『スプラトゥーン レイダース』はなぜ対戦ゲーじゃない? 任天堂が目指すコミュニティの未来を考察

任天堂の新作タイトル『スプラトゥーン レイダース』が、7月23日にNintendo Switch 2向けソフトとして発売された。同作は『スプラトゥーン』シリーズの初スピンオフ作品だが、今までの対戦型シューティング路線から一転して、ソロプレイや協力プレイにフォーカスしたゲームになっている。これを昨今の“eスポーツ化”の流れに逆らう、任天堂独自の路線として見ることもできるかもしれない。
『スプラトゥーン』が広げた日本の対戦型シューティング文化
そもそも『スプラトゥーン』シリーズは発売当初、任天堂が本格的な対戦型シューティングに参戦したゲームとして注目を集めていた。第1作目が発売された2015年は、『Counter-Strike:Global Offensive』(CS:GO)や『Alliance of Valiant Arms』(AVA)といったシューティングゲームの競技シーンに、日本のゲーマーたちも少しずつ目を向けるようになった年。そんななかで発売された初代『スプラトゥーン』は、より幅広い層をFPSやTPSといったジャンルに取り込むきっかけとなった。
その後のバトルロイヤルゲームの流行や『VALORANT』などの盛り上がりに先駆ける動きとして、『スプラトゥーン』のヒットを位置付けることもできるのではないだろうか。それから10年以上が経った現在の日本では、対戦型シューティングというジャンルがすっかり定着している。プロゲーマーたちの切磋琢磨をファンたちが見守る競技シーンの存在が、今や当たり前の文化となっているほどだ。
しかし『スプラトゥーン』自体はどうかというと、そうした“eスポーツ路線”から距離を置く方向に進んできたように見える。より正確に言うと、同シリーズに限らず任天堂自体の方針だと思われるが、対戦ゲームとしてのコミュニティを作ることに消極的な姿勢を取ってきた。
『スプラトゥーン レイダース』に表れた「競技ではなく遊び」の思想
今回発売された『スプラトゥーン レイダース』でも、「競技ではなく遊び」という理念は明確に感じられるだろう。
同作はシリーズ初のアクションアドベンチャーで、ゲームジャンルとしてはいわゆる“ハクスラ(ハック・アンド・スラッシュ)系”に近い。敵(シャケ)を倒してオタカラをゲットし、どんどん装備を強化してさらなる強敵に挑む……といった内容だ。PvE型ゲームの王道的なサイクルを楽しむ作品となっており、これまでの対戦型シューティング路線からは明らかに一線を画している。
公式サイトに掲載されている開発者インタビューでは、『スプラトゥーン』シリーズの「サーモンラン」というモードを利用して、「1人でとことん遊べるゲームがつくれないか?」と着想したことが同作を作るきっかけだったと明かされている。(※)
いわば『スプラトゥーン レイダース』は、新たな“遊び”の提供というチャレンジだった。プロデューサーの井上精太氏は本筋の『スプラトゥーン』シリーズに関しても、「これからも対戦の遊びづくりは続けていく」と答えている。
任天堂のゲーム開発は、あくまで“遊びの提供”であることにアイデンティティを求めてきた。たとえば2023年に公開したガイドラインでは、同社のゲームを使ったコミュニティ大会を“営利目的”で開催することを原則禁止にしたことが話題を呼んだ。
また『スプラトゥーン』シリーズにおいては、「スプラトゥーン甲子園」を始めとした公式大会が開かれてきたものの、賞金はなく、子どもから大人までが一緒になって楽しめる“お祭り”としてのイベントという性質が強かった。
そのためしばしば「競技シーンへのサポートが足りない」などとも言われるが、あくまで任天堂としてはスポンサーの付いたプロゲーマーがそのゲームを極める“競技”ではなく、万人が楽しめる“遊び”を提供したいという理念があるのではないだろうか。
eスポーツ全盛の時代に、任天堂が独自路線を貫く意味
是非は別として、競技性を求めないからこそ可能なゲーム開発はたしかに存在する。競技としてのゲームを開発しようとすると、どうしてもゲームバランスの厳密な調整に重きが置かれてしまう。競技としてフェアであることを追求するあまり、ゲームとしての楽しさを損なうケースもちらほら見受けられる。
もちろん持続的にゲームを盛り上げられるという点など、競技性を追求するメリットも大きい。むしろ業界全体を見れば、“遊び”を追求する任天堂の方が独自路線と言えるだろう。
eスポーツ全盛の世の中で、どこまで競技性に囚われないゲームを出し続けられるのか。任天堂ならではのゲーム開発に今後も注目していきたい。
参照
※ https://www.nintendo.com/jp/interview/aadla/index.html
























