内ではGoogle Walletがすでに存在しており、後発のGalaxyのみで利用可能なSamsung Walletはどのように対抗していくのか。その特徴や狙いをみていく。
ロック画面からすぐに起動できる
現状で、Samsung Wallet最大の特徴と呼べるのがこれだ。ロック画面であっても、画面下方向からスワイプすることでSamsung Walletをすぐに起動できる。通常、スマートフォン向けのデジタルウォレットはアプリとして提供されるため、いったんロック画面を解除してホーム画面からアプリを選択……という手順を踏んで起動することになるが、Samsung Walletが有効化されている場合はロック画面からいきなり起動できるメリットがある。特に支払いの場面において、カード券面やポイントカードを提示するのに手間取った経験がある方は少なくないかと思うが、Galaxyスマートフォン上でGoogle Walletを利用する場合と比較したときの優位性はここだろう。ハードウェアを提供するSamsungが独自にセキュリティ機構を含むサービスを提供しているから可能な点で、Apple Payの位置付けに近い。

統一UIにクレカとQRコード決済を集約
スマートフォン上のデジタルウォレットの特徴として、複数のカードを1つの端末内で一括管理できる、文字通りの「デジタルな財布」という点がある。支払いの場面であればクレジットカードやポイントカードだろうし、飛行機に乗るときは搭乗券、相手に身分証の提示を求められた場合には運転免許証など、およそ財布に入れておけるようなものであれば、だいたいデジタルウォレットに集約可能だ。しかも、それらを統一されたUI・UXで管理したり、呼び出せるというのが特徴だとサービスの紹介にあたったサムスン電子ジャパン GTM Group MX事業本部 営業革新Team課長の山崎慶子氏は説明する。
支払いについては、競合となるApple WalletやGoogle Walletがクレジットカードあるいはデビットカードの登録にとどまっているのに対し、Samsung WalletではQRコード決済のPayPayも「カード」として登録しておくことができる。インドなど一部のSamsung Wallet提供国では同様のコード決済サービスが利用可能だが、PayPayを組み込んだのは日本独自の取り組みだ。ただし利用スタイルとしては、選択したPayPayのカードから「バーコードを表示」「スキャンして支払う」のボタンを選択することでPayPayアプリが起動し、実際の支払いはそちらから行うというスタイルとなる。カード内に直接バーコードを表示させたり、スキャンによる支払いが行えないのは、「PayPayの決済音や各種のアプリ内での動作が支払い確認における重要な要素になっている」(サムスン電子ジャパン)とのことで、今回は支払い機能をSamsung Walletに直接統合するのではなく、素早く起動するためのギミックにとどめたという理由のようだ。

もう1つ、興味深い機能としては飛行機の搭乗券をSamsung Wallet内に格納する仕組みが挙げられる。現状で大韓航空など、5つの航空会社はSamsung Walletに標準対応しており、Webやアプリの搭乗券の確認画面から直接Wallet内に格納して2次元コードを表示させたり、ゲートや出発時間などアップデートがあった場合に搭乗券にリアルタイムに情報が反映される。また未対応の航空会社であっても、PDFなどで発行される搭乗券のコードをSamsung Walletに読み込ませることで、そこに含まれる航空会社や当該便の情報を自動認識してカードに強制的に登録する機能がある。前述の自動アップデート機能はないものの、スマートに移動したいと考えている旅行者には、Galaxyスマートフォン1台あれば手軽に搭乗ゲートを通過できる。
最後発のSamsung Walletは市場をどう攻略する
このように多少の優位点はあったとしても、25日のサービス開始時点ではオリコ発行のMastercardのみが対応という状況で、その他の三井住友カードや三菱UFJデビットカード、JCBカードなどは開発がサービスインに追いついておらず、3月以降の順次提供となっており、最後発ゆえの有利不利もあり、正直なところ当面はなかなかに厳しい戦いを強いられると予想される。ただ、Google WalletそのものはAndroidスマートフォンを購入しても標準では搭載されておらず、GalaxyスマートフォンをSIMフリー版で購入した場合はGalaxy StoreからSamsung Walletアプリをダウンロードするためのリンクがホーム画面上に提供されているため、ここで初めてデジタルウォレットの存在を知ったファーストユーザーを取り込める可能性はある。
もともと、日本国内で後発ながらSamsung Walletを提供するに至ったのは「同サービスを広く展開するという韓国本社のグローバル戦略の一環」であり、Galaxyスマートフォンを売り込むための味付けとしてデジタルウォレットの拡充を行ったという流れだ。実際のところ、Apple Payなどのスマートフォンのデジタルウォレットを主に活用しているのは30-50代の社会人世代であり、それ以外の層にとってはデジタルウォレットそのものの知名度が低いのが現状。ゆえに、市場を広げる意味でもSamsung Wallet、ひいてはデジタルウォレットの存在をそれ以外にアピールし、知名度を高めていくことが重要となる。

認知向上と顧客獲得に際し、この手のサービスではお馴染みの登録キャンペーンが実施されている。1つめはオリコカードのもので、5月31日までの対象期間中にSamsung Walletに当該カードを登録すると500オリコポイントが進呈される。2つめはVポイントで、先着2万5000名限定でVポイント利用手続きを行うことで200ポイントが進呈される。3つめは3月1日からの開始となるが、PayPayを登録することで先着10万名に抽選でPayPayポイントが最大1万円分進呈される。
Samsung Walletが利用可能なGalaxyの対象機種は2021年以降のモデルとなっているが、既存ユーザーの数はそれなりにいると思われるので、ぜひこれを機会にいちど最新サービスを体験してみてほしい。
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