ソニック35周年ライブは“ロックでシンフォニックな祝祭”だった バンド&オーケストラ&ボーカルと奏でたステージを振り返る

 2026年で35周年を迎えた「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」。ゲームとしてのファンはもちろんのこと、キャラクターたちはその枠を超えて愛されており、さらにその魅力を立体的なものにしているのが、国内外に多くのファンを抱えるシリーズの「楽曲」たちだ。ソニック35周年ライブは“ロックでシンフォニックな祝祭”だった バンド&オーケストラ&ボーカルと奏でたステージを振り返る。

 先日はセガの瀬上純にインタビューを行い、そんなソニックの楽曲史を振り返ってもらったが、去る6月28日には、シリーズの35周年を祝うライブ『SONIC - LIVE! A Musical Odyssey of Sonic the Hedgehog』が昭和女子大学人見記念講堂で開催された。本稿では、シリーズの35周年を飾るに相応しい“ロックでシンフォニックな祝祭”だった同公演を振り返っていきたい。

原曲の力とクリエイターの存在を実感した、特別な一夜

 会場に入ってまず驚いたのは、この日の客層の幅広さ。シリーズの最初期に子供時代を過ごしたであろう世代から、その時は生まれてもいなかったような若年層までが集い、さらに国籍や性別も多様と、あらゆるボーダーを超えるソニックの影響力を開演前の時点から改めて思い知らされたのであった。

 各々がグッズを身につけて準備万端のなか、開演時刻となり暗転したステージ上のスクリーンには、ソニックシリーズの35周年を振り返る映像が流された。シリーズの歴史と観客の想いがクロスオーバーするなか、ステージにはバンマスの瀬上をはじめ、バンドメンバーの椿本匡賜(Gt)、山本淳也(Dr)、櫻井陸来(Ba)、池田善哉(Key)と、コンマスの大島理紗子、サックスの中村有里をはじめとしたオーケストラも登場し、公演がスタートした。

 最初の楽曲は「STH1 Green Hill Zone」。初代ソニックの“最初の曲”で幕を開けるという粋な演出から、メドレー形式で「STH2 Emerald Hill Zone」「Escape From The City」「Tropical Resort - Act1」と、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』『ソニックアドベンチャー2』『ソニックカラーズ』の最初のステージの楽曲が立て続けにパフォーマンスされていき、「STH1 All Clear」で締めくくると、会場からは割れんばかりの歓声が上がる。観客のボルテージもセットリストも、最初からフルスロットルだ。

 「Windy Hill - Zone1」では、バイオリニストのAyasaが登場。ステージを縦横無尽に駆け回り、合間ではしっかりと客席を煽りながら、キャッチーなフレーズを軽やかに弾く姿はまさにプロフェッショナルだ。そこからオーケストラのみの演奏で2曲が演奏された。「Sonic Mania Medley」は壮大な金管の音がグイッとオーケストラを引っ張る演奏に、そしてこの日のために新たなアレンジが施された「Seaside Hill」は、原曲が真夏の爽やかな海風だとしたら、今回のアレンジはもう少し穏やかで柔らかい初夏のような雰囲気だった。

 続いてスカのリズムでダンサブルに奏でられた「That's The Way I Like It... for Metal Harbor」は、管楽器との相性も抜群だ。そこから再びAyasaを迎え入れての「Rooftop Run: Act2」で爽快感のある音色を響かせたあと、ライブはガラリとその表情を変える。「Introduction... Open Your Heart」の重厚なイントロとともに登場したのは、5年前に公開されたソニック30周年を祝ったオンラインコンサートでも一部の楽曲で歌唱をしていた"NateWantsToBattle"ことNathan Sharp(以下、Nate)だ。彼は「Sonic Heroes」から「Sonic Boom」、「His World」「I'm Here」「Knight Of The Wind」「Undefeatable」と立て続けにロックナンバーを歌い上げていく。

 先ほどまでニコニコと踊っていた客席も、人が変わったように手を挙げ、シンガロングし、歓声を上げる光景が印象的だった。一連の演奏で気になったのは「I'm Here」。アレンジの異なる2バージョンをマッシュアップするように演奏しており、このあたりの巧さにも思わずニヤリとさせられた。

 そこから軽やかなナンバーの「Reach For The Stars [Re-Colors] 」を歌い上げたNateは一旦ステージを後にし、「Speak With Your Heart 」では原曲のボコーダー風ボーカルとともにバンドのダンサブルな演奏が届けられ、ライブの前半が終了した。

 折り返し地点のMCで、瀬上が「ソニックが35周年ということは、彼は25周年だね!」と話し、ソニックとともにライブのメインビジュアルに据えられていたシャドウにフォーカスしたパートへ突入。再びNateがステージに登場し、「I Am... All Of Me」に始まり「What I'm Made Of…」「All Hail Shadow」と苛烈なナンバーを次々に歌い上げていく様子や、後半になっても高速リフを弾き続ける瀬上の姿は圧巻だ。

 シャドウパートの最後を彩ったのは、この日のサプライズともいえる壮大なバラード「Without You」。『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』の「闇の序章 Episode 3」の映像とともにシャドウとマリアの悲しい物語がスクリーンに映し出され、そこにCasey Lee Williamsのボーカルと切ないストリングスが重なる感動的なシーンは、この日のハイライトの一つと言っていいだろう。その後のMCで瀬上も「この曲をやるためにバンド+オーケストラの編成にしたようなもの」と話していたが、まさにその“共存”の意義を感じさせるステージだった。

 終盤は再びNateが登場し、疾走感のある「Sonic Racing – Cross the Worlds –」で一気に盛り上げると、ツーバスの高速ビートが轟く「Fist Bump」、メロコアキッズにはたまらないフレージングが目白押しの「Endless Possibility」を経て、瀬上の原点といえる「Escape From The City」を今度はボーカル入りで披露。この日最大のシンガロングが起こった「Live & Learn」、そしてどこか名残惜しさも感じた「One Way Dream」を演奏し、最後は35周年記念楽曲として瀬上が書き上げた「Speed Is My Life (Sonic 35th Anniversary)」が、待望のライブ初披露。気持ち良すぎるくらいに音とシンクロしたMVがスクリーンに投影され、観客のボルテージは最高潮のまま、この日の公演が終了した。

 30曲弱が音速で駆け抜けるように演奏された今回の公演。1曲1曲を振り返るには文字数が足りないほどに充実したパフォーマンスだったのだが、今回のライブで改めて感じたのは、ロックにシンフォニックにとさまざまな形でアレンジされて輝きを増す、素材としての原曲の素晴らしさや、それらをステージ上で表現できる制作者本人がいるということの尊さだ。

 ゲームをフィーチャーしたコンサートは近年でさらに人気を拡大しているが、そのなかでも楽曲を制作したコンポーザー/プロデューサー本人がステージ上に立つケースは稀だし、ましてやバンマスとしてすべてをリードするコンサートはそこまで多くない。ただ、そうあってくれることで、我々観客はステージ上の瀬上に直接的に感謝を伝えられたと思っている。これからも楽曲を手掛けるだけでなく、この日持ち込んでいた数多くのギターたちを抱え、引き続きステージ上でソニックの楽曲を鳴らし続けてほしい。そんな願いも生まれた一夜だった。

■セットリスト
『Sonic - Live! A Musical Odessey Of Sonic The Hedgehog』

0.Sonic 35th Anniversary Trailer
1.Sonic Anniversary Medley
STH1 Green Hill Zone (Sonic The Hedgehog)
STH2 Emerald Hill Zone (Sonic The Hedgehog 2)
Escape From The City (Sonic Adventure 2)
Tropical Resort - Act1 (Sonic Colors)
STH1 All Clear (Sonic The Hedgehog)
2.Windy Hill - Zone1 (Sonic Lost World)
3.Sonic Mania Medley (Sonic Mania)
4.Seaside Hill (Sonic Heroes, Sonic Generations)
5.That's The Way I Like It... for Metal Harbor (Sonic Adventure 2)
6.Rooftop Run: Act2 (Sonic Unleashed / Sonic World Adventure / Sonic Generations)
7.Introduction... Open Your Heart (Sonic Adventure)
8.Sonic Heroes (Sonic Heroes)
9.Sonic Boom (Sonic CD)
10.His World (Sonic The Hedgehog)
11.I'm Here [Hybrid version] (Sonic Fontiers)
12.Knight Of The Wind (Sonic And The Black Knight)
13.Undefeatable (Sonic Frontiers)
14.Reach For The Stars [Re-Colors] (Sonic Colors: Untimate)
15.Speak With Your Heart (Sonic Colors)
16.I Am... All Of Me (Shadow The Hedgehog)
17.What I'm Made Of... (Sonic Heroes / Sonic X Shadow Generations)
18.All Hail Shadow [Hybrid version] (Sonic The Hedgehog / Sonic X Shadow Generations)
19.Without You (Sonic X Shadow Generations: Dark Beginnings)
20.Sonic Racing – Cross the Worlds – (Sonic Racing)
21.Fist Bump (Sonic Forces)
22.Endless Possibility (Sonic Unleashed / Sonic World Adventure)
23.Escape From The City (Sonic Adventure 2 / Sonic Generations)
24.Live & Learn (Sonic Adventure 2)
25.One Way Dream (Sonic Frontiers)
26.Speed Is My Life (Sonic 35th Anniversary)

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