ワーナーミュージック・ジャパン 岡田武士CEO×NET ViVi 平本哲也編集長対談 時代を動かす“熱量”と“共感生成”の重要性

ワーナーミュージック・ジャパンの代表取締役社長兼CEOである岡田武士氏が、さまざまな分野で活躍する新時代のリーダーと対談を行うシリーズ企画第3回となる今回、講談社 ViVi事業部 部長/NET ViVi 編集長 平本哲也氏を迎えた。ファッションと音楽の世界で激変する“ヒットの定義”から、大人気企画「ViVi国宝級イケメンランキング」の誕生秘話、そして「レーベル×雑誌」が仕掛ける未来のコラボレーションまで、時代を動かすカルチャーの源流にある、「熱量」と「共感生成」の本質に迫る。(編集部)
音楽とファッションに共通する“行動や感情が伴うヒット”
——まず平本さんにお聞きしたいのですが、ファッション誌業界におけるヒットの定義はどのように変化していますか?
平本哲也(以下、平本):ファッションのトレンドは細分化されていて、ひと昔前のように「今年はジャケットが流行った」「ロング丈のコートが流行った」みたいなことがなくなっているんです。“界隈”ごとにトレンドがあるという状況なのですが、メジャー誌を標榜しているViViにとっては難しさも感じていますね。一つ言えるのは、ヒットには行動や感情が伴っているということ。そのアイテムが売れたというだけではなく、それを着てどこに行くか、どんな経験をするかがポイントなんだと思います。数年前にDIESELのロゴTシャツが流行りましたよね。あれも単にアイテムとして人気だっただけではなく、「これを着てライブに行きたい」とか、「推しと同じものを身につけたい」とか、行動や感情まで含めて広がっていた。だからこそヒットになったんだと思います。
岡田武士(以下、岡田):音楽業界も同じですね。ジャンルが細分化されて、「国民的ヒット曲」と呼ばれるようなものが生まれづらくなっている一方、ライブやイベントには人が集まっているし、なかには東京ドームを何度も埋めるアーティストもいます。それはやっぱり“熱量”なんだと思います。ただ漠然と音楽を聴いてもらうだけでなく、熱量を生み出すことにつなげられないとヒットは生まれないのかなと。
平本:そうですよね。もちろん流行やトレンドもあるのですが、編集部としては、マーケティングやコンサルタントとは違う感覚に価値判断をおいているところもあって。感覚的なことですが、「これはなんか好き」「こっちはやめておこう」というViViのテンションみたいなものがあるんですよ。非言語コミュニケーションによるところも大きいのですが、一つの基準として「自分の人生を生きようよ」というテーマがあるんです。なのでパーソナルカラー診断の特集などは全然やらないんですよ。確かに流行っているし便利なんですけど、「自分が好きなら、どっちでもよくない?」って(笑)。
岡田:なるほど。面白いですね。
——その価値観を編集部の皆さんがシェアすることで、“ViViらしさ”につながると。
岡田:”らしさ”の根幹にある感覚や価値観をどうやって共有しているかにも興味があります。編集部に配属されると、少しずつViViのフィロソフィーに順応していくのでしょうか?
平本:それもありますね。ただ、編集者全員が同じ価値観やキャラクターになる必要はないと思っています。いろいろなタイプの編集者がいていい。その上で、写真のセレクトや企画づくりなど日々の仕事を通じて、「ViViらしさ」の感覚を共有していくという感じです。うまく言語化できるものではないのですが、そうした経験の積み重ねで自然と身についていく部分はあると思います。

岡田:説明できないから良いんだと思います。言語化できると結局、他と似てきてしまうので。音楽業界もそうで、「この曲、なんでいいと思うの?」って言葉にしづらいと思うんですよ。ファッション誌の写真もたぶん、パッと見たときに直感的に「かわいい」と感じるわけじゃないですか。「この色味が」とか「表情が」みたいなことも言えるでしょうけど、感覚のほうが大事というか。
平本:そうですね。数字や分析は僕も大好きなのですが、企画のスタート地点でそれを大事にしすぎてしまうと、どうしても予定調和になってしまうし、楽しいものが生まれづらいんですよね。
岡田:すごく共感します。アーティストが作るものもそうです。楽曲を制作するときにマーケティングを取り入れすぎると、面白いものはなかなかできないんですよね。ViViの企画なども、編集部のスタッフの方の自主性を尊重しているんですか?
平本:そうですね。最近はビジネスブームと言いますか、出版業界にも効率化の流れがあありますが、合理的に立ち上げた企画は、なかなか踏ん張りが効かないことが多いように感じています。どんな企画もそうですけど、進めていく上でめんどくさいことがたくさん起きるじゃないですか。それでも投げ出さないでいられるのは、その人自身の良い意味でのエゴとか、妙な思い入れがあるからなのかなと。
岡田:クリエイティブの根幹に関わるお話ですね。
読者がメディアに求める距離感の変化 「ViVi国宝級イケメンランキング」誕生秘話も
——大ヒット企画「ViVi国宝級イケメンランキング(以下「国宝級」)」はどんな経緯で生まれたのでしょうか?
岡田:ぜひ聞きたいです。「イケメンランキング」は昔からありましたけど、「国宝級」ができてからはそれが基準になっている印象もあって。すごいですよね。
平本:ありがとうございます。もともと講談社では『FRIDAY』や『週刊現代』で人物取材をしていたので、『ViVi』に異動した当初はファッション企画に悩みながらも、人モノの企画なら自分も勝負できるかもしれないと考えていました。そんな中で面白いなと思ったのが、日本のイケメン像の多様さです。当時はまだ「多様性」という言葉は一般的ではなかったんですが、日本のイケメンにはかわいい系もいれば、塩顔もいるし、ワイルドなタイプもいる。本当にさまざまなタイプの人が“イケメン”として受け入れられているんですよね。国によっては比較的わかりやすい理想像がありますが、日本はそうではなくて、イケメンに関してはすごく寛容だなと。ひとつの価値観に縛られず、いろいろな魅力を認める文化がある。それって、誇れることだよね? ということで、「国宝級」という言葉を付けたんです。
岡田:確かに。
平本:「これがイケメンです」と定められているわけではなく、みんなが「私にとってのイケメンはこの人」と自由に決めている面白さもあって。「国宝級イケメンランキング」は、そんな土壌とすごく相性が良かったから、ここまで企画として発展したのかなと思います。
——ViViはZ世代からの強い支持を得ていますが、どんなアプローチを意識しているんでしょうか?
平本:最近意識しているのは“共感生成”ですね。まずはしっかりコミュニケーションを取って信頼してもらわないと何も始まらないし、「ウチら、同じテンションだよね」「一緒のチームだよね」と感じてもらえるコンテンツや施策、メッセージの届け方を大切にしています。
岡田:やはり共感なんですね。
平本:はい。昔は、ViViにも手の届かない憧れが求められていた時代があったと思います。でも今は、読者がメディアに求める距離感そのものが変わってきているんですよね。その空気感をきちんと捉えないと、ズレたメッセージになってしまう。冒頭で話したようにViViはメジャーブランドです。だからこそ、一部の人だけに刺さる価値観を発信するのではなく、多くの人が「わかる!」と感じて参加できる共感を大切にしたいと思っています。とはいえ、決して迎合するのでもなく、一緒に時代の空気を感じながら進んでいく存在でありたいです。
岡田:ファンとの距離感も変わってきていますからね。SNSで直接やりとりできるし、共感性も生まれやすい。

——ファッション誌におけるスター、つまり雑誌を象徴するモデルの存在についてはどうですか?
平本:そこはかなり変化してきてますね。以前は、モデルがViVi以外のマスメディアに出て、認知を取っていく流れがありました。
岡田:ViViのモデルとして有名になると、テレビタレントになっていくイメージもありました。
平本:今はメディア環境そのものが大きく変わりましたよね。テレビだけでなくSNSなど、それぞれのプラットフォームで強い支持を集める時代になった。人気や影響力のあり方がより多彩になっているんです。ViViモデルとしてYouTubeやインスタで多くのファンを抱えるせいらさんや、東京ドームをファンで埋める櫻坂46の山﨑天さん、FRUITS ZIPPERの鎮西寿々歌さんなどが活躍していますが、新しい時代を象徴する存在を見つけていくことが大事だと思っています。
岡田:それも“細分化“と関係しているかもしれないですね。テレビに出て、たくさんの人に知られていることだけがスターの条件ではないというか。そもそも一般的な認知度の高さと人気は比例しないですから。実際に、有名なタレントさんや俳優の方がCDを出しても売れるとは限らないですし。アイドルの場合は幅広く認知されたほうがヒットの可能性が増すので、メディア露出を増やすのも有効だと思います。
——一方で、世の中的には知られていなくてもアリーナクラスの会場を埋めるアーティストもいますよね。
平本:「国宝級イケメンランキング」でも、まだ全国的に認知されているわけではない人がすごい票を取ることがあります。SixTONESとしてデビューする前の松村北斗さんもその一人でした。今のように映画に出て大活躍される前から、ファンの方々の熱量が半端なかったんです。

















